第11話 イスカを好きな生徒

サークルに入った。

その理由としては速水に誘われたから、だ。

そして入部してとんでもない事が次々に起こった。


その事とは前の無駄な説教をしていた家庭教師から雪さんを救って頬にキスされてそれから速水が俺を好きだと言う事が分かり。

俺は愕然と言うかボーッとする。

何だか.....信じられない。

こんな俺を好いてくれる事に、だ。


「あーもう!!!!!集中出来ねぇ!!!!!」


何だこの胸の高鳴りは!

速水といい、雪さんといい.....特に雪さんとはあまり親密にしたら駄目なのに!

思いながら俺は目の前のレポートと雪さん用の課題に集中する。

駄目だ.....心臓が高鳴る。


「.....」


「お兄ちゃん」


「.....」


「お兄ちゃんってば」


「!?」


俺は、うお!!!!?、と思いながら横を見る。

横にいつの間にか夜空が居た。

夜空は眉を顰めて不愉快そうに頬を膨らませている。

胸元がチラチラ見える服装で、だ。


「お兄ちゃん。さっきから呼んでいるのに返事が無いから」


「.....す、すまん。課題を作るのに熱中していた」


「.....ふーん。そうなんだ。そんなに熱中?ふーん.....」


「何だよその目は」


べっつにー、と頬を更に膨らませる夜空。

それから漫画の本を取り出して当たり前の様に俺のベッドに横になる。

定位置になっているな.....。

思いながら俺は苦笑しながら夜空を見る。

すると夜空が、この前は有難うね、と漫画を見ながら言い始めた。


「.....デートの事か?」


「そ、そうだけど.....付き合ってくれて、だよ」


「.....別に構わない。俺はお前の兄なんだしな」


「.....ふーん。そうなんだ。.....その.....じゃあもう一つお願いを聞いて」


「何だよ」


赤面しながら。

そして.....少しだけ目を迷わせて俺に向いてきた。

私と付き合って、と直球で.....ァア!?

俺は変な声が出た。

何つった今!!!!?


「私、お兄ちゃんが好きだから。.....速水さんも居るし雪も居る。もう迷わない」


「お、お前!!!!?冗談だろ!!!!?」


「女の子が冗談で告白するかな?しないよね普通は」


八重歯を見せて俺に笑みを浮かべる夜空。

それからベッドから足を下ろして俺を見てくる。

何!?よ、夜空が!!!!?

有り得ない!

しかも何でこのタイミング!?


「私は好きだったよ。昔からお兄ちゃんが。でも.....ずっと私は秘めていたの。だって.....お兄ちゃんは苦しそうだったから」


「よ、夜空.....」


「.....私は好き。お兄ちゃんが大好き」


「.....そんな馬鹿な.....」


だから私と付き合ってくれませんか、と夜空は俺に向いてくる。

赤面で.....恥じらいながら、だ。

お、俺は.....、と思っていると.....そのタイミングだ。

大谷さん?からパソコンにメールが入って来た。

俺は、すまん。ちょっと待ってくれ、とメールを開く。


「.....?」


(こんばんは。えっと大谷です。.....その、君に相談がある為にメールしました。.....担当の子供を雪さんと合わせて2人に出来ませんか、という相談です。担当だった人が辞めてしまい.....)


「.....え」


俺は漫画本を待つ間、読み始めた夜空をチラ見してそのまま返事を書いた。

分かりました。じゃあ担当します、と、だ。

無碍に断る事は出来ないだろう、と。

その様に思ったから、だ。


(有難う御座います。因みに女子高生ですが手出しをしない様に)


アンタは俺を何だと.....え。

俺は真っ青になった。

また女子高生!?


こ、困った。

でも.....大谷さんの頼みなら断れない。

思いつつ俺は返事をキーボードで打ち込んだ。


(分かりました。仕方が無いですね)


(有難う御座います。因みに名前は斎藤明日香(さいとうあすか)さんです。書類はまた今度渡します。君の腕を見込んでます)


(有難う御座います)


