第4話 眠れない夜と僕の家に来た足立さん-2-

「なんか不思議な感じがするー」


クッションに座りカップのミルクティーを飲みながらそわそわとする足立さん


いや、うん

なんか気恥しいからキョロキョロと見渡すのはやめて欲しい


見渡す程の部屋でもないけれど


こざっぱりしてるといえば聞こえはいいが

そんなに物がないだけの面白みのない僕の部屋


小さなテレビに、テーブル、服は全部クローゼットに収まり、小さな棚に小説などが少しとシングルのベッド



枕は低反発であればなんでもない

あとはカーテンが遮光であれば


それくらいなもんだけど

いやまぁ、男子だし、、


普通だよね?


音響機器に関しては音楽は携帯で聴くからそれで事足りるし、インテリアとか置き物だとかは、男の子だしぬいぐるみなんて置かないし、人それぞれだろうし


大丈夫、普通の範囲だ

何に向けての大丈夫なのか分からないけれど


それでもそわそわしながら、きょろきょろする足立さん


家に来る前よりも少し落ち着きがないのは

彼女もこの平日の真夜中のクラスメイトの家ってのが珍しく感じているのであろうか



「あ、十条君小説読むんだっ?」


棚の本へと目を向ける足立さん


「うん、ミステリーやサスペンスを少し読むくらいだけど」



「漫画は置いてないんだねー、男の子って漫画好きそうだから意外だなぁ」



言われてみれば、漫画は1冊も置いてない



そんなに漫画やアニメ見ないし立ち読みしてまうかネカフェで読むから


そうか、それが足りなかったのかもしかして


でも増えてくのもキリが無いしな


某海賊マンガとか

某忍者マンガとか

某死神マンガとか置いた日には棚自体を増やさなきゃいけなくなる


あ、でもそいえば未開封だけど

ある鬼を倒す大正時代が舞台の剣士のマンガは流石に最近買った

国民的に人気だしそんなに冊数も無いし少し買ってクローゼットに置いてあるな



「あ、でもあの超有名な剣士のマンガは最近買ったよ、クローゼットにある」



「それ知ってる!あたしもアニメで見たよー!あれはネットニュースにもなってるし目に入るよねっ」



しばらくそのマンガとアニメの話で盛り上がった


皆が知ってる流行りものの話は無難だし、大事だな



外で新聞配達であろう原付の音が響いて、ふとiPhoneを見ると4時半を表示していた



もうすぐ始発か



不思議な時間を過ごしたなー


なんて僕は思った


そう、もう少しすれば始発が出るから足立さんを駅まで見送って解散


だから、最中ではなく、終わり際の感覚



見送りに家を出る前にトイレだけ済ませておくかと思い、トイレを済まし戻ると





クローゼットからマンガを取り出し、足立さんは寝転がってマンガを読んでいた



悪戯が見つかった子供のように照れ笑いで、マンガで少し顔を隠し


「読みたくなっちゃったマンガの方も」



そう言って仰向けでマンガを読む足立さん




え、延長戦?



試合でもなんでもないけど

僕は頭に延長戦と言う言葉が浮かんだ




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