チーム・ブンガブンガ！「福ダンボールの陰謀」

第2話ダンボールビックリ箱化計画

帰宅（きたく）したイーサンは、玄関（げんかん）に置（お）かれている福（ふく）のマークが付（つ）いたダンボールを見（み）つけた。

「母（かあ）さん、今日（きょう）注文（ちゅうもん）した？」

「そうよ、本当（ほんとう）にお買（か）い得（どく）よね。」

「これ貰（もら）っていい？」

「またマジックにでも使うの？まあいいけど・・・。」

イーサンはダンボールを持（も）って二階（にかい）の自分（じぶん）の部屋（へや）へ向（む）かった。

「さて、このダンボールをどうやってビックリ箱（ばこ）にしよう・・・？」

イーサンは考（かんが）え込（こ）んだ。

「よし、これに決（き）めた！」

イーサンはビックリ箱（ばこ）の制作（せいさく）にとりかかった。

翌日（よくじつ）、この日（ひ）は土曜日（どようび）なので大島家（おおしまけ）に向（む）かった。

毎週土曜日（まいしゅうどようび）は地元（じもと）の名士（めいし）である大島家（おおしまけ）に集合（しゅうごう）するのが、『チーム・ブンガブンガ！』のルールである。

大島家（おおしまけ）の長男（ちょうなん）・大島愛知（おおしまあいち）は、名古屋老若連合（なごやろうにゃくれんごう）のリーダーであり、『チーム・ブンガブンガ！』のスポンサーでもある。

イーサンは名古屋老若連合（なごやろうにゃくれんごう）のメンバーで、メンバー内では最年少（さいねんしょう）だ。

イーサンが大島家（おおしまけ）に着くと、大島愛知（おおしまあいち）が出迎（でむか）えた。

「いらっしゃい、イーサン。そのダンボールは何かな？」

大島（おおしま）はイーサンが持（も）っているダンボールに目（め）をつけた。

「これはビックリ箱（ばこ）なんです。」

「ほう、おもしろいね。開（あ）けてみてもいいかい？」

「いいですよ、でもみんなに見（み）せたいので待（ま）っててもらってもいいですか？」

大島（おおしま）はうなずいた。

その後（ご）、武田（たけだ）・斎藤（さいとう）・神島（かしま）・文道（ぶんどう）・風間（かざま）が、大島家（おおしまけ）に集合（しゅうごう）した。

「それではチーム・ブンガブンガの集会（しゅうかい）を始（はじ）めます。まずは僕（ぼく）が作（つ）ったビックリ箱（ばこ）を披露（ひろう）します。それでは大島（おおしま）さんに開（あ）けてもらいましょう」

イーサンは五人（ごにん）の目（め）の前（まえ）に持（も）ってきたダンボールを置（お）いた、指名（しめい）された大島（おおしま）がダンボールを開（あ）けると、きれいな花束（はなたば）が飛（と）び出（だ）しただ。

「うわあっ！！」

「どう、驚（おどろ）いた？」

「いやあ、ビックリしたよ。さすがはイーサンだ」

大島（おおしま）と五人（ごにん）は拍手（はくしゅ）した、すると文道（ぶんどう）が口（くち）を開（ひら）いた。

「中身（なかみ）が花（はな）なんて、なんかイタズラって感じがしないなあ」

「でも食品（しょくひん）の入（はい）ったダンボールを買（か）ったのに、中身（なかみ）が花（はな）だったらおれは怒（おこ）るぜ」

「神島（かしま）の言（い）う通（とお）りだけど、もしこのダンボールに何（なに）か仕込（しこ）むなら、もっといいのがある。」

「何（なん）だ文道（ぶんどう）、知（し）っているのか？」

「教（おし）える前（まえ）に、みんなは舌切（したき）りすずめの大（おお）きなつづらを知（し）っているか？」

「それってすずめの舌（した）を切（き）ったおばあさんが、すずめのお宿（やど）で貰（もら）うあれだろ。それで持（も）ち帰（かえ）る途中（とちゅう）でおばあさんがつづらを開（あ）けたら、ヘビや化（ば）け物（もの）なんかが沢山（たくさん）出（で）てきたという」

