第33話 お祝い

この先は相当に険しい道のりになるだろう。

だけど俺達なら乗り越えられるとそう信じて動いている。

その通りだが本当は怖さはやはり取れない。

思いつつ俺は.....少しだけ透明人間に恐れる様に恐怖に感じながら。


どうするべきかを。

そしてこの先をどう歩むかを考えていた。

俺は千佳と共に千佳の家に帰って来る。


そんな事を考えながら階段を上っていると.....長妻さんが階段の音を聞きつけたのか外に出て来た。

それから俺達に向いて来る。

相変わらずのニコニコの笑顔で.....だが。

腕に包帯を巻いている。


「何だか見知らぬ男が千佳ちゃんの家の前に居たから問い詰めたら.....ちょっと喧嘩になっちゃった」


「.....え?」


「.....それってまさか.....」


青ざめる千佳。

喧嘩になった.....か。

それはつまりあの男しか居ない。

俺は、警察呼びました?、と聞いてみる。


すると長妻さんは、まあ呼んだけどそれだけの情報では的感じだったね、と苦笑してから俺達を見てくる。

それから真剣な顔になった。

そして.....千佳と俺を交互に改めて見てくる。


「千佳ちゃん。これかなり危ないかも。.....だから一旦、この場を離れた方が良いかも。私に出来る事は色々するけどね」


「.....はい。その件ですが.....一応、いー君の家でお世話になる事にしました」


「.....そう。.....取り敢えずはそれでいってみて。.....あの男は危ないと思う。千佳ちゃんのご両親って言ってたけど」


「そうですね.....」


千佳は悲しげな顔をする。

取り合えず警察もそうだけど証拠が無いと動けないからね、と相変わらずの感じで長妻さんは包帯を触る。

俺は.....その姿を見ながら顎に手を添える。

周りに危険が.....及んでいる事に恐怖を感じた。


「.....私は恐らくは大丈夫だけど千佳ちゃんは危ないと思う。だから一旦は退避した方が良いね」


「.....長妻さん。ご迷惑をお掛けしてます」


「.....良いよ。.....でもそれはそうともしかして.....」


「はい。.....結ばれました。恋人同士になりました」


俺の手をまるで和菓子を包み込む様な感じで握ってくる千佳。

俺を見てから素直に告白する。

その事に俺も赤面しながら頷いた。

長妻さんはその言葉に目を輝かせる。

そうなんだ!、と長妻さんは子供の様に嬉しそうにニコニコし始めた。


俺達は顔を見合わせてから赤くなって恥じらう。

それは林檎の様に、だ。

本当に恥ずかしい感じだ。

その中で長妻さんは、この日をどれだけ待ち望んだか、と笑顔を見せる。

包帯の事なんか気にしない感じで、だ。


「.....正直、貴方達の行く道はかなり茨の道になるとは思うわ。でも.....お願い。イスカ君。その子を守ってあげて」


「.....そうですね。俺は約束守ります。絶対に守ってみせます」


「.....有難う。そう言ってくれて私も嬉しいわ。.....私の事は大丈夫だから任せるわ。お願いね。イスカ君。それから千佳ちゃん。.....気を付けて」


「.....はい」


それから俺達は頷きながら。

俺は電話をする。

会社から車を借りたのだ。


そして会社に向かってから車に乗ってから.....そのまま運び出した。

今日から暫くは俺の家で暮らす事になる。

車中で俺をにこやかに見てくる千佳。


「それはそうと体育祭楽しみだね。雪ちゃんと夜空ちゃんの」


「そうだな。楽しみだ。活躍が見れるしな」


「.....ごめんね。本当に。うちの親が.....」


「.....構わないさ。俺は.....お前の恋人なんだから」


「.....恥ずかしいかな。ちょっと」


だな。確かに恥ずかしい感じだ、と俺は苦笑い。

それから俺はそっと千佳の手を握る。

そうしてから.....俺達は笑み合った。


それなりに優しく、だ。

こんな気持ちを吹っ飛ばすぐらいに.....俺は幸せにしてやりたい。

千佳を、だ。


「.....千佳」


「.....何?いー君」


「愛してる」


「.....!?.....は、恥ずかしいんだけど」


「ハッハッハ」


そして千佳はカーッと顔を赤くする。

それから.....車は俺の家に着いた。

そうしていると.....夜空がドアを開けてやって来る。

本当に心配げなかなりの.....顔で、だ。


「大丈夫?」


「大丈夫。そんなこの世が終わる様な顔しなくても生きてるしな」


