AOIコンサート当日の朝

「…ねっむ」

コンサート当日朝5時。

弦真は早々に目を覚ましていた。

「え、なんでこんな早く起きちゃったん…?」

自問自答。

緊張で寝られなかったからだ。

ならばどうするか。

導き出した答えはただ一つだった。

「…おきるか」

二度寝したら次に起きるのは11時だろうと悟った弦真は、起きることを決意した。


『起きちゃったので、ちょっと走ってくる』

『私も今走ってる〜』

弦真がラインを舞雪に送ると刹那、返信がきた。

「舞雪もか」

舞雪からのメッセージを見て苦笑すると、弦真は走りに行く身支度を始めた。

「イオンに走りいこっかなぁ」

家の外に出てすぐそう決めると、走り出した。



「今何時…?」

舞雪は独り言を呟きながら時計を見ると、針は4時45分を示していた。

「え、時計壊れた?」

あまりにも早すぎる時間に時計の故障を疑ったが、自分のスマホも無慈悲に同刻を示していた。

「こんな早く起きるなんて、遠足の時以来じゃないかなぁ」

早く起きてしまった自分に対して忌々しくそう言い放つと、二度寝するにもいかず舞雪はベッドから降りた。


「久しぶりに走ってくるとでもしますか」

誰にともなくそう呟き、手早く身支度を済ませると、Q・Qから支給されていたスポーツウェアに着替え、家を出た。

走り出してしばらくすると、弦真から着信があった。

『起きちゃったのでちょっと走ってくる』

「ふふっ」

自分と相違わぬ状況であろう弦真の姿を想像して、舞雪は笑いを吹き出した。

「『私も今走ってる〜』と。ったく2人揃って緊張しすぎだよね」

弦真に返信すると、スマホをポケットにしまい、朝の街に駆け出した。


「日の出が、5:45分。なら見れるか」

弦真は、どうせなら日の出を見たほうが縁起がいいかと思い、数十分後に日の出が見られる場所へ向かって走り出した。


同時刻。

舞雪も同じような考えに至り、近くの高台はどこかなぁと思いながら走り出した。


「よし、ここならいいかな」

5時35分に、日本平の中腹にある船越堤公園にたどり着いた弦真。

木が少なく、海が一望できる場所へ記憶を頼りに進んでいく。

「あとは、10分くらいまつか」

時間前に予定の場所へとついた弦真は、大きめの石を見つけるとそこに座り込み時間が来るのを待った。


同時刻。

舞雪は、弦真とは反対の海側に向かって走っていた。

「やばい、あと7分しかない…」

必死に片目でスマホとにらめっこしながら走っていく舞雪。

「間に合いますように…」

時間を見ても何も変わらないと思った舞雪は、時間を見るのをやめて、真っ直ぐに走り出した。


「「日の出だ」」

余裕綽々で座って待っていた弦真と、ギリギリセーフといった感じで息も絶え絶えに間に合った舞雪が同時に日の出を見た。

二人はそのまましばらく日の出を眺め、帰路へとついた。

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