かごめかごめ

たまごになりたい

かごめかごめ

こんな夢を見た、気がする。

夏のある日、私は妻と歩道を歩いていました。その日はやけに暑くて、なぜ外に出てきたのか二人で後悔したことを覚えています。暑い所為か、過疎化の所為か、周りを見てもほとんど人がいなくて、私が見かけた人は奇妙なおばあさんだけでした。なぜそのおばあさんが奇妙だったかというと、そのおばあさんは子供のいない乳母車をおして、「かごめかごめかごのなかのとりは…」と歌っていたからです。


その歌を聞いたからなのかはわかりませんが突然、妻がしきりに「寒い。」と言い始めました。でも、寒いはずありません。その日は夏で、とても暑いのですから。そう言って説得しても妻は寒いと言います。もしかしたら何かの病気かもしれないと思い、私は妻を病院に連れて行かなければと居ても立っても居られなくなりました。病院に行こうと言いかけた時、妻がはっと、嬉しそうに私に笑いかけました。そして、「ああ、そうだ、あの女よ、あの女よ。」とつぶやいたのです。


妻は「かごめかごめ…」と歌いながら私の手をひき走り出しました。私はそんな彼女が恐ろしくなって妻の手を解こうとしましたが、妻の力は異常なほと強く、解けがないので妻と一緒に走りだしました。しかし、力一杯に手を握っているはずなのに、妻に握られているところはまるで空気に触れているように、痛くなく、なんの感じもしないので不思議でした。


私には妻がどこへ向かっているのかわかりません。ですが、妻はなんの迷いもなく物すごいスピードで走りながら歌っているます。走りながら歌っているのに全く息が上がらない妻はやはりどこかおかしく、恐ろしかったです。


そして私達はあのおばあさんを見かけたところに戻ってきました。あのおばあさんは道沿いにある、荒れた竹林の中にいました。そしてまだ、「かごめかごめ…」と歌っています。彼女は私をひいて竹林の中に入って行きました。竹林の中は暗く、鬱蒼としていました。そこで、走っている妻の低い声とおばあさんの声が重なり、いえ、妻の声は高かったはずです。そして、「かごめかごめ…」と不穏なハーモニーが奏でられています。私は恐ろしくなってここから一刻も早く立ち去りたいと思いましたが、私の手を握る妻の力はどんどん強くなっているので、逃げられそうにもありません。妻は歌いながらおばあさんを全力疾走で追いかけます。おばあさんはゆっくりと歩いています。しかし、なかなかおばあさんに追いつけません。


すると突然おばあさんが「つるとかめが…そう!亀、アキレスと亀って知っているかい?アキレスが亀に追いつけないように、お前たちは私に追いつけない。」と掠れた声で叫びました。そして、「そもそも、なんでお前たちはうしろのしょうめんを追いかけているんだ?まるで自分の尻尾を追う犬みたいだぞ。」と言います。


私たちが走り続けると、石でできた籠が現れました。すると、何を思ったか妻は籠を開けようとし始めました。しかし、なかなか籠は開きません。そこで妻は私に手伝いを求めました。私はなんだか嫌な予感がしたものの妻を手伝って籠を開けようとしました。しばらくして、二人で力を合わせ、やっと籠が開きました。そこには鳥居が藍色の鳥居がありました。

夜だったはずなのに突然明るくなったので空を見上げるとそらは真っ赤に燃え上がっていて、まるで地獄の景色ようです。亀は干からび、鶴が落ちてきました。走ってもないのにおばあさんが突然目の前に現れました。妻は鬼の形相でおばあさんを睨みつけ、襲いかかりました。「お前のせいだ、お前が私を崖から突き落としたから、お腹の中の子は。」

彼女が泣きながら叫ぶ声が遠くに聞こえた。


その時、私はふと思い出していました。かごめかごめの都市伝説の一つに、籠で閉じ込めていたのは祟りを恐れて鎮魂させるためにつくった鳥居で、籠をあけると、夜でも空が真っ赤に燃え上がり、鶴と亀が転び、自分の後ろが見えるほぞの天変地異がおきる。かごめかごめはその籠を開けてはいけないという歌だという説があることを。





「ねえ、大丈夫?」

妻の声で私は目を覚ましました。あたりを見渡すと緑の筒が見えます。どうやら、私たちは竹林の中にいるようです。「びっくりしたよ、突然走り出すんだから。」

妻の話によると、私はかごめかごめを聞いた途端、彼女を心配し始め、病院に連れて行こうともしましたが、突然、妻の顔を見て嬉しそうに笑い、「かごめかごめ…」と歌いながら走り出したそうです。

もしかしたら私は白昼夢でも見ていたのかもしれません。






最後に…

私は本当に夢を見ていたのでしょうか?

妻が走ったのは現実かもしれません。

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かごめかごめ たまごになりたい @tamagoninaritaitamako

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