研究サークルと.....?

第10話 速水に恋する人物

部活動に入った事がある。

それはかつての話だが、だ。

だけど俺は部活動を1ヵ月で辞めた。

その理由として.....イジメなどがあったから、だ。


肉親が片方でも亡くなると何故か人は変貌する。

お前さあ。親父居ないんだってな、とか小馬鹿にされて言われて、だ。

何故そういう人ってのは弱みを握るのだろうか。

思いながら俺は.....嫌な気分で性格が変わっていった。


だけどその中で手を差し伸ばしてくれた女性が居た。

その女性を見ていると.....俺は、優しい事は悪くない、という事に気が付いたのだ。

そして俺は優しい気持ちで.....行こう。

その様に思えたりした。


それは今から3年前の話だ。

俺は.....あの人が居たから.....今。

夜空にもみんなにも接する事が出来ている。

柔和に、だ。

一応でも、である。


だからそのサークルに入るのが少しだけ抵抗があった。

だけど.....速水は誘ってくれたから。

やってみようという気になったので.....サークルの門を叩いてみる。


思いながら俺は.....サークルの部室の有る場所まで来た。

今日は雪さんの家庭教師が無い。

意を決してドアを開ける。



「初めまして。私は部長で3年の雪代真菜子(ゆきしろまなこ)です」


「同じく副部長の2年の長谷川健也(はせがわけんや)です」


「は、初めまして」


コンクリートな感じの部室の中。

目の前を見る。

そこに二つ編みの丸眼鏡のデニムの優しそうな美人の女性と、サッカーでもやっているのか足が太い様な短髪の身長が175?ぐらいは有りそうな男性が立っている。

その横には2人。

速水と.....男性が居た。


「俺は山寺イスカです」


「宜しくね。イスカ君」


「宜しくな。山寺」


「はい」


因みにそんなに緊張しなくても良いよイスカ君。

とヘラヘラする雪代先輩。

俺はその姿に、はい、と返事しながら少しだけ落ち着かせた。

昔の事も有るしな。

どうにも肩こりが取れない。


「お試し入部だって聞いたけど.....速水さん」


「そうです。彼.....を誘ってみました」


「.....そういえば速水。この研究部って何を研究するんだ」


「え?あ、話して無かったっけ?漫画だよ」


漫画研究部?

俺は思いながら顎に手を添える。

詳しくは俺から話す、と長谷川先輩が話し出した。

それから漫画の.....いや。

何か歴史本の様なものを取り出した。


「この研究部では簡単に言っちまうとな。漫画の歴史を研究してんだよな」


「.....成程です」


「.....だからその漫画の歴史を紐解くのが我々って訳だよ」


「成程.....」


雪代先輩は速水をジッと見ていた。

何故か速水が俺に赤面しているというか恥じらっているのに気が付いた様だ。

それからこの様に直球でニヤッとしながら話した。

なーるほど、と、だ。


「速水さんはイスカ君が好きなんだね」


「.....え。.....えぇ!!!!?」


「ちょ!雪代先輩ッ!!!!?」


「だってそうでしょ?.....あの内気な速水さんが男の子を連れて来る。それからニコニコしているのはどう考えても好きって事だよね」


口を酸欠の様にパクパクさせてから。

真っ赤に染まって.....雪代先輩をポカポカ殴る速水。

嘘だろう。


速水が俺の事を!?、と思っていると。

ちょっと待ったァ!!!!!、と声がした。

その声の主は.....黒縁眼鏡を掛けたそばかすの横に立っていた奴。

俺は?を浮かべて見つめる。


「僕も速水先輩が好きなんだが!」


「遠山。お前も好きなのか?」


「そうですよ!聞いていればなんて事でしょうか!」


「遠山君。君には似合わないよ。速水さんとは」


「酷いですね!先輩!!!!!」


その遠山という男は俺を見てくる。

それからビシッと指を差して俺の名前を呼んだ。

山寺君!、と、だ。

な、何だ。


「君とは因縁を持てそうです」


「いや、俺は君とは因縁を持ちたくないんだが.....」


「いいや!絶対に許さない!僕は速水さんが好きなんだ!」


「ちょ、ちょっと.....恥ずかしいです.....」


速水が真っ赤に染まり困惑しながら手を挙げる。

すると雪代先輩がまたニヤッとした。

それから、これは面白くなってきた、と言葉を発した。

そして俺の肩に手を乗せてくる。


「入るよね?サークル」


「.....い、いや。俺は.....まだ検討中なんですけど.....」


「君は入るべきだ。僕が速水さんの為に倒す為に」


「いや、俺は.....」


するとチョコンと俺の袖を速水が引っ張った。

それから.....俺を見上げてくる。

は、入るよね、的な感じで、だ。

目をウルウルさせている。

その事に流石の俺も抵抗空しく。


「.....わ、分かりました.....」


「やった!また一人増えた!」


「やりましたね!先輩!」


これって強制加入って言うんじゃないのか?

俺は苦笑いを浮かべながらも。

良いサークルを見つけたな、と思えた。

それから.....遠山を見る。


「僕は絶対に君を倒す」


「いや、倒されても困る」


「ハハハ!仲が良いな!」


「どう見ればそうなるんですか長谷川先輩.....」


すると速水が俺を見てくる。

そしてニコッとした。

だけど直ぐに赤くなる。

それから.....俯いた。


「.....」


「.....」


アツアツだね!アッハッハ!

