① モンスターを倒そう!!

第7話 スキル確認と、モンスター・<赤狼>

 拳を重ね合ったのち、僕らは草原に座り込んだ。


「金矢、お前の〈ジョブ〉は結局何なんだ?」


 少し休んでいると、心子はそう問いかけてきた。


「そういえば、よく確認していなかったな」

「ウィンドウから<特性>を探して出してみて」


 透明のウィンドウを出現させ、<特性>の項目を探し出してタップする。それを、心子が覗き込む。


 ___________


 <ジョブ>

 

 ーーー


 <特性>


 ーーー


 <スキル>


 <未来予知フューチャーサイト> 

 敵の攻撃がどこからくるかを予測線により察知することができる。


 <加速アクセラレーション

 自身の体感時間を極端に遅くさせることで、相手からは加速しているように錯覚能力。相手の強さに応じて遅さは変わる。


 <瞬間複製フラッシュレプリカ

 相手の技を素早く複製し、使用する。複製元から劣化した能力しか使えない。オリジナルより断然弱い。短い時間で消失し、一度に複数回は使えない。一度使うと体力の半分を消費する。

 ___________


「<ジョブ>も<特性>も不明…… そんな人、はじめて」

「まさかそんな希少種だとは思いませんでしたよ」


(<ジョブ>についてはワシから伏せさせていただいたわい。この女に素性をバラすのは危険すぎるんじゃ)


「それじゃあ、<特性>はなんなんだよ、ヴィネット」


 俺は小声で魔神に問う。


(それに関してはワシもわからん。わからなくとも、別に<特性>なんて大したこと問題では無いじゃろう)


 こんだけすごそうな<スキル>があれば<特性>なんぞ問題ないか。


「どれも攻撃にはあまり向いてなさそうですね。<瞬間複製フラッシュレプリカ>は興味深いけど、劣化能力の代償も大きいですから、ソロでの活動は絶対無理みたいでしょうね」

「霊界堂さんと共闘関係を結べて本当に良かったです!!」

「運が良かったわね。さて、私のも見せましょう」


 慣れた手つきで、心子はウィンドウを展開した。


「どれどれ……」


 _____________


 <ジョブ>

 

 <霊能者> 

 霊を操り、祓う者。


 <特性>


 <強者潰しウォーリアークラッシュ

 相手の<強者ウォーリアー>に干渉して攻撃できる。ひとりにつき二回までしか使うことができない。


 <スキル>


 <霊砲スピリットキャノン

 死んだモンスターの魔石に秘められた力を、指先を通じて解き放ち、攻撃する。威力とは、魔石の秘める力に比例する。使用後、反動あり。


 <守護霊ガーディアンスピリット

 魔石を割った時に溢れるエネルギーで、周囲にバリアを作り出す。


 _____________


「こんな感じ」

「魔石頼りのアタッカーだな」


 魔石というのは、すべてのモンスターが体内に所持している、宝石のようなものだ。より輝いているものほど、強いモンスターであることを表す。


 モンスターは<冒険区画>という場所のみに現れる。この<はじまりの草原>も<冒険区画>のひとつだ。

 多くのプレイヤーはPvP目当てでこのゲームに来ているので、さほど人気はない。


「そうね。私は今までソロでモンスターを狩り続けてきたけど、相当きつかったかな。少しは楽になるかもしれない」

「なら結果オーライだな」

「利害関係の一致ってところですかね」

「まあそんなところだ」


 風が、僕らの髪を揺らす。のどかな草原には、モンスターの気配なんてない。出るとわかっていても、まったく実感がわかない。


「ここ、モンスターいないんですか?」

「条件を満たさないと、モンスターは出ないことになってる。自動で湧いてくる仕組みじゃないから」

「条件って何でしたっけ」

「これよ」


 アイテムボックスから、ハーモニカのようなものが出てきた。彼女はそれを口に咥え、とある曲を吹き出した。


「……アオオオオオオォォォォ」


 草原の遥か向こうから、動物の呻き声が耳を刺激する。


「そうか!!」


 ようやく思い出した。このゲーム、ハーモニカを吹かないとモンスターが現れないのだ。モンスターからの奇襲を避けるため、という優しい仕様だった。そして、曲によって出てくるモンスターの種類が変わってくる。


「私が呼んだのは…… <赤狼>」


 体が返り血によって赤く染められたという凶暴な狼。この<はじまりの草原>ではかなり強い方だったと記憶している。


「さあ、いこう」


 心子の誘いにより、僕は立ち上がる。そして、来たる敵の方へと歩み寄る。


「どうやって乗り切るつもりだ?」

「あなたの実力を見たいから、先陣は金矢。私が後ろから援護する」

「承知した、いっちょ頑張るか」


 小走りで距離をつめていく。そして、<赤狼>の姿がチラリと見えたタイミングで、一気に僕は駆け出した。


「ウォオオ?? ……オオオオオオ!!」


 生で見る<赤狼>からは、幾度の戦闘を乗り越えただけの強さをひしひし感じ取れた。剣士バーンとは違った、うちなる獣らしさが見え隠れしている。人よりもよっぽど大きな体長をしていて、かなり強そうに見える。


(金矢!! お主なら勝てる相手じゃ。落ち着いていくんじゃぞ)


「わかったよ、ヴィネット」


 鳴き声をあげた<赤狼>は、僕らの気配に気づいたらしい。4本足で、駆け寄ってくる。


「いざ!!」

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