第25話 高校の体育祭に関して

どうなっているのだ。

何がと言えば.....千佳との.....関係だ。

俺は.....ただ驚愕と共に悩んでいた。

悩まずにはいられない。


俺は考える人の石像のようになっていた。

ちょっと待ってくれ。

俺は.....千佳と昔からの馴染み?

そんな馬鹿な話が?

昔から知っていたなんて.....。


「ちょっと。お兄ちゃんどうしたの?」


「いっすー先生?」


「.....あ、いや。何でも無い」


首を傾げる2人の美少女。

それから俺は目の前のゲームオーバーの画面を見る。

俺は.....首を振りながら否定するが。


2人は顔を見合わせて?を浮かべていた。

ヤバいな。

察されるとマズイ。

思いつつ居ると夜空が声を掛けてきた。


「ゲームも14連で負けっぱなしだし。何か集中出来てないよ?どうしたの?」


「.....何でも無いさ。今日は調子が良く無いんだろうと思う」


「いっすー先生、ゲーム強いって聞いたけど。でも.....弱いね」


「う。.....まあそんな日もあるしな」


思いつつ明日香さんに苦笑い。

するとじゃあ今度は私と師匠でやってみよう、と自らの恋愛師匠に俺から受け取ったコントローラーを渡す明日香さん。


それから.....それを受け取りながら、手加減はしないよ、とニコッとする夜空。

俺はその姿を見ながら.....柔和になるのと同時に。

安心した。

察される所だった。


「.....」


しかし.....千佳は既に昔から俺が知っていた?

そんな事ってあるのか?

それで何で俺は忘れているのだ。


意味が分からない.....何で覚えてないのだろう。

でも原因は.....必ずあるしな。

思いつつ考え込む。


「.....いや.....まさかな」


そうして一つだけそれに至る経緯があるのを思い出した。

それは.....俺の親父の死。

もしかしたらそれが関係しているかも知れない。


そう、あれは本当に悲痛だったから、だ。

その事で何度か記憶を失っている。

だから思ったのだ。


それが関係しているのじゃ無いかって、だ。

うーんしかしな.....。

取り敢えず今は深く考えないでおこう。

今考えて察されるとマズイ。


「お兄ちゃん。.....ゲーム、次する?」


「.....ちょっと休憩してからしてみるよ。何だか調子悪いしな。俺」


「そう。.....じゃあ明日香。またやろうか」


「だね。次は負けないもん」


ゲームをし始める2人の姿を見つつ。

俺は笑みを浮かべる。

そして.....深くは考えないでおこう。


その様に思いながら.....遂に連休は去って行った。

それからまた大学が始まり.....俺と千佳が会う。

で.....こうなった。

まるでその、初々しいバカップルの様な感じだ。



「.....」


「.....」


「どうしたんだ?お前ら」


「気にする事は無い。健介」


千佳と会うのがこんなに気まずいとは思わなかった。

正直、だ。

目の前の千佳は赤面しながら俺を見ている。

そして俺も赤面していた。

困るなこれ。


「わかった。成程。遂に付き合い始めたんだな。お前ら」


「違う」


「違うよ。飯田くん」


「え?じゃあ何でそうなっている.....ま、まさかそれ以上の関係に.....」


赤くなる健介。

周りがギラッと目線を向けた気がした。

もっと違うからな健介。

と俺は朱に染まりながら説得する。

何でそんな事になるんだよ。


「まあ取り敢えずは何があったかは知らないが。.....仲良くな」


「ああ。まあな。有難う健介。仲は良いんだ」


「そうそう。だよね。いー君」


「.....いー君?」


あ。えっと。

と千佳は頬を真っ赤に染めながら.....俺にモジモジしながら向く。

それから.....昔呼んでいたから、思い出したから、と。

言葉を発する.....オイオイ!?

今それを言うか!!!!?


「おい。山寺。昔呼んでいたとはどういう事だ」


「やーまでーらくーん。遊びましょー」


「おう。山寺。何だかムカつくぜお前」


ほら見ろ!

