パーティーでのこと②

前回までのあらすじ!


王城のパーティに招待されたよ!


変な貴族と絡んだよ!


気絶したよ!


以上!


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「ううん…はっ!ここは…」


目が覚めるとそこは知らない天井だった。


最近もこんな展開あった。


この世界で目覚めたときと同じ…


ということはここは新たな異世界…


なわけないか。


どうやらシェリルに突っ込まれて気絶してたらしい。


状況から考えるにここはお城のどこか…かな。


兵士さんか誰かが倒れた私を運んでくれたってことかな?


あとでお礼を言っとかないと…。


などと考えているとガチャと扉が開いた。


暗くてよく見えないが誰か入ってきたみたいだ。


兵士さんかな?


「目を覚ましたようだね」


入ってきたのは兵士さんではなく私より少し背の高い金髪の男だった。


14~15歳くらいかな?明らかなチャラ男だ。


ここで寝てたのを知ってたってことは


この人が助けてくれたってことかな?


「あなたが私を助けたんですか?」


「僕は部屋を貸しただけだよ。」


「ここはあなたのお部屋なんですね…」


王城に部屋があるってことは王子か…


…王子!?


めっちゃ王子チャラいじゃん。


初見じゃ絶対気づかないと思う…。


というか王子様こんな薄暗くて汚い部屋で寝てるの?


そのうち病気になったりしちゃいそうだけど大丈夫なのかな?


まぁ私は王家の問題に首を突っ込んだりしないけどね。


そういうのは主人公キャラの役目だから。


「申し訳ございません…!王子とは知らず…!」


そう言って私は頭を下げる。


流石に王子にぶしつけな態度を取ったとなる大問題だ。


最悪処刑されかねない。


それだけは回避したい。


「ん?ああ。いいよ別に僕はそこらへんは気にしないから。」


そう言って王子は私が寝ているベッドの上に座る。


どうやらこの人は態度とか身分とかを気にしないタイプらしい。


『お前は私に失礼な態度を取った!


極刑だ!』


とか言われないでよかった。


「僕はセレノ=イア=スクレット。君は?」


「私はアリス。西の公爵の娘です」


「へぇー。アリスって言うんだね。


童話の主人公と同じ名前だ。」


「え?」


今、この王子様私の名前を聞いて


『童話の主人公と同じ』って言わなかった?


この世界にもアリスという名前の主人公が活躍する話があるのか…?


それとも私と同じく王子も転生者…?


主人公が王子とかに転生する話はアニメとかラノベで見たことあるけど…。


「あの…王子は…」


「あ、そう言えば君のお友達が心配してたよ。」


王子は転生者なのか。


そう聞こうとしたところで遮るようにセレノ王子はそう言った


「シェリルが?」


そう言えば私が気絶しちゃったからシェリルを一人にしちゃってたな。


「随分と慌てていてね…『私のせいでアリスが倒れちゃったから助けて』って」


ってことは運んできてくれたのは兵士じゃなくてシェリルってことか…。


あとでお礼言っとかないとね。


「ところで君はどうしてここに来たの?」


「ああ…私は魔法学校入学試験の参加者が集まるパーティに来たんです。」


「パーティがあるの?知らなかったよ。」


王子なのにパーティのこと知らなかったのか。


王子の誕生日パーティーも兼ねてるって聞いたから


てっきり他の王子も参加するもんだと思ったんだけど。


「そう言えばお父様が兄ちゃんとか妹たちに何か言ってたなー」


そう言ってセレノ王子は他人事のように『パーティのことだったのかー』


とぼやいている。


「セレノ様は何も聞かされていなかったんですか?」


「ここだけの話、僕お父様に嫌われてるから。他の兄妹たちとは仲いいんだけどねー


って言ってもまともに話してくれるのは一番上の兄さまと妹だけなんだけど。」


側室の子だからとか、王族なのに魔力が低いからとかそんなやつかな。


家族との確執っていうのはどこの世界にもあるんだなぁ。


まぁ私には一ミリも関係ない話だけどね。


「そろそろ会場に戻らないと行けないんじゃない?


僕が出口まで連れていってあげるよ。


このお城、広いから迷いやすいし。」


「いいんですか?ぜひともお願いしたいです。


そのままセレノ様もパーティにご参加されては?」


「そう…出来たらいいんだけどね。


…ま、僕のことは置いといて行こうか。」


そう言ってセレノ王子がが立ち上がった瞬間、セレノの頭から何かが落ちた。


「セレノ様…なにか落ちました…ってかつら?」


「あ」


セレノの頭から落ちたのは男装用のかつらだった。


「セレノ様…女の方だったんですね…それにその髪色…」


さっきとは違いかつらの下から出てきたのは美しい長い銀髪。


前に一回だけチラッと本で見た王妃の髪の色とは違う…。


「…実はね僕今の王様の子供じゃないんだ。」


「え?」


その話、めっちゃ重くないですかね?


