第3話 感じた違和感

 それは夏休みを前にした、梅雨と夏の間の時期だった。綾は自分のクラスに何か違和感を感じるようになっていた。どことなく人と目の合わない感じ。ゾワっとした寒気。姉がいなくなったあの廃墟のそれに少し似ているような気がした。


 なんだろう。何かがおかしい気がする。でもそれが分からなかった。

 その日の放課後、巫女の仕事のために神社に行くから、その時先輩に相談してみようと綾は放課後が来るのを待ち遠しく感じていた。



「…というわけで、先輩に相談してみようと思いまして。」


「というわけでじゃねえんだよ。だいぶか黒寄りのグレーだな。また面倒な案件持ってきやがって。」


 それから先輩の尋問が始まった。


「具体的に教室のどこから感じるんだよ。その違和感だか寒気は。」


「えぇっと、、窓際の方です。窓際の机……。

 あ!」


「なんだよ突然。」


「分かりました!…なんで忘れてたんだろ。クラスの子が1人いないんです。今日誰も欠席してないのに、空席が窓側の列にありました。確か、須藤さんの席だ…。」


「んで、そいつが絵取り主に連れてかれたと思う理由は?」


「須藤さんは前に先輩に言ったSNSにイラストを載せて有名な子なんです。だからもしかしたらそれが関係しているんだと思います。」


 どうして忘れてたんだろう。姉がいなくなった時は姉のことを忘れることなどなかったのに。


「決まりだな。そいつがどうなってるかは分からんが、主のせいなのは間違いなさそうだ。ちと面倒だが、やるか。」


「おい、そいつが描いてたっていう絵がどこにあるか分かるか。」


「場所…SNSのアカウントなら分かりますけど…」


「それでいい、そのアカウント出して画面にそいつの絵を映し出せ。」



 言われた通り、須藤さんのイラストアカウントを開く。相変わらず綺麗な絵を描くなあ。

 と、感心しながら、少女がキャンパスに絵を描くイラストを画面に映した。


 途端。例の腕が私のスマートフォンから飛び出す。


「え、えええええ!私のスマホ!なんで急に飛び出してくるの!」


「ここが神社の中だからだよ!神社の中は特殊な結界が貼られてるから取り憑いた人間の絵なら何でも強制的に絵取り主を引きずり出すことができる。今回は携帯だから楽でいいなあ!」


 そう言って腕に向かって走る先輩。

 私は相変わらず先輩とお守りに守ってもらいながら腕から逃げるのに精一杯だった。




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