「.....そうかな。.....あ、荷物の移動、私も手伝うね」


「.....有難うな。夜空」


俺は笑みを浮かべる。

それから.....荷物を移動させる。

家の中に運び入れる感じだ。

すると.....向こうの方から明日香さんと雪さんがやって来た。

走って、だ。


「ごめん。遅くなったね。夜空ちゃん」


「夜空。ゴメン」


「ううん。有難う。手伝って」


俺達は顔を見合わせて目を丸くする。

まるでビックリ箱から飛び出したものを見る様に、だ。

それから.....、夜空?どういう事だ?、と聞いた。


すると夜空はニコッとしながら俺に向いて来る。

手伝いに来たんだよみんな、と、だ。

俺は.....聞いてから納得して少しだけ笑みを浮かべる。

それからみんなに向いた。


「.....みんな。有難う」


「ううん」


「大丈夫ですよ」


「ですね」


有難いな。本当に。

その様に感謝の気持ちを持って思いつつ、だ。

それから家の中に荷物を運び入れる。

荷物はそんなに量は無かった。

すると.....鞄から布が落ちる。


「っと。何か落ちた.....え」


「.....い、いー君!!!!!」


「.....こ、これは.....パンツ?」


「うわー。いっすー先生.....」


落ちたのはどうやらレースのパンツだった。

俺は真っ赤になりながら慌てて返す。

苦笑いの明日香さんに周りのみんなも少しだけ苦笑する。

千佳は.....フルフル震えていた。

羞恥で、だ。


「.....うー。ミスとはいえ.....恥ずかしい.....」


「.....ごめん。千佳。ワザとでは無いからな!?」


「アハハ。いっすー先生エッチ―」


「もー」


だけどそんな冗談すらも分かりあえるのは嬉しいよな。

思いつつ玄関を閉めようとしていると。

その場所に.....定森先生が立っていた。

俺は驚愕しながら.....、え?、と見つめる。


「私が定森先生にお兄ちゃんから教えてもらっていた番号に電話したの。そしたら.....喜んで来てくれた」


「お前.....余計な事をするなよ。定森先生も忙しいのに」


「アハハ」


俺は思いながらも嬉しさ故に定森先生に近付く。

それはさながら.....スキップする様に、だ。

定森先生は俺に手を振ってくれた。

それから.....笑みを浮かべる。

そして柔和な顔をした。


「.....イスカ君。.....聞きましたよ。女性の方とお付き合いなさり始めたと」


「.....はい」


「.....私、凄く嬉しかったです。イスカ君が.....どんどん幸せになっていく。そして幸せにしてくれる人が現れた。この事は本当に良い事ですね」


「.....はい。本当にその節は.....」


俺は後頭部に触れる。

定森先生は涙を浮かべて拭っていた。

本当に貴方の道標が不安でした、と話す。

それから.....俺にニコッとしてから優しげな笑みを浮かべる。

そして俺の頬を触った。


「.....幸せになって下さい。.....私に恋をしてくれて有難う」


「.....定森先生もお元気で。今度会いに行きます」


「.....何だか忙しそうですからこれで失礼しますね」


「.....はい」


「あ、そうそう。イスカ君。これを渡しますね」


定森先生は言いながら。

何かを取り出した。

それは.....アルバムだ。

俺は?を浮かべて.....アルバムを開く。

そこには.....当時の写真が沢山貼られていて定森先生の手紙が挟まっていた。


「.....これは.....」


「.....一晩掛けてアルバムを作りました。この為に作ったわけじゃ無いですけど.....でも良い記念ですね。.....お陰様で寝不足ですけどね。アハハ」


「.....」


涙が出てきた。

俺は.....その涙を拭う。

そして定森先生を改めて見つめる。

定森先生は.....俺に本当に柔和な顔を浮かべる。


「.....何かあったら頼って下さい」


「貴方は俺が出会った中で一番の教師だ。定森先生」


「.....大げさですよ。そんな事は無いです。アハハ」


「.....いえ、本当に感謝です」


本当に涙が止まらない。

その涙を拭いながら背後を見る。

みんな笑みを浮かべて俺達を見ていた。

俺は.....幸せだ。

本当に幸せ過ぎるぐらいに、だ。

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