第48話

 今日はCMの撮影だった。

本来なら今の季節にその季節の撮影はやらないと思うんだけど、急遽お仕事が入ったんだよね。


「いやぁ、本来放送するはずだったCMのメインキャストがスキャンダル起こしちゃって、慌ててユリちゃんにオファー出したんだよねぇ!」


 という事らしい。どんなスキャンダルかは話してくれなかったけれど、テレパシーで伝わってしまう。

へぇ・・・美少年の子役に手を出したショタコン。やべーやつじゃん!




「夏らしいイメージでお願いね!」


「はーい」


 清涼飲料水のCMなので定番のダッシュしたりスポーツをした後にグイッと飲む感じの台本だった。

なるほど、ダッシュかぁ。よし!


「か、カット!!ユリちゃん!アスリート走りはちょっと・・・早すぎてカメラが追えて無いから!」


「あ、ごめんなさい!」


 汗をかくくらい本気で走った方が良いのかと思ったけど、早すぎてカメラが追いつけなかったらしい。あとフォームがアスリートみたいでコジャナイ感が出てたらしい。


 色々やってたら何故かレオタード姿で側転バク宙伸身3回宙返りをする事になった。

いや、最初は側転してみてよ!って言わて、やってみたらバク転も出来る?って聞かれたからやって、っていう事を繰り返してたら最終的に何故かこうなった。


 伸身3回宙返りって床でやる技じゃないと思うんだけど・・・

あんまりそう言う事に詳しい人がスタッフさんに居なかったからツッコまれなかった。






「お仕事終わったー」


「お疲れ様ですユリちゃん・・・この後はお仕事ではないんですが、スポンサーの方が面談をしたいそうです。」


「スポンサー?事務所の?」


「いえ、ユリちゃんに直接付いているスポンサーです」


「いたんだ、そんなの・・・」


「いたんです。まぁ居なくてもまったく問題なくて、重要でもなんでも無いんですが・・・」


「ですが?」


「どうしても、と土下座されてしまいまして」


「え?土下座まで?!」


 なんでやねん!ゲザってまで会いたいとか普通ないでしょ?

あるとしたら姫宮ユリの大ファン・・・とか?


***


 ゲザってまで会いたいという人は思ったより若い女の人だった。

黒いスーツをビシッと着こなすキャリアウーマンって感じ。


「今回は我々”対怪異特別部隊TKT部隊”との対談にお付き合い頂き感謝致します。」


 んん?何か変な名前が出てきたぞ?対怪異?妖怪退治とか?


「それでですね・・・先日、我々の任務中に現れた謎の人物が姫宮ユリさんなのでは・・・と」


「ぎくぅっ!!?」


 大人モードの幻覚を見せていたからバレないと思ったけど、まさかバレていたなんて!!

ご、誤魔化そう!


「な、な、な!ナンノコトカワカラナイデス!ヒトチガイデス!キノセイデス!」


「えぇ?!ここまで動揺しますぅ?私は全く信じていなかったのに・・・部下の一人がそうに違いないとしつこいので一応の確認だったのですが」


「え?!墓穴掘りましたか?!!」


 図星を突かれるとどうも冷静に対応出来ない。ボクのダメな所だなぁ。


「えーっと・・・取り敢えず我々としては、謎の強者が判明したので安心しました。怪しい人物じゃなくて本当に良かったです。ではお暇いたしますね。」


 そう言ってTKTの人は帰って行った。え?確認の為だけにゲザったの?


「何の話かサッパリ理解出来ませんでした!」


 マネージャーの雪子さんはボクの隣で話を聞いていたけど、まったく理解できてなかったらしい。

まぁだいぶ主語とか省いた会話だったからそりゃそうか。


「あ、すみません。ついでにサインを下さい!」


 TKTの人、サイン貰うために戻ってきた・・・

なんか締りが悪いなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

何も無かったボクが反転してやり直す事になりました。 れぷ @redpurain

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