嫉妬に狂った馬鹿どもが寝返るぞ。

俺の生命が危ない。

思いながら俺は青ざめる。

すると千佳が俺の腕に腕を絡ませた。


「私のいー君に手を出さないで」


そして俺をはにかんで見上げてくる千佳。

何でこんなに可愛く見えるのか。

と思いながら.....男どもを見る。

みんな俺に凄まじい圧力を掛けてきていた。


「今日は引くが.....覚えておけ」


「お前の命は大学では無いと思え」


「絶対に許さん」


お前らそれでも人間か。

思いつつ俺は.....引いて行く男どもを苦笑気味に見る。

すると健介が、そんな真実があったとはな、と溜息を吐く。

そして、でもそれだったら付き合えるんじゃないか?、とも言う。


「実はな。まだそれをするべきじゃ無いって思ってる」


「?.....何でだ?」


「私もそう思っているの。飯田くん。このまま付き合うのは簡単だけど.....いー君が本当に今、好きな人を探してからにしようと思って。いー君の幸せを願っている身としてはね」


「凄いな。速水。そんな事を考えるとは」


「うん。いー君が本当に好きな人と巡り合わなかったら私が貰うけどね」


ニコニコしながら俺を見上げる千佳。

俺はその姿を見つつ、だな、と答える。

実はこの事は昨日決めた事である。

話し合った結果、だ。


「でも羨ましいな。イスカ。昔から速水と知り合いなんてな」


「.....正直、俺もビックリだ」


「だね。いー君」


まさか千佳と昔からの知り合いだってな。

思わなかったしな。

そんな感じで考えつつ.....千佳を見る。

千佳も俺に笑みを浮かべた。


「教授が入って来たな。授業始まるか」


教授が入って来た。

それから俺達は腰掛ける。

そして.....講義を受けた。

そうしてから.....俺は健介にありのままを伝える為に食堂に集まり。

健介に経緯を説明した。



俺、山寺イスカは小学生の頃。

多分、記憶を失った。

その理由としては.....簡単だ。


親父が死んだから、であるのだが。

そのせいで記憶が無くなったんだと思う。

ショックで、だ。


多分小学生の時まで千佳の記憶はあった。

しかし今は記憶が無い。

だから記憶喪失になったと思う。

何度か親父の事を思い出し貧血で気絶する事があったから、だ。


でも最悪だなって思う。

その事で忘れるなんて.....。

大切な人の事も、だ。


千佳の事を覚えているかって母さんに聞いたが.....会った事がそんなに無くて忘れていたと言っていた。

その理由としては恐らく.....と思う。

幼稚園の時も保護者が出席、では無く親戚が出席したらしいから。


とにかく纏めると。

俺は千佳をどう思っているのか。

そして千佳を今でも愛しているのか。

その点をどうにかはっきりしないといけないと思う。


千佳は待つと言い。

そして.....君の本当に好きな人を探すのを手伝うと言ってくれた。

それが本当に.....嬉しかった。

俺は思い出しながら.....健介を見る。


健介は、成程な、と顎に手を添える。

それもし良かったら俺もお前の為に探そう、と話してくれた。

俺と千佳は見合ってから。

有難う、と俺は言葉を発する。


「でも俺個人の問題だからな。あまり関わらなくて良いよ。有難う健介」


「まあそんな事を言うな。お前にはこれまでの分で無数に借りが有るからな。これぐらいはさせてくれ」


「.....有難う。健介」


「おう。大丈夫だ」


それから俺達はクスクスと互いに笑みを浮かべる。

そうしているとメッセージが届いた。

俺はスマホを開けてみる。

雪さんだ。


(今度、私の学校で体育祭が有ります。応援に来てくれませんか)


俺は見開く。

それから.....雪さんに返事を打った。

君の体育祭に行っても良いのか?、と、だ。

すると雪さんは、はい、と返事をくれた。

そして、教え子の姿を見てほしいです、とメッセージをくれる。


「.....千佳。健介。.....雪さんと夜空の学校で体育祭があるみたいなんだ。一緒に行くか?」


「え?それは俺達も行って良いのか?」


「よく分からないけど大丈夫じゃないか。保護者の知り合いという事で」


「そうなのかな」


千佳が可愛らしく顎に人差し指を添える。

女子校じゃ無いから大丈夫だと思うが。

思いつつ.....顎に手を添える。


それから考えてみる。

そして雪さんにメッセージを返した。

待っていちゃ悪いから。


(じゃあ応援に行かせてもらおうかな。千佳と俺の友人も連れて)


(有難う御座います!嬉しいです)


(そんなに嬉しいものなのか?)


