第22話 棚岡隆也とハル先輩-2-

晴(ハル)先輩は兄貴のバンド関係で知り合った人だった。当時中学2年の時、高校2年生だったハル先輩




様々な激しいロックをこよなく愛し、バンド活動(パートはドラム)と単車が趣味で、おまけに空手は段を所有し全国大会の常連と、精神的にも物理的にも強い人だった



未成年には見えない大人びた美人にも関わらず、ちょっと悪戯好きな幼さもある人で、行動力のあるぶっ飛んだ人だった


その容姿から、言い寄ろうとする男は数しれず


もれなく拒絶されるか、強引に迫ろうものなら武力行使により、防衛の名のもとに酷い時には骨折など、精神面だけでなく肉体面にも後遺症を伴い撃沈していくという、本人が望まない武勇伝が地元で山になってゆく有様だった


そんな男前な所を兄貴が気に入って、自分を女としてみない兄貴に晴さんも気を許すようになり、先輩後輩関係が生まれ


その弟枠で僕も交友が生まれ、ある時からいつも行動を共にしていた


きっかけは先輩の悪戯からだった


昼休みに兄貴から、「今すぐ絶対下校、門に行ってくれ」と謎の連絡が入り、行ってみたらハル先輩がそこに単車と共に居て、いきなり学校をサボってドライブに行ってからそれをきっかけに、、

だった気がする


翌日先生にめちゃくちゃ怒られて、兄貴は大笑いしてた気がする


ハル先輩も学校をサボったらしく、今でも覚えてる


在学中にプロのライセンスを取ったボクサーの生徒に、上からな態度で交際を言い寄られて殴り倒したと


一撃だったと


武神と言う不名誉を得て、不快感を覚えたハル先輩はそのままサボりという名の下校


気晴らしドライブのお供となったのが僕であった



そこからだった、いつもハル先輩と行動するようになったのは。いつしか僕もハル先輩と同じ赤髪にしてピアスをあけ、先輩の単車の後ろに乗ってよく走り回っていた


傍から見たらどう見えたのか

姉弟くらいなもんだろうか?

まあ知らない人からしたらそう見えたかもしれないが、ハル先輩が男と遊んでる

それ自体が物凄く珍しい事だったようで

周りは僕ら2人が行動していると、名前からもじって、晴れの日に雪が降った現象などと呼んでいた


男とか女とか


そういう意識はまだその時無かったけれど、中学三年に上がる前の春休みの時だったろうか、初めて意識したのは


家でたなりゅーとごろごろしていたらバンド練習終わりの兄貴がハル先輩を連れて帰ってきた


たなりゅーもハル先輩と面識があり、そのまま4人と両親とうちで夕食をとることになった


兄貴もハル先輩もバイトにバンド練習の疲れもあってかお酒が入るとすぐに寝てしまった


リビングで寝てしまった2人にブランケットをかけて、自室へ戻るとたなりゅーは面白そうに笑いながら言った


「んで、どないですの?」



なにがどないやねん


と心の中で思いながら、なにがだよと返すと


「ハル先輩にきまってますやん。ここんとこずっと一緒にくっ付いて遊び回ってるし、髪までお揃いにしちゃって。この辺じゃちょっとした学生の話題になってますよ。俺としてもちょっとおもろそうやし、聞いとこかなーって」


その時から、僕は本格的にハル先輩をただの先輩じゃなく、女の子として意識し始めた

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