俺は盛大に溜息を吐いてから。

メールを送ってから心臓をバクバクさせながら夜空を見る。

夜空、と言葉を発して、だ。

すると夜空が顔を上げた。


「.....俺は今、誰とも付き合う気は無い。.....雪さんの勉強が落ち着いたりするまで、だ。大学も、だ。御免な」


「うん。良いよ。多分そう答えるかなって思ってた」


「.....御免な」


「待ってる。お兄ちゃんが振り向くのを」


その様に夜空は笑みを浮かべてから.....そして。

一夜が過ぎて行った。

それから翌日になり、俺は明日香さんの家に向かった。

これが.....また災いをもたらすとも知らずに。



「初めまして。山寺です」


「山寺先生。初めまして。私は斎藤微絵(さいとうほのえ)です。母です」


2階建ての青色の屋根の家。

また美人顔の50代ぐらいの女性。

白髪混じりだが.....黒髪も透き通っている感じだ。

俺は頭を下げてから名刺を渡してから。

それで.....担当は横に居る方ですね、と見る。


「イスカ先生。宜しくでーす。斎藤明日香です!」


褐色肌の少女。

黒のボブの髪の毛の前の方を苺のヘアピンで留めており笑顔が絶えない。

かなりの美少女である。

俺は、何でこんな美少女ばっかり、と思いながらも頭を下げた。

そして、じゃあ早速ですが、と顔を上げる。


「はい。それでは.....」


「こっちだよ!イスカ先生!」


俺の手を引っ張りながら2階に向かう。

かなり元気が良すぎる。

俺とは雪さんとはまた別の天地の差だな、と思いながらもそのままされるがままに向かう。

そして部屋に入る。

ゲームばかりの部屋だった。


「良い部屋ですね」


「でしょ!?後でゲームしようね」


「.....そ、そうですね」


それから高校の鞄から勉強道具を取り出して俺を見てくる明日香さん。

俺も準備の為に鞄から筆記用具を出していると。

ねえ。イスカ先生、とニコニコしながら明日香さんが俺を見ていた。

俺は、何でしょうか?、と笑みを浮かべて明日香さんを見る。


「.....私、イスカ先生知ってるよ。昔から」


「.....え?それってどういう.....」


「だから私とデートして付き合って」


「.....え!?」


そして明日香さんは俺の頬にキスをしてきた。

俺は、!!!!?、と思いながら、コラコラ!?、と声を発する。

ど、どうなっている!!!!?

意味が分からない!


「こうしないと男の人って好きって気付いてもらえないからね。えっへん」


「.....!?」


「私、心の底からイスカ先生が好きなの。昔から」


「.....ど、何処で会ったのでしょう?」


「え?覚えてないの?私を.....電車自殺から救ってくれたの。私ははっきり覚えているよ。イスカ先生が格好良かった」


ハッとする。

それは.....高校時代の事だ。

確かに俺は.....電車に飛び込もうとした中学生ぐらいの少女を救った。


だけどあれだけだ。

それ以降、会った覚えは無い。

なのに!?


「.....私ははっきり覚えてる。だから私は貴方が好きです。貴方が担当になったから.....これからはガンガン攻めるよ。えへへ」


「.....!」


明日香さんはニヤニヤしながら俺の手を握ってくる。

俺は苦笑しながら.....明日香さんを見るしか。

そういう事しか.....出来なかった。

それから.....2時間ぐらい教えてから。

俺は玄関先に行く。


「また待ってるよ。イスカ先生」


「.....そ、そうですね.....」


「えへへ。恥ずかしいけど。アイラブ、イスカ先生」


「.....そ、そうですね.....」


同じ返事しか出来なかった。

それから俺は慌てながらその家を後にしてから。

俺は車に乗り込む。

いかん。最近の女子高生怖い、と。

その様に考えながら、だ。



「じゃあその、こっちをまた計算して.....」


「山寺先生?これ違うよ」


「あ」


雪さんに指摘される。

さっきから凡ミスばかりが続いている。

先程の.....明日香さんの事で頭が混乱している様だ。

30分も間が空いたのに、だ。

何てこったい。


「どうしたんですか?凡ミスが多いですね」


「.....そ、そうかな。アハハ.....」


「.....」


雪さんが俺の顔をじっと見てくる。

俺は.....少しだけ舌舐めずりをしながら後頭部を掻いた。

クソ、集中だ集中.....。

と思っていると雪さんがジト目をし始めた。

それから、あの。聞いたんですけど、と語り出す。


「.....先生の担当.....女子高生の担当をし始めたって聞きましたけど.....まさかその事ですか。夜空ちゃんから聞きました」


「.....い、いや。そんな事は.....っていうか夜空が!?」


「はい。何だかパソコンをチラ見したそうですけど」


「.....」


馬鹿だな俺.....。

やっぱり見ていたのか.....。

と思っていると.....雪さんが何だか複雑な顔をし始めた。

それから俺を見てくる。


「その、何かされたんですか」


「.....何も無いよ。うん」


「.....怪しいですね.....」


「.....」


胃がキリキリ痛み始めた。

誰か助けてくれ。

俺は何でここ最近、女難が激しいんだ。

どうなっている?

思いつつ俺は.....明日香さんに少しだけ苦手意識を持つ。


「.....山寺先生の周りって女の子ばかりですね.....」


「.....そうだな.....うん」


「.....」


「.....」


空気が段々と重くなっていく。

まるで部屋にCO2でも充満しているかの様に、だ。

どうしたものか.....。

俺は冷や汗を流しながら.....勉強を教えた。

何でこんなに胃がキリキリするのか.....。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る