風間（かざま）が言（い）った。

「そう、それを見（み）た僕（ぼく）はひらめいた。」

文道（ぶんどう）は言（い）いながら持（も）ってきた袋（ふくろ）から何（なに）かを取（と）り出（だ）すと、斎藤（さいとう）に向（む）かってそれを投（な）げた。

「きゃあっ！！」

キャッチした斎藤（さいとう）は、悲鳴（ひめい）を上げてそれを落（お）とした。

「へ・・・ヘビ！！」

「ん？これ、ニセモノだぞ。」

風間（かざま）が拾（ひろ）ったものを見（み）ると、ヘビのおもちゃだった。

「文道（ぶんどう）～、ビックリさせないでよ！！」

「ごめんごめん、でも凄（すご）くリアルだろ？」

「これは凄（すご）い、おもちゃというよりドッキリ専用（せんよう）の小道具（こどうぐ）だ。」

大島（おおしま）が感心（かんしん）した。

「文道（ぶんどう）は、これみたいなのをダンボールに詰（つ）め込（こ）むつもりか？」

「そう、家（うち）に中古品（ちゅうこひん）が沢山（たくさん）あるから、ダンボール十箱（じゅっぱこ）は用意（ようい）できるぜ。」

文道（ぶんどう）の家（いえ）は「遊戯屋（ゆうぎや）」というおもちゃ屋（や）を営（いとな）んでいる。イーサンもマジックの小道具（こどうぐ）を買（か）うために利用（りよう）している。

