第36話 魔法陣?

 朝起きて外を見ると、昨日の不思議な光景はなく普通の街が見える。バルコニーに出て、朝ごはんを作ろう。ジークさんとレイナさんも起きていたので、ささっと朝ごはんを作っちゃおう。


 朝ご飯は簡単にパンと目玉焼きとソーセージを焼いて、後は暖かい紅茶を入れよう。くっきーに材料を出して貰ってご飯を作る。


 やっぱり朝はあの光は見えないみたいだね。お料理を作ってもキラキラしていない。


「今日はキラキラしないね。やっぱり夜だけだったのかな?」


『そうみたいくまね~』


『妖精さんは不思議ぴよね』


「そうだね~」


 みんなでご飯を食べたら、お片付けをしてまた街へ向かう。今日は昨日と違う方に行ってみよう。何か新しい発見があるといいなぁ。


 街を歩いて行くと、下を見下ろせる場所を見つけたので、上から地上を見てみよう。


「どれくらい高いんだろうね」


『見てみるくま!』


 地上を見に行くと、結構高い事が分かる。ちょっと高くてドキドキする。


「ねぇ、あれは何だろう?」


 地上には上から見ると魔法陣が刻んであるみたいに見える。丸い円の中に星みたいになっていて明らかに人工物だ。


『何くま?』


『私も分からないぴよ』


「あれは何でしょうね?」


「そんなものがあるなんて聞いたことがないですね」


「上から見ないと分からないから……ですかね?」


「そうですね。空を飛ぶなんてできませんし、歩いていたらきっと分かりませんね」


 ジークさんがそういうので、やっぱり空からじゃないと分からないって事だよね。うーん、何のために地上にあんなのを作ったんだろう?

 

『あの中心に何かあるって事かもしれないくまね』


「そうだね。気になるからちょっと行ってみたいけど、みんなはどうかな?」


『行くくま!』


『連れて行くぴよよ~!』


「ふふっ、ありがとう」


「行ってみましょうか」


「行ってみましょう!」


 ジークさんとレイナさんも賛成してくれたので、ショコラに乗って魔法陣の中心まで乗せて貰う。


「ショコラ、お願いね」


『任せるぴよ!』


 そういうとショコラは大きくなって、みんなを乗せられる大きさになってくれた。やっぱり自分では登れなかったので、ジークさんが抱き上げて乗せてくれた。


 くっきーを抱っこしたままショコラに乗せて貰うと、ジークさんとレイナさんもショコラに乗って、魔法陣の中心へ連れて行ってもらう。


 ショコラの上から見ていると、地面に近づくにつれて魔法陣のどこにいるのかが分からなくなる。あの高さから見るから分かるんだろう。


「ここまで下りると魔法陣のどこら辺にいるのか全然分からなくなるね」


『確かに分かりにくいぴよ。もう一度上がってみるぴよー!』


 そういうとショコラは少し高く上がってくれた。高くあがるにつれて、魔法陣がよく見えるようになった。かなり大きな魔法陣だということが良く分かる。


「凄い大きいから普通にショコラが飛んでいても気が付かなかったんだね」


『そうぴよね。今まで全然分からなかったぴよよ』


「見える所で中央まで進んでから降りようか」


『そうぴよね!』


 ショコラはそう言うと、魔法陣の中央まで飛んでから下降を始めた。下りて行くと、一瞬何かの膜に当たった気がしたけれど、なんだったんだろう?


