第5話 契約締結



 雇用が決まったならば、次は契約書だ。

 敦盛は瑠璃姫が用意した書類を熟読しながらサインをしていき。


「しっかり判子押すのよ、あ、母音でも良いわよ」


「え、俺の乳首をッ!? 変態め男の乳首を要求するとはッ!!」


「アンタ脳に精子でも詰まってるワケ? 減額するわよ」


「…………おっぱいをしゃぶろうか瑠璃姫様? それぐらいの屈辱なら喜んで受け入れ……、受け、受け入れ――――くっ、ダメだッ! いくら外側が綺麗だからって俺はッ、俺はなんて情けない男なんだッ! 許してほしい……お前のおっぱいをしゃぶる勇気を持てない情けない男と罵って貰っていい……」


「誰がしゃぶらせるかバカっ!! というか相手がアタシ以外だったらしゃぶるってーのっ!?」


「は? 勿論だが? 特に隣のマイスイートハニーなら例え脇部先生に止められても断固実行するが?」


「今の録音しておいたから、脇部先生とあの子に送っておくわね」


「マジでヤメロォッ!? 俺の社会的立場が死ぬぅッ!? クラスカーストが最低辺に落ちるだろうがッ!?」


「いや、ウチのクラスはクラスカーストもクソも無いでしょうが。他のクラスと同じでバカ騒ぎ大好きクラスでしょ」


「だよなぁ…………ああん?」


 あれっ、と敦盛は書類から顔を上げた。

 今のは少し聞き流せない台詞だ、何せ彼女は学校に通ってなくてクラスメイトとの接点も無い筈で。


「――うん? なんで引きこもりの癖に知ってるんだ? 先生はともかくハニーの連絡先まで何で知ってる?」


「え、登校してないだけでクラスの女子とは仲が良いけど? オンラインで勉強見てあげる時もあるし、偶にはアンタの言うハニーとお出かけするわよ?」


「なんで俺を誘わねぇんだよッ!! ――はッ!? まさか俺がハニーを口説くのに嫉妬してる……?」


「アンタってばホントに頭が精子でお花畑なのね、お情けで良いこと教えてあげるけど――あの子、好きな人居るわよ?」


「ぐはッ!! し、しししし、知ってるしッ!! そんなの知ってるしッ!!」


「うぷぷぷーー、ウケる動揺してやんのーーっ!! ところで好きになった瞬間って?」


「いや、ハニーがな。いつもツルんでる馬鹿の事、すっごい切ない顔で愛しそうに見てる時あんだよ。――――それが、とても綺麗に思えたんだ。思わず抱きしめたくなって、幸せにしてやりたいなって」


「うわキモ……、っていうかそれ出だしから詰んでない?」


「言うなッ!! 友情と恋愛に悩む高校生らしい青春送ってるんだよッ!! お前のペットになるなんて予定外だってーのッ!! おら署名して判子押したぞ、受け取れ畜生ッ!!」


 雇用契約書を叩きつける敦盛、彼女はそれを折り畳むとスカートのポケットに入れ。


「そこは胸の谷間に挟むとか、サービスする所じゃねぇの? テメー本当に高校生男子を飼うご主人様の自覚あんのか? 巨乳美少女のアドバンテージを理解して男心を弄ばないとか、人生舐めてる訳?」


「なんでアタシ叱られてるのよっ!? というかどんな文句っ!? どんな思考したらそんな言葉出てくるワケっ!?」


「おっぱい」


「思春期の高校生かアンタはっ!!」


「いや思春期の高校生だぞ俺もお前も」


「確かに……じゃないわよっ! あーもう、あっくんと話してると疲れるってもんじゃないわよ……」


「すまん……俺のチンコ揉むか? スゲー嫌だけど、幼馴染みのよしみで我慢するぞ?」


「下ネタ絡めないと喋れないの?」


「ああ、お前と話す時だけ下ネタを言わないと俺は死んでしまうんだ」


「あの子に言うわよ」


「ほう、信じるかな? 俺は彼女に紳士に接しているぞ?」


「……もう一つ教えてあげる。アンタのそれ売れない芸人のコントみたいで逆に微笑ましいって」


「……………………え、マジ?」


「マジマジ、大マジよ」


 心の底から哀れむような表情に、敦盛は思わず己の顔を両手で覆って天を仰ぐ。

 馬鹿な、そんな馬鹿な、パーフェクトなコミュニケーションで好感度を稼いでいたと思っていたのに。


「いっそ……殺せ……」


「アンタ、アタシのペットなんだから今ここで自殺しないでよ? 迷惑するのはコッチなんだから、遺書にはアタシは関係ありません、むしろ感謝してますって書いてから死んで」


「そこは止めてくれよォおおおおおおおおお、幼馴染みだろおおおおおおおおおおおおお!!」


「あ、そうそう死ぬ前に一つぐらいご主人様の命令を聞きなさいよ」


「くっ、俺はこんなにも傷ついているのにッ、血の涙もねぇな、何でも言えよご主人様ッ!! やぁあああってやるぜッ!!」


「泣くのか熱血するのかどっちかにして、まぁ楽にしなさい、今日はサービスでマッサージしてあげる」


 そう言うと彼女は書類を入れていた紙袋から棒状の器機を取り出す。

 魔改造されてるとはいえ、敦盛にはその形状に大いに心当たりがある。


「女の子が電マでマッサージ……、AVで見たシチュだなッ!!」


「ふふっ、そんなセクハラ発言をほざけるのも今のウチよっ! 見なさいこの新機能をっ!!」


「AVで良く見る電マに新機能だとっ!? それはいったい何なんだ博士ッ!」


「一つ目っ、強化されたバイブレーション! 威力は既製品のおよそ十倍っ!」


「わおッ! そいつは強力だぜッ!! それでアヒンアヒン言わせる訳だなッ!!」


「そして二つ目っ! チンコ型アタッチメントを装着っ!!」


「女の子がチンコなんてはしたないと思わないか?」


「黙まらっしゃいセクハラ男っ! これは伸縮自在、膨張自在の優れ物っ!」


「…………それ、単品として売った方が良くない?」


「ふっ、アタシを甘くみないで。もうアダルトトイ会社に売ったわ、かなりの金額でよ。――そう、アンタの給料はこのハイパーちんこ君で出来ているの……」


「名前ダサッ!?」


「そして三つ目……、快楽のみを与える電流!! これぞ最強のマッサージ棒っ!!」


「俺に散々セクハラだの精子脳とか言っておいて、テメェはエログッズしか開発してねぇじゃねぇかっ!!」


「下手に開発すると研究機関が五月蠅いのよっ、それに金になるのよアダルトグッズ! 仕方ないでしょっ!!」


「あ、なんかスマン」


「というワケでぇ――今からこれでアンタを癒しちゃいまーすっ!! さあケツを丸出しにするのよあっくん! アンタを雄豚ペットとしてしつけてあげるわ!」


「うおおおおおお、これが初めての仕事! 百万の仕事だなッ!! やぁああああってやる――――って言う訳ねぇだろがド畜生おおおおおおおおおお!!」


「ま、言わば今度売り込む新製品のモニターね、実験台になりなさいよペット」


「それペットと書いてモルモットだなッ!? 実験台と書いてモルモットってやつだなッ!?」


「さぁ、さぁさぁさぁっ! 今日から男の子のバイバイしなさぁ~~いっ!!」


 超魔改造電マを持ってにじり寄る瑠璃姫に、敦盛は盛大に顔をひきつらせた。


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