第36話

「さてと、買い物も終わったし、冒険者の館に寄ってみよう」

朝葉は大きな買い物袋を抱えて、冒険者の館のドアを開けた。


「こんにちは」

「いらっしゃい、朝葉」

シンは笑顔で朝葉を迎えた。


「何か良い依頼ある?」

朝葉の問いかけにシンが答える。

「今だと、森に現れた沈黙のフクロウの討伐っていうのがあるよ」

「沈黙のフクロウ?」


「沈黙の魔法を使うフクロウだそうだよ」

「そっか、じゃあ、その依頼受けるね」

朝葉はそう言うと、シンから依頼書を受け取った。


バンガローに帰り買い物のかた漬けを終えた頃、トワロがやって来た。

「こんにちは、朝葉様」

「こんにちは、トワロ」

「今日の予定はありますか?」


「これから沈黙のフクロウを倒しに行くよ!」

朝葉は元気よく答えた。

「沈黙のフクロウですか。結構大きくて強いですよ?」

「大丈夫だよ! 剣士のレベルも上がってるでしょう?」

朝葉はそう言って剣を構えた。

「私もお供します」

「うん」


二人はバンガローを後にして、森に入った。

森のわりあい開けた部分に大きなクスノキがある。

そのクスノキには大きな穴が空いていた。

「あのなかに、沈黙のフクロウが住んでるらしいよ」

朝葉はそう言って穴を覗いた。


「ホウッホウッ」

穴から、大人と同じくらい大きなフクロウが飛び出してきた。

「きゃあっ!」

「朝葉様、大丈夫ですか?」

「大丈夫。ちょっと肩を爪で引っかかれただけだよ」

朝葉は剣を構えて、沈黙のフクロウを狙った。


「ウイングショット!!」

トワロが風の魔法でフクロウの動きを止めた。

「今です、朝葉様!」

「うん。解体!」

朝葉は解体のスキルでフクロウを捌いた。


肉と羽、内蔵が綺麗に切り分けられた。

「沈黙のフクロウの羽は魔力があるから、持ってくるようにシンに言われてるんだ」

「そうですか」

朝葉は飛び散った羽を袋に集めた。


そして、フクロウの肉を食材袋にしまう。

「さあ、バンガローへ帰ろう!」

朝葉達はバンガローへ戻っていった。


「今日は沈黙のフクロウのケバブを作るよ!」

「ケバブ?」

トワロはまた分からないという表情を浮かべている。

朝葉はフクロウの肉を適当な薄さに切り、パイナップルジュースと香辛料を混ぜたタレに漬け込んだ。


しばらく待った後、タレがしみこんだ肉を串にさして、肉の塊を作った。

「さあ、焼くよ!」

そう言うと、朝葉はゴーレムのかまどに火をいれて、じっくりと肉の塊を炙った。

「良い匂いですね。香辛料がオリエンタルなムードを醸し出しています」

トワロはそう言って微笑んだ。


「そろそろ良いかな」

朝葉は肉の塊をナイフで薄くそぎ取ると、市場で買ってきていたパンに挟んだ。

「出来たよ!」

「いただきます」


トワロと朝葉は庭のテーブルに腰掛けて、できたてのケバブのサンドイッチを頬張った。

「美味しい! 味の濃い肉が、甘めのパンに良く合う!」

トワロがそう言うと、朝葉も頷いた。


「パイナップルジュースもどうぞ」

朝葉に進められて、トワロは絞りたてのパイナップルジュースを飲んだ。

「うん、口がさっぱりします」

「良かった」


二人は食事を終えた。


すると、トワロが声を上げた。

「朝葉様、ステータスに変化が現れてますよ!?」

「え!? どんな!?」

「ステータス異常解除のスキルがついています」

「ええ!? 凄い!!」

朝葉はびっくりした。


「沈黙のフクロウの心臓を食べたからかな?」

「心臓も調理していたんですか!?」

「うん」

朝葉は無邪気な笑みで頷いた。


トワロはそれを見て、ため息をついた。

「食べるものによってスキル変化がおきるなんて、気をつけないといけませんね」

「そっか、でも大丈夫だよ」

朝葉は胸を張って、トワロに言った。


「毒検知のスキルがあるもん。毒以外なら食べても大丈夫だよ」

「朝葉様……」


トワロは言葉を失っていた。

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