第29話棚岡隆也とハル先輩-8-

すっかり寒くなった12月



もう冬休みかーと僕は呑気に考えていた


猛勉強しなきゃいけないような受験先を選んだわけじゃないから、周りの一部の受験生と違って別段去年と変わりはない




「ちゃんと考えてはるんですか?」



何を、と示す言葉を省いてこたつの向かい側に居るたなりゅーは怪訝そうに聞いてきた



「ハルさん単車だし、防寒具とかって思ったんだけけど、とっくに購入済みだったからちょっと困ってる」



「しっかり雪君の分も二人分ね」


「なんだよ」



「抜けてた脱字を補填しただけですやん」



「雪君、もうちょっとなんかこう、ねえ?」


「ねえ?って何が?」



「なんだかんだ薄々気付きつつも、そんなハズないって思ってるんでっしゃろけど、ハル先輩は雪君のことが好き、雪君もハル先輩の事が好き。でもお互い、確信をもてずにうだうだしよるわけですよ」



「そのウダウダも、もどかしいってか、単なるカップルにしか見えへん佐藤さん、もとい砂糖吐くやつですやんって感じなんすけどね」



ジト目でたなりゅーは捲し立てた



「で、でも」



「でももけどもないでっしゃろ」



ぴしゃりと



「冬休み、いい加減決着つけなはれ」



「え、えええええ」



「ええ加減にせーへんと、ヘタレクリスピーチキンって呼びますよ。ケンタにちなんで。丁度シーズンですし。」



年下の幼なじみから圧をかけられ



こうして



冬休みが訪れた







僕にとって、少なからず僕にとっては



忘れることの出来ない冬になり



ハルさんとの最後の時間が始まろうとしていた



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