「直売（ちょくばい）に来（く）るのはおばさんが多（おお）いから、効果抜群（こうかばつぐん）だぜ。」

「よし、文道（ぶんどう）のアイデアは採用（さいよう）だ。明日（あした）からよろしく」

イーサンに褒（ほ）められ、文道（ぶんどう）はガッツポーズをした。

「次、おれいいか？」

風間（かざま）が挙手（きょしゅ）した。

「どうぞ。」

「おれはこのダンボールに、石（いし）を入（い）れようと思（おも）う。」

「石（いし）？なんだかパッとしないなあ・・・。」

イーサンは退屈（たいくつ）そうに言（い）った。

「石をある程度（ていど）入（い）れたら、底（そこ）の部分（ぶぶん）と同（おな）じ大（おお）きさに切（き）ったダンボールを取（と）り付（つ）けるんだ。」

「もしかして、君（きみ）は上（あ）げ底（ぞこ）をしようとしているのか？」

大島（おおしま）が言（い）うと、風間（かざま）はうなずいた。

「なるほど、ということはその後（あと）に一つだけ食品（しょくひん）を入（い）れるということか。」

「そう、入（い）れるのが一（ひと）つだけならなんでもいい。ポテトチップスの袋（ふくろ）とかジャムの瓶（びん）とか」

「確（たし）かに、それだけで七百円（ななひゃくえん）はぼったくりだぜ。」

「これはおもしろい、風間（かざま）のアイデアも採用（さいよう）だ。」

「ありがとう、イーサン。」

「はいはい、次（つぎ）は私（わたし）！」

今度（こんど）は斎藤（さいとう）が挙手（きょしゅ）した。

「どうぞ。」

「私（わたし）は中（なか）に鉄（てつ）アレイを入（い）れます！！」

「鉄（てつ）アレイ・・・？」

「そう、一（ひと）つだけでも重（おも）いから開（あ）けるまでは誰（だれ）も気（き）づかない。」

「確（たし）かに、そのアイデアもいただきだ。」

「じゃあおれはホラーなアイデアを一（ひと）つ、家（いえ）に入（はい）ったとたんに、ダンボールが勝手（かって）に震（ふる）え出（だ）す。」

武田が提案（ていあん）した。

「それはヤバイな・・・、でもどうやってダンボールが震（ふる）えるようにするんだ？」

神島（かしま）が武田（たけだ）に質問（しつもん）した。

「ダンボールに振動（しんどう）する装置（そうち）を仕込（しこ）むんだ、この装置（そうち）は遠隔操作（えんかくそうさ）でコントロールする。」

「それじゃあ持（も）った人（ひと）が家（いえ）に入（はい）るタイミングで、起動（きどう）させるということか」

「そうだ、この装置（そうち）はおれと風間（かざま）の合作（がっさく）だ。」

武田（たけだ）と風間（かざま）は、二人（ふたり）で機械発明（きかいはつめい）をしている。発明（はつめい）されたものは、イタズラの役（やく）に立（た）っている。

「それもいい、二人（ふたり）とも任（まか）せたよ。」

イーサンは武田（たけだ）と風間（かざま）に言（い）った。それを見（み）ていた大島（おおしま）は拍手（はくしゅ）した。

「さすがは『チーム・ブンガブンガ！』だ、どれも面白（おもしろ）いアイデアだ。」

大島（おおしま）に褒（ほ）められて、六人（ろくにん）は照（て）れた。

「ところでイタズラを仕掛（しか）ける相手（あいて）は誰（だれ）だい？」

「福（ふく）ダンボールを売（う）っている連中（れんちゅう）です。」

「福（ふく）ダンボール株式会社（かぶしきがいしゃ）か・・・。」

大島（おおしま）は怪訝（けげん）な顔（かお）をした。

「大島（おおしま）さん、どうしたの？」

「実（じつ）は福（ふく）ダンボール株式会社（かぶしきがいしゃ）には、前（まえ）から嫌（いや）な噂（うわさ）があってね、調査（ちょうさ）しているところなんだ。」

「嫌（いや）な噂（うわさ）って、何（なん）ですか？」

武田（たけだ）が訊（たず）ねた。

「これは名古屋老若連合（なごやろうにゃくれんごう）にきた調査（ちょうさ）の依頼（いらい）で、福（ふく）ダンボール株式会社（かぶしきがいしゃ）でアルバイトをしていた友人（ゆうじん）の行方（ゆくえ）を突（つ）き止（と）めてほしいというものだ。」

「その友人（ゆうじん）はどうして行方不明（ゆくえふめい）になったの？」

「依頼者（いらいしゃ）によると、その友人（ゆうじん）は上京（じょうきょう）するためにアルバイトを辞（や）めることになったんだが、上京（じょうきょう）のための準備（じゅんび）をしていた日（ひ）から暴力団（ぼうりょくだん）の連中（れんちゅう）が、毎日（まいにち）家（いえ）に来（く）るようになったんだ。それで友人（ゆうじん）がアルバイトを辞（や）めてから二日後（ふつかご）に、友人（ゆうじん）は音信不通（おんしんふつう）になったんだ。」

「友人（ゆうじん）の両親（りょうしん）は、何（なに）か知（し）っているの？」

「依頼者（いらいしゃ）が訊（き）いてみたところ、知（し）らないようだ。」

「何（なん）だかヤバイところだな・・・。」

風間（かざま）が呟（つぶ）いた。

「その通（とお）りだ、実（じつ）は福（ふく）ダンボール株式会社（かぶしきがいしゃ）はよくわからないことが多（おお）いんだ。住民（じゅうみん）には人気（にんき）なんだけど、大（おお）きな事件（じけん）にならないように名古屋老若連合（なごやろうにゃくれんごう）がマークしている」

「そいつらにイタズラしたら、面白（おもしろ）いことになるぞ・・！」

イーサンは高（たか）まる期待（きたい）にワクワクした、それを見（み）た大島（おおしま）もまたワクワクした。