第21話


「しかし、これからどうするか…」

「ねぇ、早くお姉様を探しに行こうよ」

急かすように俺の体を揺らしてくる。

「ああ、そうしたいのはやまやまなんだが…」

先程、若い医者にこの傷だと治るまで全治一ヶ月だと言われた。

「こんなの引きちぎっていけばいいじゃない」

そう言われても…体が思うように動かない

「何?あんたの怪我が治ればいいの?」

「なんだよ…その言い方、魔法は使えないんだろ?」

まるでこの怪我が治るような言い方して

「確かに魔法は使えないけど…これを使えば」

リズが懐から何か赤いものを取り出す。

「なんだこれ?」

「これもわからないの?ほんとに無能」

「無能で悪かったな、だからこれが何か教えてくれ」

「これはポーション、回復系のアイテムよ。感謝しなさいよ、一応これ高いんだから」

小さいガラス瓶の中に赤い液体が入っている。

そしてそれを受け取り一気に飲み干す。

案外、味は甘いんだな…

怪我は跡形もなく消え、体も動くようになる。

医者にそれを見せに行くと、「ありえない!」とても驚かれた。

まぁこの世界の技術だと無理だよな…

「てか、飲んだ後気が付いたが、この薬…この世界で売れば相当な額で売れたんじゃ」

「何しての?早く」

「ああ…わかった」


病院を出た俺たちは一度俺の自宅へと向かった。

「部屋の鍵を、予備で郵便ポストに入れててよかった」

向かうの世界に行く前の持ち物はどっかに行ってしまった。

もしかしたら部屋に落ちたままになってるかもしれないが…


そして部屋のドアを開けて、俺たちは部屋の中へと入る。

誰もいない…

警察も沙月の行方を探している。

「まぁこんな簡単に…見つかるわけないか」

リビングに行くと乾いていたが…白かったカーペットが赤くなっている。

「俺はここで刺された…」

刺された時の記憶それはとても曖昧だったが、これを見て…やっぱり沙月に刺されたんだと改めて感じた。


「次の場所と言いたいが、沙月の行きそうな場所がわからないだよな」

「何?あんたお姉様の彼氏じゃないの?」

「まぁそうなんだけど」

実際、沙月は自分のことをあまり話さなかった。

どこに行くにも俺を優先し、自分が行きたい所を教えてくれたり、プレゼントも何を送っても喜んでくれていたが、好きな物を聞いても「ともくんがくれる物ならなんでも嬉しいよ」しか言わなかった。

「家族のこととかも知らないし実家がどこにいるあるかもわからない」

「じゃあどうするの?」

「まぁ高校が一緒だったってことは家も近いかもしれない…闇城って結構珍しい苗字だから…探せば見つかるかも」

他に沙月を探す方法がないのか?

俺は沙月の彼氏なのに警察よりも彼女のことをちゃんと知らない…

自分の無力さに嫌気がする…

沙月を変えるって沙月のことを知ろうともしなかったのに…

何が変えるだ…

「リズ!沙月を早く見つけよ!そしてあの世界に」

「なに急に変なテンションになってキモいけど…そうね、早くお姉様を見つけなきゃね」

「じゃあ!早くっ」

「その前に…ちょっとやりたいことあるんだよね」

そういうとリズがニヤリと笑った。

「やりたいこと?」

リズの言葉に俺は首を傾げるのだった。


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