第17話 ナリスと大きな幸せと小さな幸せ

ナリスは迷っている。

小さな幸せをとるか、

大きな幸せをとるか。

大きな幸せとはルッツォのことである。

パーティーに入ったときから意識しており、もうかれこれ1年前から好きで、

憧れの人である。

自分なんかが釣り合うのかというくらい、人生経験に長けていて、

話も馬が合い、価値観も共感出来るところが多く、毎日、気兼ねなく

話したいと思える相手だ。相性バッチリである。


ただ、自分にはカッコよすぎるのである。

カッコよすぎるのがゆえに、飽きてしまわれて、他の女性にすぐなびいて

しまわれるんじゃないかと、自分に幻滅してしまわれるんじゃないかと。

心の奥深くで不安が燻ってしまう。


そこで、小さな幸せが隣にヒョコッと顔を出す。ハールである。


ハールは少しカワイイ程度で、自分をずっと好きでいてくれる自信もある。

ハールとなら、恋愛ごっこもできるし、結婚したら、夫婦ごっこも出来るだろう。


なんでルッツォはあんなにカッコよすぎるんだろう、もう少し、中位に

カッコよければいいのにと嘆(なげ)くばかりである。

わかっている。ルッツォがあんなにカッコいいから、自分も憧れて、

ルッツォを追って、自分の殻を破くことができた。


しかし、カッコよすぎるのである。

何かの拍子に嫌われて捨てられる。そればかりが心の中をグルグルと回る。


ルッツォとは今の関係を維持して、ハールと恋愛ごっこをやるのが

一番気楽で、いいんじゃないかと、今は、心がそう傾きかけている。


『ルッツォの罪な奴め、、、。えい。』


好きでいったら断然ルッツォである。ただ、嫌われたらと思うと、、、。

そこを思うと、ハールは断然嫌われる心配が無い。

というか、嫌われても全然心にダメージを受けるイメージが湧かない。

それでいて、少しカカワイイので普通の恋愛みたいなことも出来るし、

普通の夫婦生活も送れるだろう。

ハールは気が楽なのである。それなりに幸せになれるだろう。


『ハール、君には罪が無いんだよ。ふぅ、、、。』


でも、どんな割り切った思考ができても、どうしても、

ルッツォに笑顔を貰うたびに、自分の全てがルッツォに惹かれて

しまうのである。


ルッツォとハールが一緒にいたらハールがおざなりになってしまう位、

ルッツォに心を持って行かれてしまう。


『どうしたらいいのこれ、、泣けてくる、、とほほ』


小さな幸せ、

大きな幸せ、

ナリスの溜息が、積み重なっていく。

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