と雪代先輩が興奮気味で笑顔を見せる。

俺と速水は、そんな事無いです!、と否定する中で、チクショー!!!!!、と頭を掻きむしってから遠山が叫んだ。

しかし.....こんなに楽しいのは久々だな。

思いつつ俺は.....笑みを浮かべた。



(健介。お前、佐藤さんとは上手くいっているのか)


(そ、そうだな。上手くいっている)


サークルが17時で終わった。

そして解散してから俺は帰宅の途に着く。

健介にメッセージを送っていた。

恥じらいながらメッセージをくれる。


(正直、彼女が出来るのがこんなに楽しいとは思わなかった)


(.....そうか)


(お前も早く彼女を作ったらどうだ)


(.....俺にはその権利は無いさ)


正直今は考えられない。

雪さんの事も有るし、だ。

でも.....その。

速水が俺を好きだって事。


かなり衝撃なんだが。

仮にも美人であるあの速水が、だ。

俺は明日からどう接すれば良いのだろうか。


(お前はまだそう思っているのか)


(.....昔の事も含めて不幸にするかもしれないって恐れているのかもな)


(そんな事は無い。イスカは.....良い人だ)


(.....そうかな)


昔の記憶。

嫌な記憶.....。

この前の合コンだって彼女を探すつもりじゃ無かった。


どういう意味でやっていたのかって?

そうだな彼女探しじゃ無くて.....健介に彼女が出来たら良いな、って思っていた。

だからそういう意味じゃ無いのだ。


(お前に彼女が出来て良かった)


(.....おう。有難う)


(.....俺も幸せを見つけていくさ。そのうちにな)


(そうしてくれ)


それから帰宅する。

そうしていると.....目の前、丁度.....雪さんが誰かに何か言われているのを見つけた。

と言うのも.....そうだな。

威圧されている様な感じに見える。


「何だありゃ」


俺は直ぐに駆け寄る。

そして見ると.....女性が雪さんを叱っていた。

スーツ姿のなんか厳つい女だ。


俺は、オイ!、と声を掛けと.....その女性が俺に向いた。

顔まで厳ついとは.....。

雪さんは涙目になっていた。


「何でしょうか」


「.....アンタ誰だよ。俺の知り合いに何してんだ」


「貴方が今の家庭教師ですか?この子の?.....緩み過ぎている顔ですね。そのせいでこの子もこの時間まで外に出ているのですね。私は永山由紀子。前の家庭教師ですが.....偶然、雪さんをこの時間に見掛けたので叱っていたのです」


それはどうも。

ご解説感謝ですね。

でもなんか違和感あるな。

今、家庭教師じゃないのに何で叱ってんだよ。

この時間に帰る学生とか居るだろ普通。


「.....意味が分からない。今は雪さんと関係無いんだろアンタ。俺の生徒が泣いているんだが」


「甘いですね。貴方。.....そんなに緩い貴方の様な家庭教師が今の家庭教師だなんて笑えますね」


「.....」


話が通用しないな。

俺は雪の手を引っ張った。

それから連れて行こうとする。

のだがその背後から俺の手を掴まれた。

まだ話は終わってません、と、だ。


「アンタと話す事は何もない。俺の生徒に手を出すな」


「ちょっと。手を出すな?.....まだ説教の途中.....」


「.....いい加減にしろ」


俺は流石にキレた。

そしてその女を睨み付ける。

すると、け。警察呼びますよ!、とか言い出した。

俺は無視して雪さんを引き連れて歩き出す。

そして途中まで来てから雪さんに向いた。


「災難だったな」


「.....」


すると雪さんが俺に抱き着いてきた。

俺は驚愕して見ていると。

そしてグスグスと涙を流し始めて.....鼻を啜る。

怖かったです、と、だ。


「怖かった.....怖かったです」


「.....もう大丈夫だ。あんな変な野郎に.....災難だったね」


「.....き、来てくれて有難う御座いました。山寺先生」


「.....」


カタカタ震えている。

涙を流しながら、である。

俺は雪さんの頭に手を乗せた。

そして透き通る様な髪をゆっくり撫でる。

それから頬に手を添えた。


「.....次、あんな目に遭ったら呼んで良いから。俺を」


「で、でも迷惑じゃ.....」


「俺の生徒を貶す様な馬鹿を許してはおけない。怯えているのに、だ。講義だろうがほっぽり出してから駆け付けるよ。まああまりそんな事になるとは思えないけど」


「.....や、山寺先生.....」


何だか本当に腹立たしいな。

俺は思いながら逃げて来た方角を見つめる。

そうしていると雪さんが俺の肩を掴んでいきなり背伸びをした。

それから俺の頬にキスをしてくる。

え.....。


「えっと.....これはお礼です。.....今、手持ちが何も無いですから」


「!!!?!」


「エヘヘ。.....山寺先生。有難う」


まさかの展開に。

俺は真っ赤に赤面せざるを得なかった。

その後、俺は雪さんを送り届けてから.....手を振る雪さんに挨拶して頬に手を添え。

そして.....マジか、と呟いた。

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