第19話 距離

ーーめぐから連絡がなくなって1ヶ月が過ぎた。






めぐと連絡先を交換してからずっと続いていた会話が突然途切れたのだ。







ダンスの練習を中断してもう一度メッセージを開いてみる。






…やはり変わらぬままだ。







最後の会話は「二日酔い大丈夫?」という僕のメッセージで止まっている。






酔って眠ってしまっためぐをホテルまで運んだ次の日のメッセージだ。






何かあったのかな、、?






既読は付いているんだよなぁ。。。






「レンどしたの?暗い顔して」






携帯を見ながら肩を落としていると、一緒に練習をしていたケンが不思議そうに僕の顔を覗き込んでくる。







「最近携帯眺めてはため息ついてるよな」







壁一面に敷き詰められたミラーで振りを確認しながら今度はケンが言う。






「僕が?」







確かに最近、メッセージが来てないか携帯を確認する事は多かったけど、、






それでもそこまで自覚のなかった僕は驚く。







「例の子と何かあったの?」





「……」






「図星か」






妙に勘のいいケン。








僕は仕方なくため息をついて肯定する。







「…あれから何も連絡なくてさ、僕が送ったメッセージに既読はついてるんだけど、、」





「返信がない?」






「うん、、」






「…なんかやらかしたんじゃないの?最後に会った時に何もなかった?」






「最後に会った時…」







”好き"






「…っ」






唐突によみがえるあの日のめぐの言葉。







鼓動が早くなる。






どうして、こんな言葉は言われ慣れているはずなのに。






いろんな女性アイドルにモデルにファンに。






笑顔で受け流せたのに。






どうしてこんなに心に引っかかる。







きっとめぐは言ったことを覚えていない。






それにあの言葉は僕に向けられたものではなかった。






そう、あの言葉は今もめぐの心の中にいるーーー





「…レン?」





「あ…」






「やっぱり何かあったの?」






「…いや、何もないよ」






「じゃあ、もう1回メッセージ送ってみれば?返事忘れてるだけかもよ?」






「…!そっか、そういう事もありえるかも」






ケンの仮説に妙な安心感を覚えて新しいメッセージを入力する。





「……待て」






しかし送信ボタンを押そうとしたところでソウマに止められる。







そしていつも冷静なソウマにしては珍しい焦りを顔に浮かべて言った。







「バレたのかもしれない」








「バレた、って、、」







「お前の正体」







僕はその可能性にただ愕然とするのだった。



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