満D重もえ∧

DarkPython<bl>

第1話 サイエン

 秘密の約束_


 それは惜別の春だった、会いたくても。やはり、ワレは振り返らず、前へ歩んできた。


 たまには寄り道もいいだろう。


 これからまた歩むのに、たっぷり時間があるのだから。


 その先へ一歩、踏み出したところに。優雅にコーヒーを飲んでいた。その光景を見て思わず「うわ。ブラックや」と声を漏らしてしまう。


 どうやら向こうは気付いたようだ、にっこりと笑みを浮かべ、まるでこちらを呼んでいるようだ。


 「コーヒー飲めるん? 」


 あれから月日が流れて、ずいぶん風貌が変わっていた。その素足は僕をも興奮させる。


 「せやで」


 元気いっぱいで何より、今日出会えたのは他でもない。ワレが約束したからだ。ただ肝心の彼女はどこに!?


 僕はこれまで、幾らでも解くタイミングがあったにもかかわらず、一切触れずに、とうとう卒業を迎えようとしていた。

 しかし、これはまだ序奏に過ぎないのではないか。いや、待ちに待った、絶好のチャンスなのかもしれない。それとも、逃がす手段を選ぶのか。


 やがて、積み重なった膨らみは腫れており、ちょっと不気味に感じる。

 僕はその存在を知ってからというもの、ラジオを買い、声優やラジオDJのトークを聞き、膨らませ方や面白さをうかがいつつ、言葉巧みに操る。


 「この声好きや」


 ついに、その時が来た。丸みを帯びた膨らみはこれにて卒業する。見た目も、味覚も、音色も、恐らく忘れられないだろう。


 「ほな、な」

 

 これで、晴れてごく普通の。


 「なーにやってんだ。ワレも連れていけ」


 どうやら僕はエッジをふんだんに効かせたつもりだったが、これで丸く収まるよ。

 

 「おとこですけど。そこにいる彼女は、いいんですか」

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