そんな話、ただの公爵家の小娘の私にしちゃっていいの?


「先代の国王とお妃の間に生まれた子供だったの。だけど


お父さん…前の国王は急に死んじゃってね。


何かの病気だったんだって。


それを追ってお母さんもすぐに死んじゃったんだ。


残された僕は新しく即位した国王と王妃の子供として育てられたんだ。


でもあの二人は前の王妃に似ている僕が気に入らなかったらしくて。


このかつらをかぶせられたんだ。男の振りをしろって。


その忌々しい銀髪を見せるなって。」


「そう…だったんですね。」


前の王様とお妃様…セレノ王子のご両親を殺したのは今の王様の可能性が高い。


お妃様を自分のものにしたくて王様を殺した後、


言うことを聞かなかったからお妃様も殺した…というところかな?


しかしそれが分かったとして今の私にはどうすることもできない。


「分かってるよ。君に話したところで何も変わらないことはわかってる。


でも誰かに聞いてほしかったんだ。じゃあね。部屋はそのまままだ使ってていいから」


そう言ってそのままセレノ様は出て行ってしまった。


「…とんでもない人と知り合ってしまった。」


あんな話聞いちゃったら王様を普通の目で見れなくなるじゃん…


「…私も戻らないとですね」


こんな話を聞いた後じゃあまり戻りたい気はしないけど。


だけどシェリルも待ってるだろうし。


出来るだけ早く戻ろう。


そう思って私はセレノ様の部屋を後にした。


部屋を守っていた護衛の人にはセレノ様が話を通しておいてくださったらしく


『大丈夫ですか?』と声を掛けられた。


もうセレノ様様だよ。


などと思いながら会場へ戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「シェリルは…ってなんでしょう?皆さんの視線がステージに?」


私が気絶している間にもうパーティーは中盤くらいに差し掛かっていた。


そしてみんなの視線はステージへ向かっている。


これから何かが始まるのだろう。


王都で人気の吟遊詩人のステージとかかな?


「すみません。」


「は、はい!」


近くにいた黒髪の女の子の肩を叩いて話しかける。


そんなビビらなくてもいいと思うんだけど…。


人に話しかけられ慣れてないのかな


「私、少し遅れてしまって今この会場についたばかりなんですがこれから何がはじまるのか教えてもらっても


よろしいですか?」


「あ、は、はい。いいですよ…。これから勇者様のご紹介があります」


「勇者?」


「はい…。なんでも国王様が異界から召喚されたそうです。」


あー。


異世界転移的な?


私は異世界転生的な感じだったけど…


私とは違う方法でこっちに来た人がいるってことか。


まぁ私には関係なさそうかなー。


『では登場していただきましょう!勇者様のご登場です!』


司会の声と共に舞台袖からゾロゾロと歩いてくる。


「うそ…でしょ…。そんなバカな…」


ひらひら揺れるスカートに見覚えのある胸のワッペン。


そして何よりむかつくほど見た美少女の顔…。


『初めまして!私、勇者?の月原香音です!』


なんで…


『突然召喚されて少し戸惑っていますが頑張って魔王を倒そうと思います!』


なんでクラスメイトのみんなが勇者として召喚されてるんだ!?


うそだろ?


私がこっちに来た後に異世界召喚されたってこと?


マジかよ。


あの美少女顔を見なくてすんでラッキーとか思ってた私がバカみたいじゃんか!


『私達も魔法学校に入学することになると思うので合格した方はよろしくお願いしますね』


その一声で会場がわっと沸き上がる。


まぁ当然だ。


月原さんは学校で一番の美少女でマドンナだった。


そんな子がニコっと可愛く笑うのだ。


惚れない男がいないはずがない。


かつての私もそれに…


「まぁ私には関係ないか。」


あっちにはあっちの役目がある。


私には私の人生がある。


というかなんだかんだ言ってるけど


正直これ以上あの顔見てられないんだ。


「あ!アリス!無事でしたのね!良かったですわ!」


「うん。シェリルが休める部屋を探してくれたおかげで助かったよ」


…まぁ気絶したのもシェリルのせいだけど。


というのは心の中に押しこんだ。


「私もう疲れましたわ…。早くおうちに帰りたいです。」


「では帰りましょうか。」


「あの。私達帰りますので。」


流石に無断で帰るわけにもいかないので私は近くにいた兵士にそう告げる。


「ん?あーはいはい。帰るんだな。お疲れ様」


兵士は月原さんに見惚れていてあいまいな返事だ。


「セレノ様にありがとうございました。と伝えてください。」


そう言って私は会場を後にした。


兵士は一瞬、なんでこの子セレノ王子のこと知ってるんだ?


と考えたがその考えは一瞬で消えたとさ。



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