聖女? いいえ、やったのはこっちのくまです!~可愛いもふもふくまさんと行く異世界浄化旅~

猫野 伽羅

第1話 異世界召喚

 私の名前は青木 沙羅(25歳)会社員をしている。やっとお仕事を終えて終電で家に向かっている所だ。駅に着いて、コンビニに寄ってから歩いて家まで帰る途中、突然凄い光と共に意識を失った。


 遠くで誰かの声が聞こえる……。


「召喚成功しました!」


「こんな子供なのか?! まぁいい、早く聖女か確認しろ!」




(召喚? 聖女? ……そんなラノベじゃあるまいし……えっ、本当に??)



 そぉっと目を開けてみると、そこは石造りの床に壁……こんなのお話でしか見たことないよ?! それにあの人達の恰好は何?! こっちもお話で見たような豪華でひらひらした服を着た人や、魔法使いみたいな恰好をした人……。


 しかも、どの人も日本人じゃないみたいに赤い髪だったり、青い髪だったりと様々だ。


(嘘でしょ?! まさか本当に召喚されたの?!)


「あの、ここはどこですか?」


(ん?なんだか声がいつもと違う気がする……?)


「ここは、フェリク王国だ」


「ふぇりくおうこく? 日本ではないのですか?」


「にほん? それが聖女様のいた国の名前か?」


「聖女様?」


「我々の国は今危機に陥っているのです、聖女様お助け下さい!」


「えぇぇ?! あ、あの私は聖女なんかじゃないです!」



 いつのまに聖女なんてなったのよ、ただのXX歳のXXXなのに!!


(えっ? 私転移前何をしていた?? というか何歳だった? 思い出せない……どうして?)

 

 頭の中がパニックになっていると、魔法使いみたいなローブを着た人が近づいてきた……。


「あなたの事を鑑定させて頂いてもよろしいでしょうか?」


「鑑定? わ、分かりました」


 私にも見えるように鑑定してくれるみたいだ。


 名前:青木 沙羅

 年齢:7

 スキル:くま語理解、くまの友愛


「はっ?! なんですか、これは?!」


(えっ、7歳? くま語? なにそれ??)


 自分の手を見てみると、やっぱり小さい手だ……。でも何か違和感がある……。


(私は何歳で何をしていたの?)


「国王様、この者は聖女ではありません!」


「なんだとっ!! 召喚は成功したんじゃないのか!!」


(そんな事言われても、聖女じゃないって言ったのに……)


 憤慨している国王様に、こっちが文句言いたいよ? いきなり召喚されて聖女じゃないって怒られても知らないよ! もう!


「この者を追放せよ!」


「えっ!? 勝手に呼んでおいてなんなのっ!? 違うんだったら日本に帰してよ!」


「申し訳ないですが、召喚された者は帰れません」


 そうローブを着た人に言われた。


「えっ? だって、聖女じゃないのに? 帰れないの?! どうしてよ、帰してよ!!」


「何をしている、さっさと追放せんか!」


 周りの騎士に連れられて、門の外に出された。ローブを着た魔法使いも一緒に着いてきていた。


「本当に申し訳ありません。これはせめて持って行ってください。何も持っていないと宿にも泊まれないでしょうし……」


「あ、ありがとうございます」


 この人はちゃんと私の事を考えてくれていたみたいだ。素直にお礼を言って受け取った。ここのお金を持っていないと本当に困るものね。


 ローブの人の後ろを見ると、とても大きなお城だった。お城に召喚されたのね。っていうかお城なんて初めて見たなぁ。


 ローブの人に頭を下げてお礼を言うと、後ろを向いて街へ向かって歩き出す。これからどうしたら良いんだろう? まずは宿に泊まって少し冷静になって考えようかな。


 街並みはよくあるラノベの街みたいだ。宿はどこで聞いたら良いかなぁ……。そうだ! 門で聞いてみたら良いかな?


(ラノベを読んでたんだから7歳じゃないと思うんだけど……もう分からないや)


