火の神、語る語る

俺がなぜプロメテウスなどと名乗っているか分かるか。


この街はまだ若い。幼さすら感じる。


当然、火の使い方など知るまい。ただそこに火があるから寄り集まっているだけだ。


火はいずれ立ち消える。そのとき誰が薪を焚べ、火を起こし、火の番をするのか。


俺か?俺はやらん。面倒だ。


やるのはその火を使う者だ。そのほうが合理的だ。道理だ。理にかなっている。


ゆえに俺は火を投じる。所知らず、時を問わず、誰彼かまわず無差別にだ。


木が燃えるだろう。家が焼け落ちるかもしれん。炎に巻かれて死ぬ者もいるかもな。


知らん。俺はただ火を投じる。神話と違って俺は万能ではないのだ。


結果的に、確実に火の使い方は覚えるだろう。違うか?


この街には可能性がある。それも無限に近いほどの。


それを具体化する物も揃っている。金、人、時間、土地、技術、知恵、なんでもだ。


だがそれを維持しなくてはならん。それは赤子には到底成し得んことだ。


考えても見ろ。人をたった一人生かすために何千万何億人という先人の力が要る。


飯を食う、水を飲む、息を吸う、それだけでもどれほどの意志が働いていることか。


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