(当たり前じゃ無いですか。私の好きな人が応援に来るんですよ?気分が上がりますから。いつも以上に)


「.....」


恥ずかしいな何だか。

もう雪さんとは馴染んでいるとは言えど、だ。

思いつつ苦笑しながら画面を見つめてから。

健介と千佳を見る。


「じゃあそういう事で応援に行こう」


「うん」


「そうだな。雪さんと夜空さんが良いなら俺も行くぞ」


「ああ」


そして俺達は.....雪さんと夜空の応援に向かう事になった。

雪さんと夜空の学校での体育祭は5月の半ばにあるという。

だが.....何というか。


これがまた色々な事の引き金になるとは。

俺は想像もしておらず。

そして千佳も健介も予想出来ずだった。



それから帰宅してから俺は会社に出勤した。

大谷さんの所に向かってから。

少しだけ話して車を運転して雪さんの所に来る。

すると雪さんの家の前に.....誰か居るのに気が付いた。

俺は?を浮かべて見ると。


中学の制服らしきものを着た.....眼帯をした少年だった。

俺は、君誰かな?、と声を掛ける。

するとその少年はビクッとしながらそのまま去って行った。

え?、と思いながら俺は呆然と立つ。


「.....何だったんだ?」


思いながら俺はインターフォンを押してから。

雪さんに会って先程の少年の事を伝えてみると。

アハハ、と苦笑した。

それから少しだけ複雑な顔をする。


「.....実は私、恋をされています」


「.....え?」


「その子の名前は吉田照魔(よしだてるま)君です。15歳です」


「なんでまた恋をされたんだ?」


「.....実は.....私、こう見えても強いんです。力が。でも精神力はイマイチですけどね。.....だから犬に襲われていたその子を救ったら.....懐かれちゃって」


成程な。

先程の少年の眼帯はその時の傷か。

思いつつ.....俺は雪さんを見る。

雪さんは勉強道具を取り出しながら.....俺に向く。


「.....私はいー先生が好きだから.....」


「まあそれは分かるが.....答えてやった方が良いんじゃないか?」


「.....ですかね。やっぱり」


「.....ああ。恋ってのは結構大変だから」


「.....彼に何も言ってないんですよね。私。だから言った方が良いのかな」


だな、と答える俺。

それから小テストを取り出した。

抜き打ちでテストをするつもりだったから、だ。

雪さんは少しだけビックリしながらも、どんと来い、です。

と頑張る姿勢を見せた。


「.....これが終わったらいー先生。聞かせて下さいね。.....千佳さんとの関係」


「おう。.....え?何で知っているのだ!?」


「.....聞いた噂ですけど.....幼い頃から一緒だったそうじゃないですか。.....アハハ。もー。いー先生はモテモテですね」


「.....」


俺は顔を引き攣らせる。

何処で聞いたのか.....分からないが。

雪さんが少しだけ焦っている感じは見えた。

俺は溜息を吐いてから。

素直に白状しようと思い、小テストを見守った。


「いー先生」


「.....何だ?」


「私がもし別の男の子に惹かれたら嫉妬しますか?」


「.....いきなり何の話だ」


「答えてほしいです」


シャーペンを置きながら俺に向いてくる雪さん。

俺は困惑しながらも頬を掻いてから答えた。

そうだな嫉妬はするかもな。お前。性格が良くて美少女だからな、と。

すると目をパチクリしてボッと火が点く様に赤面した雪さん。

それから俯いた。


「そ、そうですか.....」


「お、おう」


「あ、アハハ。だから、いー先生好きなんですよ」


「.....そ、そうか」


そして困惑の中の俺達は小テストをやる。

それから.....採点し始める。

俺は.....少しだけ恥じらっていた。

ずっと雪さんが俺を見ていたからもあるが。



「雪さん。満点だ。凄いね」


「やった。やりました」


「.....ご褒美をあげないとな。この前も言った通り、家に来るか?」


「そうですね。家に行きたいです」


じゃあ明日は休みだから家に来たらいい、と答える俺。

すると雪さんは、良いんですか?、と恥じらいながら答える。

髪の毛を弄りながら、だ。

俺はその様子に頷く。


「まあでも.....あまり親密にはならない様にな」


「念の為、ですよね」


「ああ」


家庭教師が家に生徒を呼ぶとか絶対に聞いた事がない。

だから念の為に、だ。

大谷さんにバレると面倒な事になりそうだし。

思いつつ.....雪さんを見る。


「雪さん。おめでとう」


「.....そうですね。全部いー先生のお陰です」


「というかここまで来たら俺もう必要無いんじゃないか?」


「そんな事無いですよ。いー先生。愛は必要ですから。何時も」


「.....そ、そうか」


雪さんは、はい、と答える。

少しだけ紅潮しながら俺はそっぽを見る。

そして苦笑する。

それから前を見てから雪さんの頭を撫でた。


「もー。子供扱い.....」


別の意味で怒られた。

俺は、それもまあ良いか、と思いながら雪さんを見る。

雪さんは俺の手を握ってきた。

そして笑顔を見せる。

花の様な笑顔を.....だ。


「楽しみです」


「.....だな」


それからまたみっちり2時間ぐらい勉強してから。

俺は車に乗って去って行く。

最初に出会った中学生の事を考えながら、だ。

色々な人がいるもんだな、と思いつつ、である。

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