 まっすぐ大きな道を歩いて行くと門が見えた。門番さんに聞いてみよう。


「あの、お聞きしたい事があるのですが……今大丈夫ですか?」


「こんにちは。どうしたんだ?」


「えっと、宿に泊まりたいのですが、お勧めの宿を教えて貰えませんか?」


「あぁ、宿ね。って君1人なのか? うーん……だったらローズ亭がお勧めだよ。大きな街なら大体ローズ亭ってあるから覚えておくと良いよ」


「ありがとうございます!」


「ここからまっすぐ行って、大きな通りを右に曲がるとすぐに左側にあるよ」


「はい、ありがとうございます。行ってみますね!」


 門番さんにお礼を言って、ローズ亭を目指して進んで行く。大体の街にあるって教えて貰ったので、これでちょっと安心だ。


 歩いて行くと、ローズ亭を見つけた。そぉっとドアを開けて中を見てみると、受付に女の人がいる。


「こんにちは、1人なのですが泊まれますか?」


「はい、こんにちは。あなた1人なの?」


「はい、ダメ……ですか?」


「ううん、大丈夫よ。1泊小銀貨8枚だけど大丈夫?」


 女将さんはにっこり笑って答えてくれた。


「えっと、これで泊れますか?」


「えぇ、もちろん大丈夫よ」


 お金を支払って鍵を貰う。お部屋は2階の一番手前の部屋だった。お部屋の中に入ると、普通のホテルの部屋みたいだ。とりあえず、ベッドに座ってこれからの事を考えよう。


 私のステータスのくま語理解とくまの友愛って何なんだろう? もしかして、大きなクマと仲良くなれるとか?!


(いやいやいや……それは怖すぎる……)


 これからどうしたら良いんだろう……お金も後何泊かしちゃったらなくなっちゃう。それに帰れないって言ってたし……。あっ、ダメだ泣きそう……しっかりしなきゃ!


 夕方になってお夕飯の時間になったので、食堂へ行ってお夕飯を貰う。1人でもそもそと食べて、お礼を言って部屋に戻る。


 ベッドにコロンと横になると、これからの事を考える。まずはお仕事を見つけないと……お金を稼げるか不安はある。なんて言っても7歳って出てたし……。


 部屋の鏡を見てみると、やっぱり小さい。黒髪で背中まである長い髪、目はぱっちりとしてて……私こんな顔だったっけ?? うーん……なんだか全然思い出せない……。


 明日は働く所を見つけようかな。いや……でもこの国に居たくないよね。明日はこの国と他の国の事を調べよう。あんな国王のいる所になんて居たくない。


 ベッドに横になっていると、心が疲れていたからかすぐに眠くなってしまう……。


『みつけたくまっ! 待ってて……』


 夢の中でそんな声が聞こえた気がした……。起きてきょろきょろするけれど、誰もいない。


(何だったんだろう?)


 まだ早いし、もう少し寝よう。ゆっくり寝て、起きたら宿の朝ご飯を食べに行く。宿の女将さんに聞いたら、冒険者ギルドと商業ギルドに地図があるって教えてくれた。


 宿を出て、まずは商業ギルドに行ってみようかな。街の中央にあるって聞いたので、大通りを歩いて探してみるとすぐに見つかった。


 商業ギルドに入って、受付にいるお姉さんに声を掛けてみる。


「おはようございます。あの、地図を見せて貰いたいのですが、ありますか?」


「おはようございます。地図ですね、この国の地図と大まかな国の地図と両方ありますがどうしますか?」


「あっ、両方欲しいのですが、いくらでしょう?」


「ギルドから出ている物なので、それぞれ小銀貨1枚ですよ」


「だったら、両方下さい」


 両方の地図を手に入れられた。どこかで地図を見たいなと思ったら、ギルド内のテーブルを使って良いと言って貰えたので、テーブルに行って地図を見始める。


 ここの王国は昨日言っていたフェリク王国だ。南の方へ行くとアズライトの街、その先に砦があって隣国のアレクシス王国へ行けるみたいだ。


 アレクシス王国へ入るとクロサイトの街、次がアレクシスの王都があるのだって。アレクシス王国の評判を聞いてみたいな。


 私が地図を見ていると、さっき受付にいたお姉さんが声を掛けてくれた。なんだか切羽詰まった感じだったから心配してくれたみたい。お姉さん、ありがとうございます。


「あの、少し聞いても良いですか?」


「えぇ、私で答えられる事なら喜んで」


「ここの王国の評判とアレクシス王国の評判を聞いてみたくて……」


「そうねぇ。この王国は前国王様が亡くなって、今政権争いをしているわ」


「そうなのですね」


「えぇ。だからこれからちょっと揺れるかもしれないわ。隣のアレクシス王国は評判良いと思うわ。他にも国はあるけれど、アレクシス王国がお勧めだと思うわよ?」


「ありがとうございます! アレクシス王国に行ってみようと思います」


「せっかく可愛い子が来たのに残念だけど、仕方ないわね~。気を付けて行くのよ?」


「あっ、でも身分証明書がないのですが、砦を超えられますか?」


「だったら、冒険者ギルドのギルドカードを持つと良いと思うわ。ギルドカードがあれば砦も大丈夫よ。あつ、でも今いくつ?」


「7歳です」


「良かったわ、冒険者ギルドの登録が7歳から出来るのよ」


「わっ、そうなんですね。ありがとうございます。とっても参考になりました」


 お姉さんに色々とお話を聞く事が出来たので、まずは冒険者ギルドのギルドカードを作って貰おう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る