第7話 閑話 のうぎょうたいこくでちゅ

ところ変わって農業大国ホウショク


バウヒュッテを追放してからは王の機嫌がすごぶる良かった。


「あの穀潰しを追放してからというもの金が周ってしょうがない」

「そうですなあのものに掛かっていた給料は我が国の大臣たちの給料に匹敵するものでしたし、その分の金が経済に回せるのは良いことです」

「はっはっは、言うではないか宰相よ」

「このまま大陸一の農業大国と経済大国の称号を得るのも夢ではありませんよ!」


そんな笑い声が王宮執務室に響き渡るくらいには上機嫌だった。


そうこの輝かしい未来予想図を絶望の二文字に変える一報、否五報が来るまでは……


「王よ!緊急事態であります!!西の穀倉地帯が壊滅致しました!」

「な、なに。疫病か?寒波か?いや……我が国にはそのような事例は一度も起きていない。」

「そ、それが穀物が瞬く間に枯れ落ちてゆくのです」

「至急究明を急げ!」


王は食料自給率300%の国であるが故に輸出が少し減るくらいにしか思っていなかった。

だが西の穀倉地帯が壊滅したのは痛手だった。油などにも加工できるトウモロコシが栽培されていたのだ。商品作物としても使えるトウモロコシが輸出できなくなったのはこの国だけでなく諸外国にとっても大きな痛手となることには間違いなかった。

幸い備蓄はいくつかあるので1年くらいは大丈夫だろうと考えた矢先


「陛下!」

「陛下!!」

「国王陛下!」

「国王様!!」


4人の大臣が顔を青ざめて


「南の薬草、スパイス畑が……」

「北の根菜畑が……」

「東の果樹園、野菜園、ハーブ園が……」

「王都の特殊農園が……」


「「「「壊滅致しました」」」」


その報せは大陸中に広がることとなった。


農業大国ホウショクが今年の生産が壊滅したと


周辺諸外国はもちろんそれを介して買っていた国々も多大なるダメージを負うことになる。

戦争をしようとしていた国も

商いをしようとしていた国も

技術を高めようとしていた国も


みんなホウショクからの輸入に頼っていた。


ホウショクの原因究明に各国はこぞって技術協力を行った。


結果あることが判明した。


ホウショクの土地は魔力が強すぎるせいで土壌菌が一切育たない


土壌菌が育たなければどうなるのか


答えは単純

植物に栄養が行き渡らなくなってしまうのだ。


日本の農業にも農薬を使うと起こる問題の一つとして挙げられる土壌菌


農薬を使うことで寄生虫などを殺して安全にサラダにして食べることができるようになったが土壌菌すらも殺してしまい栄養価が昔に比べて落ちるという現象が起こっていた。


そして王は歴代の王が残した書物を見た。


スライム師の一族だけは解雇するな、否、何が何でも引き止めろ!

奴らはこの不毛の地に恵みをもたらした救世主だ!

土壌菌の代わりを担ってくれるスライムと全て契約できるのはあの一族だけだ!!

もしあの一族が無くなりでもするのならばこの国は確実に滅ぶ!


そして王は悟った。


あのスライム師を連れ戻さなければこの国は滅ぶと


だが王は知らない


スライム師は既にこの世界にすら居ないことに


農業大国はバウヒュッテという寄生虫を王命という農薬で追い払ったかもしれない。

だがスライムという土壌菌を失ったは緩やかに植物を失っていくのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る