第3話 なりきり師、再会する。
「やぁ久しぶりだね。」
聞いた事のある懐かしい声をかけられ目を開ける。
「あれ?ここって…」
教会にいたはずなのに、目を開けると違う場所だった。だがおれはここが何処だか知っている。
「忘れちゃったかい?ここは僕の世界。創造神プライの世界だよ。」
両手を広げ、僕の世界だとアピールをしている。
「久しぶりだなプライ!忘れてなんかいないよ。ただまたここに来たって事はまたおれ死んだの?」
初めてここに来た時は自分でも気付かない内に演技をしながら死んだ時だった。だが、今回は祈っていただけだ。死ぬ要素はなかった。
「死んでないよ!君の魂をここに呼んだだけ。教会って神に近しい場所だからね。君が祈った事で僕と再び繋がりが強くなったんだ。う〜ん…簡単に言えば条件が揃ったって感じかな?」
「魂を呼んだだけっておれの体は大丈夫なのか?」
「大丈夫に決まってるでしょ!僕を誰だと思ってるの?創造神だよ!創造神!」
「わかってるって創造神プライ様。大丈夫なら問題ないか…それよりまた会えて嬉しいよプライ。」
「僕もだよ一条勇気君…いや、今はユウキ=ノヴァ君だね。どうだい?異世界での暮らしは?」
「まだ魔法とか使えないからなぁ…最初は不便で退屈で暮らしにくかったけど、のんびりしててそこそこ充実してたよ。」
「そうかい。それはよかった。君は僕との約束も覚えてくれていたし、君に転生してもらってよかったよ。」
「その事なんだけどな、村の人達皆魔王なんていないって言うんだよ。あの世界に魔王はいるんだよな?」
「確かに今はいないよ、ただ復活する事は間違いない。まだ少し時間はかかるみたいだけどね。創造神である僕が言うんだ、これは絶対だよ!」
「別に疑ってたわけじゃなかったけどな。でも復活ってそれがわかるなら阻止したらいいんじゃないか?」
「僕ができるなら最初からやってるよ!できないから頼んでるんだよ!って言うのも、魔王を復活させようとしているのは、邪神って言う神なんだ。」
「邪神…?」
「そう。一応僕と同じ神なんだ。神が悪に染まってしまった姿なんだけどね、その邪神が次々と悪魔を復活させていたんだ。」
「悪魔?魔王じゃないのか?」
「悪魔の復活はあくまでも魔王復活の為の通過点でしかないんだよ。でもね、この悪魔たちのせいで僕も手が出せなくなったんだ…。」
「どう言う事だ?」
「復活した悪魔たちも結構な力を持っていてね…まぁ僕なら一瞬で倒せるんだけどね、その悪魔達がダンジョンボスとして君臨しているんだけど、その最下層から僕の力を通さない為の結界を力を合わせて張ったようなんだ…」
「創造神の力を通さないって…物凄く強い悪魔なんじゃないのか?」
「一匹ずつなら大した事は無いんだけどね、束になって力を使われると少し厄介でね…。それに僕の担当している世界はここだけじゃないから、この世界だけに力を使いすぎるって事はできないんだよね…。」
「つまりもうプライには手が出せない状況だからおれに悪魔を倒してほしいって事か?」
「う〜ん…それじゃあ少し足りないかな。もう魔王の復活も始まっているんだ。それこそ悪魔たちの力を媒体としてね。
もう魔王復活を阻止することはできないが力を弱める事はまだ間に合う。つまり君達には悪魔を倒して、魔王の力を弱め、その魔王を倒してほしいんだ。」
「最初に聞いてた内容より相当ハードモードになってんだけど…」
「そんな事はないよ。悪魔なんて物は魔王の部下みたいなものさ!ラスボス倒すついでの中ボスみたいな感じさ。君そう言うの好きだろ?」
「ゲームではな!ゲームでは!自分の命を何回もかけなきゃいけないんだぞ!」
「だから僕がチート能力をあげるって前にいったでしょ!」
「あっ!そうだ!今おれは成人の儀で職業をもらうところだったんだ!それだけ重要な任務があるんだ。勇者や大賢者みたいな凄い職業なんだよな?」
「勇者?大賢者?そんなチンケな職業を僕が与えると思っていたのかい?」
「勇者と大賢者がチンケって…他に無いだろ魔王を倒せる強い職業なんて!」
「チッチッチッ…僕はあの時言ったよね!君にしか使えない能力だって。君だけの君のための君にしか使えない能力…それは……」
「それは…?」
「なりきり師だ!」
「なりきり師?」
「そう!かつてなりきり俳優だった君だけがなれる職業。勇者だろうが、大賢者だろうが、剣聖だろうが、ペイトリアークだろうが、条件さえ満たせば、いつでも何にだってなれる。それがなりきり師さ!あっ、ちなみにステータスは自分の力で上げていってね。晩成型の職業なのさ。」
「ペイトリアークってなんだよ!そんな職業聞いた事ねぇよ!でもまぁなんとなくはわかった。色々な職業になりきって職業を変えられるって事だろ?なりきる職業でステータスが変わるって感じの…」
「う〜ん…少し違うけど、まぁだいたいはそう言う事だね!これこそ最強の職業だと思わない?僕が思いついた中で一番便利な能力だと思うんだ!ただなりきり師になれる素質の子が今までいなくてね…そこに現れたのが君だよ!この力を渡すのをずっと楽しみにしてたんだ!」
「ずっと楽しみにしてたんだ!じゃねぇよ!それなら最初からくれてたら成人になるまで待たなくてすんだんだぞ!魔王討伐のためのスタートの時間が全然早くなるじゃないかよ!この世界の子供はステータスも見れないし…」
