クレイジー・ダイヤモンド:DIAMOND HURT( クライマックス突入)

心臓だ。

まだ生きているはず。

血液の凝固が始まればもう助からない。

ならばせめて遺品だけでも持ち帰らなくてはならない。

選択肢はなかった。

ためらうことなくダイアモンドの剣が主の胸を突いた。

ダイヤモンドの騎士に、最初の傷がついた。


苦しみは知っていた。痛みは知っていた。己の胸すら痛んでいた。

全ては忠義のためにナイト・オブ・オーダー

生を受けた時から決まっていたことだった。

故あればためらいなく娘を殺せ。

そのように訓練されてきた。

疑うことすら無かった。それが誇りでもあった。

いま、契約は果たされた。

初めて、疑念が生じた。

二番目の傷がついた。


遺品などなかった。

くもりなき乙女の、汚れなき血でしかなかった。

竜の名をもつ者の血。不死をもたらす血。

ためらいなくそれを口にした。

三番目の傷がついた。


皮肉にも。

竜は不死ではなく。

己を討った者にのみ恩恵を与える存在である。

故に。

竜の娘は始めから死ぬ定めにあった。

それに気づいた時。

ダイヤモンドは砕けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る