無機物への執着は、愛するが故に。

死んだら焼かれようが、腐ろうが過程はどうあれ、骨となる。そこにはもはや、本人の意思は残っておらず、カルシウムとリンを主成分とした何も語らぬただの無機物なのだ。

けれど、生きている人間は、その無機物に確かに何かを感じている。古代から装飾品やシンボルとして用いられており、我々の宗教観にも影響を与えているのは間違いない。だからこそ、身近な人の遺骨などは特別であるし、怪しい魅力がそこにはある。

本作は、その魅力に取りつかれた人たちが織りなす物語であり、序盤の緩やかな語りが、徐々に駆け抜けるような疾走感とともに狂気じみてくる様は、本当に見事な構成である。そして、読了感に浸りつつ読み返すと、本文に隠された伏線回収の技術に舌をまくことでしょう。

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