第13話
「見て!お姉様!湖が綺麗」
ギルドの紹介で俺たちはシーズという街に向かうことになった。
街を出る時ギルドから「魔族を倒してくれたお礼」と大量の金貨を貰った。
まぁお金はあって損はないしな…
そして今、俺たちは馬車に乗りながら目的地へと向かっている。
「そうだね。あ!ともくん。温泉が有名らしいから一緒に入ろ?」
俺たちが向かっている街は水の都と呼ばれていて、温泉などが有名らしい。
「そうだな…」
俺が適当に受け流すと「ともくんのエッチ…」と頬を染める沙月に対し、リズは露骨に嫌そうな表情を浮かべ「キモ…」と俺だけ聞こえる声で言ってくる。
はいはい、どうとでも言ってくれ…
俺はそんな事より気がかりに思うことがあった。
それは行きの馬車の中リズが言っていた「そこね、私の友達が店をやってるよ」という言葉だった。
友達…ということは同じ魔族…だよな?
魔王を倒すための手掛かりでも手に入ればいいんだがな…
そんなことを考えながら数時間ーー
「ここか…」
俺たちはシーズへと着いた。
中は水の都というだけあってそこら中に温泉や噴水などがある。
たまに見た目が温泉のような噴水もあった。間違えて入ってしまいそうだな…
そんなことを考えながら一度街を見て回る。
そのついでに宿を取り、店主にお勧めのスポットがないかを聞いた。
「これは…すごいな」
店主の紹介で向かった街の中央部分そこには一際大きい噴水があった。
すると、どこからかオルゴールから流れてくるような音楽が流れ始める。
「何の音楽だ?」
周りをみると、噴水の方へとみんなが向かっていっている。
「俺たちも行ってみるか」
そして俺たちもその後ろをついて行く。
「何かあるのか?」
そう思った次の瞬間ーー
バァッと噴水の水が一気に吹き上がる。
そしてそれは霧状になりながらまわりに飛び散る。
「温かい…」
その霧は温かく…まるでーー
「温泉じゃよ」
近くにいた老人が喋り掛けてくる。
「ここにくるのは初めてかい?」
「ああ、そうだ」
その後、老人の話では今は街の噴水に造り替えられているが、この噴水はこの街で最初に見つけられた温泉らしい。
「そして決まった時間になれば、今のように噴水が吹き上がるようになっとるんじゃ」
「何で?そんな風になっているんだ」
「それは単なる観光客を増やすためじゃよ」
そうか…吹き上がる温泉って確かに面白いかもな…
「なぁ先に私の友達の店に行ってもいいか?」
「そうだな…」
温泉などに入る前にめんどくさい事は先に終わらしといた方がいいと思うしな。
リズについていき、その友達の店の前へと着く。
「ともくん、ここ入るの?」
沙月が明らかに不機嫌そうな顔をする。
「そうだな…リズほんとにここなのか?」
俺も聞き返す。
「うん、ここだよ」
そういうと店の中へと入って行く。
いや、だってよ…
店の前の看板に『呪いの店』とか書かないだろ…てかネーミングセンスなさすぎだろ…
確かに魔族っぽいけどよ…
リズについて行くように渋々俺たちも店の中へと入っていた。
だが、その時の俺たちは気づくことはなかった。
あの噴水やこの店が俺たちの運命を左右することになるなんてーー
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