『結界になってるくまね』


「結界?」


『今何か感じなかったぴよ?』


「何か膜を通り抜けたみたいな感じだったけど、それかな?」


『そうくまよ』


「それではここは結界の中という事ですね」


「今まで確認されなかったのはこのせいもあるかもしれませんね」


 そういうと、ジークさんは周りを警戒しながらショコラから降ろしてくれた。

 私達が下りると、ショコラは小さくなって私の肩に乗った。


「ショコラ、ありがとうね」


『どういたしましてぴよよ~』


 さて、どっちに歩いて行ったらいいのかな? きょろきょろしていると、くっきーがあっちに何かある気がするって教えてくれたので、そっちに歩いて行ってみよう。


 私には周りの気配は分からないので、みんなにお任せしてゆっくりとジークさんに付いて歩いて行く。少し歩くと空中都市にあったお城のような石造りの建物があった。

 ここがきっとこの魔法陣の中心なんだろう。


「入ってみて大丈夫かなぁ?」


『大丈夫だと思うくまよ』


『そうぴよね。悪い気配は何もないぴよ』


「そうなんだ。くっきーとショコラがそう言ってくれるなら安心だね」


「サラ様、ここはあの空中都市と同じ年代に建てられたはずですが……建物に崩れが一切ないですね」


「確かにジークさんの言う通りですね……」


『多分、この魔法陣がその役割をしているんだと思うくまよ』


 確かにくっきーの言う通りかもしれない。この巨大な魔法陣でこの建物を維持しているんだろう。でも、そこまでして守るこの建物は一体何を守っているのだろう?


 ジークさんがそっとドアを開けようとしたら、開かないみたいだ。


「サラ様、このドア開かないみたいですね」


「そうなのですね~」


 そう言いつつ、私もドアを触ってみると……ガチャっと音がしてドアが開いた。


「えぇぇぇ!?」


「開きましたね……」


「一体どういう事なのでしょう」


『行ってみるくまよ!』


 レイナさんもジークさんにも分からないみたいなので、ドアが開いたってことはきっと入っても大丈夫なんだろう。くっきーをぎゅっと抱っこし直して中に入ってみる。


 中に入ると、やっぱり中もとても綺麗だ。どこも壊れている所など見当たらない。奥に進んで行くと、またドアがあった。

 開けてみると、空中都市のこたつのあった部屋と同じ部屋がここにもあった。


「これは……お城の部屋と同じ?」


「そうですね」


『あの部屋の持ち主がここの家に住んでいたのくまね』


「そうみたいだね」


 机の上にノートがあったので、少し見させて貰った。そのノートの最後のページに、ここの家は日本人にしか開けられない事。

 そして、ここは魔法陣の中心で安全だからここに住んでも良いという事。 

 家にも保護魔法が掛かっているから、半永久的にここはそのままであるという事が書かれていた。


「なるほど。だから保護魔法で守られていたのですね」


「そうみたいですね」


 私にこの人みたいに、後に来る日本人の為に何が出来るんだろうか……。まだ私はこの世界で落ち着けてないから、まだ分からないけれど……この人みたいに何かが残せると良いな。


 何か問題があった時にはここに来たら安全だという場所があるだけで、心が少し楽になった気がする。


 他の所も見て回ったけれど、特に他に気になった物はなかったので外に出よう。


「サラ様、もう宜しいのですか?」


「はい、今の私にはここに住まなくて大丈夫ですから……どうしようもなくなったらここに逃げてこられるって分かっただけで、ちょっと安心しました」


「そうですね。でも、そうならないように私達がサラ様をお守りします!」


『ふふ、ぼくもサラを守るくまよ』


『私も守ってあげるぴよよ!』


「ふふっ、みんなありがとう。私にはここはまだ必要ないから、アレクシス王国に帰りましょう」


『そうくまね! サラのお店ももう少ししたら出来るし、のんびり帰るくまよ~』


『お店ぴよ?』


「うん、アレクシス王都でお店を出す予定なんだよ~」


『ショコラも行くぴよ!』


「えぇぇ!? ショコラも来てくれるの? 嬉しいけれど、エルネスタ王国に居なくていいの?」


『サラはぼくのくま!』


『あっ! エルネスタ王国にいないとぴよ~……だからたまに遊びにいくぴよー!!』


「そっか、やっぱりエルネスタ王国に居ないとなのだね。でもたまに遊びに来られるなら楽しみに待ってるね」


『サラ、大好きぴよ!』


「私もショコラ大好きだよ!」


 可愛いくっきーとショコラを抱っこしてすりすりしちゃう。ショコラとお別れなのはちょっと寂しいけれど、また会えるのが分かったので嬉しい。


「でも、お店の場所分かるかな?」


『それは大丈夫ぴよよ。サラには私の加護があるから、場所が分かるのぴよ!」


「あっ! そういえばそうだったね」


 私の場所が分かるなら大丈夫だね。ショコラがお店に遊びに来てくれたら嬉しいな。

 よし、アレクシス王都に帰ろう。まずはサンドラの街へ行かなきゃね。

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