第8話


「ともくんは…私を信じてくれるよね?」

彼女の片方の手には血がべったりとついた包丁…

別の手には肉の塊…

そして、彼女は目からは涙が流れていた…

「俺はーー」



「ッ!はぁはぁ……ゆめ…か」

嫌な夢だな…またあれを見るなんて…

「んー」隣でスヤスヤと眠る彼女の顔を見る。

あの時、沙月はなんで泣いていたんだ?…

『私を信じて…』そう言った彼女を、俺は信じることができなかった。

本当は、何か別の理由があったのかもしれない…

が、理由がどうであれ、殺すことはだめだ…

あそこで俺が彼女を信じてあげれば…変わっていたのだろうか?

沙月はあの時のことを忘れている…

もし…彼女が思い出したならちゃんと理由を聞こう…

「おはよ〜ともくん」彼女が目を覚ます。

「おはよう、今日はギルドの方に行くぞ」

「ギルド?クエストでも受けに行くの?」

「いや違う、今回のことでギルド長から俺たちに直接お礼を言いたいそうだ」

昨日の夜、宿の方に来た冒険者にそれを言われた。

「それで行くの?」

「ああ、いつでも来ていいとのことだったが、早めのほうがいいからな」

「向こうのほうから来たらいいのにね〜」口を尖らせながら言う。

「まぁ、向こうも忙しいんだろ」

「よし」俺たちは支度を済ませて、ギルドへと向かった。


「ここか」

俺たちは、ギルドに入り、受付へと向かう。

「こんにちは、冒険者様今回はどのような要件でしょうか?」受付嬢が決まったかのような台詞を言っている。

「他の冒険者に言われ、ギルド長に会いに来たんだが」俺がそう言うと

「あ!とも様と沙月様ですね。少しお待ちください」そう言うと奥の方へを歩いて行った。

少しして、戻ってくると「こちらです」と俺たちは奥の部屋へと案内される。

そこには四十歳ぐらいのガタイのいいおっさんが座っていた。

「座ってくれ」

そう言われ、向かいのソファに俺たちは腰を下ろした。

「俺はここのギルド長のガデォスだ。まず、今回のことだが、本当にありがとう。彼奴らには手を焼いていたんだ。」

ギルド長が頭を下げてくる。

「それと感謝するのはこっちなのに来てもらう形になってしまってすまなかったな」

「そうだよ〜」彼女が反応する。

「おい…そんなこと言うなって」

「はははははっいや、大丈夫だ。はっきり言う姉ちゃんだね!」ギルド長は笑っている。

「それで今回来てもらったのは、“報酬“についてだ…冒険者なって二人はクエストを受けたことはあるか?」

「いや、まだだが」

この世界に来て冒険者の登録はしていたが、クエストを受けたことはなかった。

「そこでだ…まだ二人ともFランクだと思うが、それをDランクまで上げる。それが報酬でどうだ?」

「質問してもいいか?ランクが上がると何か変わるのか?」

元の世界のゲームとかだと受けることができるクエストが増えたりとか、だったが…

「貰える報酬の額が増える、それだけだ。シンプルだろ?」

「ランクによって受けれるクエストが決まっているとかはないのか?」

「ん?そんなのはないが、まぁランクを上げるのに必要なクエストはあるが、どのランクでも基本、全部のクエストは受けるとはできるぞ」

「だが、俺たちはそのクエストをやっていないが…ランクを上げても大丈夫なのか?」

「必要クエストと言ってもそのレベルに達しているか見るぐらいだからな…あのギルド潰したお前らなら全然問題ない…ほんとはもっと上げたいぐらいだがな。一度に上げれるランクは二つまでって決まってるんだ。ギルドのルールでな…まぁ君たちならすぐにSランクに上がれるだろうな」

そして俺たちはDランクへと昇格した。

「これからどうする?」ギルド長が聞いてくる。

「まだ時間もあるし、一つクエストを受けていったらどうだ?」

そうだな…お金の方も少しでも増やしておきたいし、受けておくか…

俺たちは、ギルド長から「最初はこれにしとけ」と言われ、ザーメル森のゴブリンの討伐の依頼を受けた。

だが…この時の俺たちは、知らなかった。


今から行く森でこんなことにあんなことになるなんて…


「沙月…やめて…くれ」


「ともくん…ごめんね…」












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