転生少女のゆるゆる異世界百合生活

黒百合咲夜

プロローグ <転生しちゃいました!>

 目が覚めると、真っ白い部屋にいた。ここは、どこだろう?


「目が覚めましたか莉璃りりさん。ご気分どうですか?」

「悪いです。状況理解不能」


 いきなり聞こえてきた声に適当な返事を返す。それから、周囲の確認だ。

 えーと? 真っ白い部屋。私。猫ちゃん。椅子。女性。以上。

 さっぱり分からない状況に戸惑っていると、女性が再び口を開く。


「簡単に説明しますと、莉璃さん。貴女は亡くなられました」

「え、私死にました?」

「はい。覚えてますか? 貴女はその猫ちゃんを助けようとした際、トラックに撥ねられたのです」


 はいはい覚えてますとも。あのクソじ……おじさんめ。猫ちゃんが道路に飛び出したってのに居眠り運転してくれちゃってもう!

 でも、そっか~。私、死んだのか~。


「ですが、璃莉さんの生前の善行を考慮し、貴女にチャンスが与えられました」


 ん? これはもしや、アニメとかでおなじみの異世界転生ってやつですかな!?


「異世界転生ですね!?」

「く、食いつきがすごいですね……」


 女性に引かれた気がする。そんな引かれるようなこと言ったかなぁ?

 でも、ワクワクしない!? 異世界に憧れるのは男だけじゃない! 女も夢のファンタジーが好きなんだ!


「はい。貴女を異世界に転生させます。そこで、その世界を脅かす魔王を討伐してほしいのです」


 ……魔王倒してください系の転生かぁ~。スローライフ系の転生を想像してたんだけどな~。


「私、魔王とか相手にするの嫌ですよ。怖いですもん」

「大丈夫です。強力な魔法の才能が授けられますし、なにより他にも転生者はいますから」


 つまり、チートみたいな能力が与えられて、強い仲間もいるわけか。

 ……でも、私戦闘とかさっぱりだしな。ゲームとかアニメとか、かなりジャンル偏ってたし。

 生前は学級委員長の私も、重度の姫女子だったしね。女の子同士の恋愛が何よりの大好物でした。ちょっと血なまぐさいのはNGなのです。

 休み時間には同じ趣味を共有する女子の同志たちと百合の話や推しVチューバーの話で盛り上がり、家に帰ると妹にアタックして玉砕して、部屋に戻って延々と二次元の女の子を眺めてにやける……。

 そんな生活を送っていた私に仲間と魔王討伐? 無理です。

 ……待てよ? ちょっと確認してみたいことが。


「転生って赤ちゃんからですよね? 他の転生者の人も同じ家に?」

「いえ。二人はすでに転生から二年が経ってますし、最後の一人はこの後私の同僚が案内します。全員家も場所もバラバラですよ」


 なるほどなるほど。バラバラですかぁ。それなら、見つからないってこともありますよね。


「分かりました。私、転生します!」

「では、お送りしますね。これは一応男性向けの注意にはなるのですが、お母さんがどれだけ美人でもおっぱい吸うときにいやらしい顔しちゃダメですよ。気味悪がられちゃいますから」


 うぐっ! 世の中の男子以上に私が注意しないといけないやつ!

 自分に戒めを施していると、女性が指を鳴らす。

 光の門が出現したので、私は猫ちゃんを連れて門をくぐる。


「では、お気をつけて。貴女が魔王を倒す英雄とならんことを」


 女性はそう言っているが、私は心の中で謝る。

 皆、ごめんね? 私は魔王になんて関わるつもりはない。魔王戦は苦しいものになるだろうけど、頑張って!

 私はこの第二の人生……女の子と一緒にキャッキャウフフして暮らすんだ!!

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