終章

第39話 終幕

 大型連休終了後、昇降口で上履きに履き替えた直後、時刻を確認する宗竜。そこに、聞き覚えのある声から、話しかけられた。

「お早う、多賀君。」

「お早うございます。松平先輩。」

 すぐに、返事を返した。そして、2年生の松平元泰は、2階の、1年生の宗竜は、3階の、それぞれの教室へと向かう。何も言わずとも二人並んで、廊下を歩む。

「ひょっとして、松平元泰の登校時刻を『予知能力』で、教えてもらっていたのか。」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。

「多賀君。」

 時間が、やや早いせいか、人通りもまばらな廊下で、話しかける。

「何でしょう、松平先輩。」

「黒田先生から聞いたよ。来週、初公判なんだって。」

 今度は、やや声を抑え気味の松平元泰だった。そして、『誰の』等と言わずもがな。

「はい。僕もそう聞きました。校長先生と、教頭先生は、仕事を休んで傍聴しに行くそうです。先輩は、行かなくていいんですか。何なら、話しをつけますよ。」

「それは、学校を休む理由にならないな。それに。今はほっとしてるんだ。連中の顔を見なくて済むから。」

「そうですか、それは良かった。」

 勿論、連中の末路は、既に『視た』。

 黒田先生を通じて、連中の『余罪』は、たんまり渡しておいた。警察にな。元々、素行不良の悪ガキだ。そんな奴らの言い訳が、通る程裁判は、甘くない。

 相当、長くなる……

 階段に差し掛かるも、人通りはまばらなままだ。

「多賀君、最後に1ついいかい。」

「何でしょう、先輩。」

「今回の件、『見せしめ』なんだろう。」

 更に、声を抑える松平元泰。

「先輩、僕が、最も悔やむべき事が、1つあります。それは、先輩をこの様な『雑用』に巻き込んでしまった事です。申し訳なく、思ってます。」

「……そうか。」

「ですから、今後は、自分の事を『第一』に考えて下さい。この様な『終わった件』の『つまらない』『雑用』ごときに、首を突っ込む必要なんてありません。」

「それだと、『予知能力』を知らない松平元泰には、誤解を与えるじゃないか。」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。

「誤魔化した上に、この物言い、『二度と関わるな』だと……やはり、『見せしめ』か……なんて、えげつない奴。」

 等と言う無駄口を叩かない松平元泰だった。

 この後、無駄口を叩くことなく、それぞれの教室へと向かう二人だった。

「おい……お前、以前、生徒会長の事を『えげつない』と言っていたが、お前の方が、よっぽど、えげつねぇ!」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。


<終わり>

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