第52話 希望
「馬鹿ニスルナ！ 貴様如キガ！ 土人如キガ馬鹿ニスルナ！」
激高して叫ぶ怪人だが、隆幸は半分意識が飛びかけていた。
（これ、ヤバいかも……）
隆幸が諦めかけたその時だった！
「この野郎！」
ドガッ！
怪人の背中に棒のようなもので叩きつけられる！
「タカに何しやがる！」
後ろで羅護が怪人を殴りつけていた！
だが、怪人は平然としている。
「こいつ！ 鉄板か何か仕込んでんのか！」
焦りながらももう一回殴りつけようと棒を振りかぶるのだが……
フラフラ……
相当重い棒らしく、持ち上げるだけでふらついている。
そうこうしている内に怪人がにやりと笑い……
ガシィ！
瞬時に羅護の首根っこを掴む！
「くっ……がか……」
苦しそうに呻く羅護は棒を落として、そのまま振りほどこうとするがびくともしない。
「苦シメ……タカユキを殺ス前ニ貴様カラジワジワトイタブッテヤル！」
「やめろ……」
痛みに苦しみながらも立ち上がろうとする隆幸。
すると……
「タカ！」
ツギオの声が聞こえた。
「これに触って！」
そう言ってツギオが何かを投げつけた！
ひゅー……
丸い何かが隆幸に飛んできた。
その様子に見覚えがある隆幸。
（あの時のパワードスーツ！）
ツギオが怪力を披露した時を思い出した隆幸は黒いボールに触る！
触ると同時にツギオが叫んだ！
「装着！」
静かな田舎の路地にツギオの声が響く。
すると……
カシャン！カシャン！
最初にツギオが見せた時のように黒い何かが隆幸の体に纏わりついて行く……
そして、全身に巻き付いたときには隆幸は立ち上がっていた。
「これで何とかなる！」
パワードスーツを身に着けた隆幸は驚きながらも、怪人に向かって飛び蹴りをかました！
ドガァ！
「グ……」
「ゲホォ！」
ドサ
隆幸の蹴りで怪人の手から羅護が離れ、そのまま道路に落ちる。
隆幸はそのまま怪人の手を取って……
「どっせい！」
「グォ！」
ドゴォ！
アスファルトに向けて一本背負いで叩きつける！
（このパワードスーツすげぇ！）
筋力を大幅に増強するパワードスーツ故に１００キロは軽く超える大男を簡単に投げることが出来た。
「気を付けて！ そいつは作業用のバディルだから軍用よりも弱いから！」
（そこまで都合は良くないか！？）
どうやら何とか対抗は出来るようだが、性能は向こうの方が良いようだ。
実際、怪人はそれほどダメージを食らった様子はない。
「フン！」
パシィン！
叩きつけられた怪人が起き上がり様に足払いを仕掛けると、簡単に宙に浮いてしまう隆幸。
怪人はくるんと体を動かしてしゃがみ体勢に立て直し……
ゲシィ！
宙に浮いた隆幸にアッパーを仕掛けて吹っ飛ばす！
「グホォ！」
地面に叩きつけられてバウンドする隆幸！
（スーツがあってもキツイ！）
飛ばされた先で何とか立ち上がる隆幸だが、もうフラフラである。
（やっぱ、さっきのでどっか折れたな……動く度に痛い）
全身に駆け巡る痛みのワルツに苦しむ隆幸。
すると、叫び声が聞こえてきた。
「タカ！ その刀を使って！」
ツギオは羅護が持ってきた棒のようなものを指さしていた。
それを見て隆幸は目を見開く。
（あれは……『伝統』？）
祖父が使った最新技術で生み出した日本刀だった。
先ほど羅護が殴るのに使っていたせいで鞘が半分壊れかけている。
「未来でも使ってた軍刀と一緒だから！ あれなら対抗できるよ！」
「そうか！」
言われて飛び出す隆幸だが、怪人の方も動いた！
「サセルカ！」
怪人の方も刀を取ろうと動き出す！
一瞬、隆幸は考えた！
（あっちの方が近い！ このままじゃ先に取られる！）
走りだしながら思案していると体が勝手に動いたようだ。
タン！
隆幸は迷わずスライディングするように跳躍し……
パシ！ クルン！
刀を掴んででんぐり返しをする！
「ナニ！？」
刀を目の前で先に取られた怪人が呆気にとられる。
しかも、でんぐり返ししてるので、そのまま後ろでスムーズに立ち上がれる隆幸。
スッ……
静かに正眼に構えて怪人と対峙する隆幸。
だが、怪人はその様子を嘲笑った。
「素人ガ振ッタ所デ俺様ニ勝テルカ！」
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