「そんなの決まってるじゃないか!僕は子供に職業を与えるなんてナンセンスな事はしないよ!子供は大人のお手伝い位がちょうどいいのさ。
ステータスにしてもそうさ。人間って生き物はね自分より下の人間には容赦無いんだよ!君も地球で生きていたんだ知っているだろう?人間が集まれば弱い人間はイジメられる。別に子供に限った話ではないが、少なくとも僕はそのリスクを無くしたんだ。」
「でも…」
「考えてもみてご覧。子供の時に判明した職業で一人はただの剣士もう一人は剣聖どっちがマウントを取ると思う?」
「…剣聖」
「ほらね、剣聖の子は子供の内から周りからチヤホヤされて育つんだ。ろくな大人にならないよ。君俳優だったし子役の子供くらい知ってるだろう?」
「あ〜。なるほど…」
「調子にのるか、周りの顔色ばっかり伺って育つかの二択しかないんだよ!子供は子供らしく生きるのが一番だと僕は思うんだ。だから成人になるまでこの世界では職業はあげなかった。君も含めてね!納得した?」
「だけどおれ中身は大人だし、黙ってる事だってできたんだぞ。」
「いつバレるかわからないリスクを負いたかったの?この世界は魔法が使えるんだよ?もちろん鑑定持ちだっている。」
「…」
「それに君が子供の時から強ければ周りの大人達が不審がる。きっと一人で隠れて特訓とかしちゃうんだよ。転生者ってそういうもんでしょ?」
「……」
「何も言い返せない?そりゃそうだよね。僕は心が読めるからね君の考えている事もわかるんだもん。だから神に口喧嘩なんて挑んでも無駄だよ!もちろん物理的な喧嘩も、魔法的な喧嘩もだけどね。」
「あ゛ぁもう!わかったよ!おれの負けだ!」
「当たり前だよ。本物の神に勝てるわけないでしょ!それより君にあげるのはなりきり師だけじゃないよ。」
「ん?他にまだあるのか?」
「なりきり師はチート職業。次にあげるのはチートスキルだよ。」
「チートスキル?」
「まぁなりきり師ならいずれ獲得できるんだけどね、便利そうなスキルと、超レアな固有スキルをあげるよ。いちいち説明するのは面倒だから戻った時にステータスで確認してね。」
「面倒って…おれ一応この世界にとっての重要な人間だよな?」
「今後は死にたくなかったらそうやって自分を特別な存在だなんて思わないことだね。魔王だって決して弱い訳じゃないんだから…
おっ、どうやら時間みたいだね。君の体がそろそろ限界みたいだよ。」
「えっ?もう?まだ話したい事がたくさんあるのに…」
「またそのうち会えるさ。君が会いたいと願えばね。」
「そうか…それなら安心だ。あっそうそう!おれの今の両親がプライに感謝してたんだ。代わりにお礼を言っとくよ、ありがとう。」
「あぁ、あの子達だね、子供ができないって悩んで教会に祈りに来たから丁度いいと思って君を授けたんだ。僕の方こそ礼を言っていておくれよ。」
「君を授けたって……わかった。伝えておく。」
「それじゃ悪魔と魔王の事、頼んだよ。また僕に会いたくなれば教会で祈るといい。」
「わかった。またな!プライ。」
意識が遠のいていく…前に転生した時と同じ感覚だ。
「異世界を楽しんでね。」
「ユウキ君!ユウキ=ノヴァ君!」
神父の声で目が覚めた。どうやらプライの世界から無事に戻れたようだ。
「あ、すいません…祈っていたらボーッとしてきゃって…」
「構いませんよ。多くの子供達も同じですから…無事ならそれで結構です。」
皆寝てるのかな?神父さんには少し悪い事をしてしまった気分だ…
「もう終わりですか?」
「そうですね。儀式は終わりましたが、気分が悪かったり、体がダルかったりなどの異常はありますか?」
「…特に無いです。」
「それなら大丈夫ですね。神から職業も与えられた事でしょう。後で確認しておくと良いでしょう。ステータスは自分の個人情報です。信用する者には教えてもいいでしょうが、あまり言いふらさない事をオススメします。」
なんか勝手なイメージで教会って裏があるって思い込んでたけどこの神父はいい人みたいだな…
「わかりました。ありがとうございました。」
神父にお礼を言い、礼拝堂へと戻る。おれが戻った事に気付いたのかホークが近寄ってきた。
「ユウキ終わった!?職業なんだった?」
「まぁ落ち着けってホーク!後で教えてやるからとりあえず帰ろう。」
外で話すと誰に聞かれるかわからないからな。
「これでユウキも成人になったのね。おめでとうユウキ!」
「おめでとうユウキ!さぁ帰ろうか。」
「ありがとう。父さん、母さん。」
皆で家に帰る。途中ホークは荷物を取りに帰ると言って一回離れたが、おれたちが家につく前には合流した。それも大きな荷物を背負って…
「今日旅に出るつもりなのか?」
「えっ?違うの!?」
やっぱり…楽しみにしてたもんな…おれまだ準備もしてないのに…
「おれさっき成人の儀を終わったばっかりなんだけど…普通どれだけ早く出発するにしても明日じゃないか?」
「え〜、早く行こうよ!」
「まぁまぁホーク、今夜は家でお別れ会をやるんだ。君も参加するといい。」
「そうね、一杯ご馳走作るから、一緒に食べて出発は明日にしなさいよ。」
「おれも父さん達に話したいこともあるし…」
「そっか、そうだよね!ごめんおれ楽しみにしてたからつい先走っちゃった…」
よかった…。納得してくれたみたいだ。
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