第7話 父方の祖父母ってどんな人?

 俺は、お金について勉強したら、満腹と疲労が相まってそのまま昼を食べずに寝た。その為に気がつけば外は、真っ暗だった。


「(前世でも、寝る子は育つって言うから、今世もある程度の身長が欲しい所だ。あっ! そう言えば、俺の祖父母って如何言う人なんだ? 聞いてみるか)」


「ねーねー! 父ちゃん、母ちゃん! 俺の爺ちゃん達ってさーどんな人なの?」


 俺は、明日から預けられる祖父母達について、知らなかった事に気が付いた。その為に夕食後まったりしている両親に向かって質問した。


「んっ? ああ、言ってなかったか? この際だし、先に言っておくか。なぁ? 母ちゃん」


 父は右上を見ながら、少し焦った表情で言っていない事に気がついた。


「そうね。それがいいわ、アンタ」


 母も父の方に目を向けると意見に賛同する。


「そんじゃあ、先ずは俺の両親についてだ。俺の父ちゃん……つまり、お前の祖父は、[アラン]と言うんだ。人間種パーソン族で、現役の冒険者として活躍しているんだ。


 俺の母ちゃん、つまりお前の祖母は[ミンク]と言うんだ。純血妖精種ノムルス族で現役の鍛治職人なんだ。父も母も明るく元気な人柄をしているから、心配する必要は無いぞ」


「アラン爺ちゃんとミンク婆ちゃんか……どっちも、現役なんだね」


「そうだな。リオが、明日から預けられるのは、俺の両親さ。俺やリオのこの茶髪や背丈は、ノムルスの血を濃く受け継いでいる証だ。つまり、お前の婆ちゃん譲りなんだよ」


 父は、何度も頷き、顔を上げると右手を前に差し出して言った。


「そうなの?」


 俺は不思議そうに首を傾げながら質問する。


「おう。俺もあまり身長がある訳じゃねぇが、ノムルス族は全体的に茶髪で、小柄が体格が多くてな。俺は160cmはあるが、それでもハーフノムルスの中では、高い方だ」


 父であるアモンを含めたノムルス族は、妖精種の中でも低身長で筋肉質になる傾向が強く出ている。純血種の男性は、小柄でゴツい様な見た目で、女性は、発達途中の少女のような見た目が多い。


「身長の平均ってどのくらいなの?」


「そうだなぁ。婆ちゃんの様な純血で140cm前後、俺の様なハーフで150cm前後だったから……。リオの様なクォーターなら160前後じゃねぇか? 個人差によるけど」


 父は上を向き右手で後頭部をかきながら話す。


「そっかー。ありがとうね」


「(まぁ、その辺は、大人になってから考えるか。身長は、どうやってもコントロール出来ないし)」


「おう、続けるぞ。俺の父アランは、確か今年66歳になったんだよ」


「えっ? 66歳で現役? 嘘でしょ?」


 俺は祖父が意外と高齢である事に驚愕する。


「いや、その辺りは、実際に会ってみれば分かるから気にすんな。そんでよ、父ちゃん家系が昔から冒険者一族でな。この王都イシュリナで、確か代々生まれ育ったって言ってたっけか。


 俺もガキの頃は、何度か会った事があるけど父の弟、つまり叔父に[アルミン]、父の姉、つまり叔母に[ミルティ]と言う姉弟が他国にいる」


「ヘェ〜他国か……興味あるなぁ……」


 俺は他国の存在に胸を躍らせた。


「おう、でっかくなったら、行ってみると良いさ」


「うん、そうするよ」


「そんでな、父ちゃん達は、リオと同い年の頃から、俺の爺ちゃんに冒険者イロハを叩き込まれたそうだ。そういや、俺も5歳からか……まぁ、いいや。


 んでな、色々冒険者として活動する中で、欠点とか悩んでいた時に、母であるミンクに出会ったのが、馴れ初めだそうだ」


 父は話の最中に胸のあたりで、腕を組み思い出しながら説明する。


「まさに、運命の出会いってやつだね」


「そうだなぁ。次は母であるミンクについて説明していくぞ。母は今年で95歳になったな。まぁ、純血妖精種は、基本長寿で平均寿命280歳前後って言われているから、人間換算で……40歳前後……ぐらいか?」


「はぁー凄いな」


「んでよ、母は30年近く、純血ノムルス族の隠れ里で暮らしていたそうだ。でも、昔からの風習で、女性は鍛治場に入る事を許されていなかった事に腹を立て家出したそうだ。


 あれっ? そう言えば、俺も隠れ里に行った事ねぇな」


 父は、自分で言いながら、祖母の実家に行った事がない事を思い出す様に言う。


「何処にあるんだろうね。地下とかに国を作っていそうだね」


 前世の記憶と言うか俺の勝手なイメージを父に伝える。


「ワッハッハ! まさかな〜。それでよ、母は、実家からとても遠いらしい迷宮王国アローゼン・公爵領にある[パタノール]って言う街に住んでいたそうだ。そこで暫くは、鍛治見習いとして、下積み生活をしていたそうだ」


 父は俺のイメージを冗談だと捉え笑う。


「んっ? なんで態々遠くの国で下積みしたの? 連れ戻されない為?」


「それもあるだろうが、1番は人種・性別差別が殆どないからじゃねぇか?」


「差別? 他国は違うの?」


「おう、軍事帝国ゾルピデムなんかは、特に獣人種排斥主義を掲げている国だ。魔法公国フロセミドは、魔法至上主義を掲げているしな。どっちもこの国から遠いから、母ちゃんの実家は、多分だけどそっち方面だと思っている」


「うわぁ……それは、婆ちゃんも逃げたくなるね」


 俺はこの世界の差別に顔を顰める。


「そうだな。そこから10年間住み込みの修業で頭角を表した母は、メキメキと実力を付けたそうだ。そして、ここ、王都イシュリナに店を構え始めた頃に、客として店を訪れた父と出会い恋に落ちたそうだ」


「さっきの話だね」


「おう、そうだ。父は、母の武器の出来栄えや仕事の姿勢に自身と重なる点があって興味を持ったそうだ。母も自分の作った武器が大切に扱われていると気が付き、お互いに何となく興味を持ったそうだ。


 んで紆余曲折あって、俺と弟の[アレク]と妹の[メルシェ]が生まれたんだ」


「えっ? 俺って叔父さんと叔母さんが居るの?」


「おう、確か[アレク]は軍事帝国ゾルピデムに居て、[メルシェ]は魔法公国フロセミドに居るって、手紙に書いてあったしな」


 父は、懐かしそうな表情で、叔父と叔母の近況ついて説明する。


「それにしても、なんで父ちゃんは爺ちゃん達の馴れ初めをそんなに詳しく知っているの?」


「あぁ〜っ。あの2人、昔から仲が良くてな……聞いてもいねぇのに、何かある度にしこたま聞かされたのさ」


 父は、頭痛を抑える様に、両方のこめかみを抑えて唸った。

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