第28話棚岡隆也とハル先輩-7-

夏祭りの1件以来


突然急接近、なんてことはなく、



というか既に充分近いよーにしか見えへんけども



しかしながら2人に少し変化があった



雪君はハル先輩をハルさんと呼ぶようになり


ハル先輩は雪ちゃんと呼ぶようになった


その意味はまー深くつっこんでないから分からへんけども、変化という意味自体では


変化が起きた



そして以前よりもなんとなく更に距離感が近い気がした


あー見ててもどかしいですわ



週の半分は下校時刻、若しくは授業中にハル先輩が雪君を迎えに来て2人で単車で消えていく



砂糖吐くくらいのバカップルですやん



と、思うも


雪君に問い詰めてもそんなんじゃないとの返答



いや、気づいてないだけやろ







夏前より更にハルさんと過ごす時間が増えた


涼しくなって、色んなとこにドライブにいったり景色見に行ったり


あと、気のせいや勘違いかもしれないけれど物理的な意味も含めて距離感がまた近づいた気がした



不思議に思うのが、ハル先輩は割と多忙だ



空手の指導に、本人の鍛錬、バンド


様々あるのに大丈夫なのかな


って僕が口出すとこじゃないからなにも言わないけれど



思い過ごしかもしれないけど、なにか


急いでいるような、余り時間が残ってないような


そんな気がした



まあ、来年になれば僕は高校生、ハルさんは大学生


色々変わるし今みたく変わらずにってのはないだろう



それで、今のうちに沢山かまってくれてるのかな



たなりゅーに話すと



「雪君、限度がありまっせ。いくら鈍感でも」


とため息まじりに返っくる



なにがだろうか



10月に差し掛かった頃


ドライブがてら紅葉を見にハルさんに誘われて金曜日の午前で早退した



ちょっと遠出して軽く有名なスポットにきた



ハルさんは無言で遠くを見つめていた



「ねえ、雪ちゃん。もうすぐ学校も卒業で2人ともその先を考える頃だけど、考えてる?」



ベンチに腰掛けた、隣のハルさんが突然手を繋いできた



急な質問の意図も分からないし、なんで急に手を繋がれたのかで、軽くパニックになりかけた



「うーん一応、地元の高校と、兄貴にどしてもって言われて都内の学校受ける予定になりました。

なんでわざわざ都内か教えてくれないんですよね。でも、凄い真面目に強く推してくるから一応書いて出しましたけど」



「そっか。冬馬くん。」



何かを悟ったようにハルさんはやんわりと笑った、



僕はこの時何も知らないでいた



ここから数ヶ月人生の転機と大きな喪失が待っているなんて


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