第6話 ステータス

  母の説教と朝飯、デザートのリゴンを食べた俺は、母の家事の手伝いを行いながら、空いた時間にステータスを確認した。


(ステータス)


[名前]フィデリオ

[年齢]5歳

[種族]妖精種 クォーターノムルス

[強度]3/100

[力量]生力33魔力23筋力13速力20知力10器力10

[職業]「・魔法士 1/20 (1/10)」

(一覧)

[技能]

・土魔法0/0(0/0)・水魔法0/0(0/0)

・筋力向上Ⅰ 1/10(1/10)

[称号]イシュリナの祝福を受けし者


 ステータスは、強度が更に1上昇した。更には、技能に筋力向上Ⅰが追加された。


「(よっしゃー! しかし、今日は、超頑張ったから後1上がっても良い気がするが……食事だけでは、上がらなくなりつつあるのかな? 早かったな……食事で強度上昇することが終わるのは……)」


 今日は、昨日出来なかった職業や称号欄以外の場所を押してみることにした。それは、説明が出るか確かメルル為だ。


 俺は、まずは、名前欄から順に年齢、種族を押すが反応は無かった。ここまでは、何となく予想が出来ていた為に特に驚きがなく、淡々と確認した。


「(問題はこっからだ。強度は、RPGで言うレベルに値する。だったら、反応があれば……経験値的なものが見えるはずだ……)」


 そう思いながら、押してみると反応し、横に経験値的なのが出てきた。


 強度:3/100(0/30)

 次の強度上昇まで後経験値30必要。


「(現実世界だけどゲームかよ! 経験値から見ると強度が1上昇すると、経験値の上限が10ずつ上がるのかな……? 次の強度上昇時に、考察の必要がありそうだな……)」


 俺は、吹き出す事を我慢して、思考の海に潜る様に没頭する。


 次に力量を押してみるとこうなった。

 生力:体力や生命力の事。0になると心肺停止。

 魔力:体内魔力(ナド)の事。0になると魔力酔い。

 筋力:物理攻撃力や物理防御力の事。

 速力:自身が出せる速度の事。

 知力:頭の良さの事。

 器力:器用さの事。


 色々出てきたが、文字面以上のことは、あまり分からなかった。


「(でも、生力と魔力については、良い事を知った。0になった時点で、何か欠点があると踏んでいたが……死亡認定じゃ無いのは、嬉しい……。事前に分かるのは、とても良い事だ。気をつけよう)」


 次は、職業の(一覧)を押してみる。すると、新たな職業を手に入れた。


 職業:(一覧)

 魔法士 1/20(1/20)魔法適性がある事。

 戦士1/20(1/20)筋力向上Ⅰを取得する。


「(そう言えば……職業レベルの横にある説明って、最初なかったよな……。もしかして、この説明って俺が、情報の新たに得る事で俺の知識が、ステータスに反映していくのだろうか……?」


 俺は、右手で下顎に触れながら、ステータスの職業欄を見た。今後の方針を考える為だ。


「(あと、下級職が、こんなに簡単に手に入るなら、少しでも色々やっていきたいな……。それと職業は、本人の適性や技能の有無で、解放されるらしい。職業レベルを上げて、感覚を磨いていくみたいだ)」


 俺は今の所、生まれつきの適性や技能の習得が、新しい職業解放の条件である事が、分かった事に笑みを隠せなかった。


 次は技能欄を押してみる。


 土魔法0/0(0/0)

 水魔法0/0(0/0)

 魔法:2刻みで階級の合う魔法を習得できる。・1〜2最下級・3〜4下級・5〜6中級・7〜8上級・9〜10特級

で取得可能。2刻みで知力・器力が5上昇する。


 筋力向上Ⅰ 1/10(0/20):2刻みで筋力に1ずつ追加。最大5追加で上昇する。


 俺は、中々の情報量に笑顔を消し、真面目な表情で確認した。


「(取り敢えず……今日1日は、魔力感知の修行に専念しつつゆっくりして行こう……)」


 そう思い俺は、両目を瞑り魔力に集中しようとした時に、突然あの機械音が頭に響いた。


 "銀貨100枚の寄付が完全に終わりました。新たな称号を獲得しました"


 ステータスを確認している時にまるで、不意打ちを狙ったかの様に鳴り響いた声が、俺を不快にされる。


「(だ〜か〜ら! びっくりするな〜全く)」


 俺は、突然の声に1人で、ビクッとすると母からおかしな奴みたいに笑われて、恥ずかしい思いと共に顔を赤らめる。


「(あの時に寄付は、終わってなかったの? って言うか何この時間差は何……? 狙ってやっているとしか思えないんだけど……。はぁ〜。新たな称号って何だろう……確認しよう)」


 俺は、笑って母を誤魔化しながら、もう1度ステータスを確認した。


(ステータス)


[名前]フィデリオ

[年齢]5歳

[種族]妖精種 クォーターノムルス

[強度]3/100(0/30)

[力量]生力33魔力23筋力13速力20知力10器力10

[職業]「・魔法士 1/20(1/20)」

(一覧)

[技能]

・土魔法0/0(0/0)・水魔法0/0(0/0)

・筋力向上Ⅰ 1/10(0/20)・魅了耐性Ⅰ 1/10(0/10)

[称号]イシュリナの祝福を受けし者、誘惑に打ち勝つ者


「(はっ? 何……これ? 新しく技能増えたんだけど……。えっ? 強制取得? マジ言ってんの? 俺もとうとう、"(目)指そう"系主人公に仲間入り……? 魅了耐性Ⅰや誘惑に打ち勝つ者とは、一体何だろう)」


 俺は、称号欄に新たな称号"誘惑に打ち勝つ者"が追加された事に困惑する。だって、どう受け止めて良いか分からないからだ。自分が地雷と思って破棄したのに、強制習得したら結局変わらないからだ。


 この世界の仕組みが、まだ分かっていない。しかし、少なくとも技術をポイントで交換すると言う事は、常識的に考えて意味不明だ。アニメや小説の様にメリットだけで、デメリットが一切無いならやっても良いが、実際問題そうはならないだろう。


 技術とは、記憶と感覚による経験の積み重ねだ。その積み重ねのためには、絶対的に時間が掛かる。故に、世界大会で優勝する若き天才スポーツ選手が、物心付く前からその競技を行なっているのは、それが理由だ。


 つまり、転生ポイントなる地雷要素は、何かしらの方法で技術記憶と感覚経験、時間と言う3つの要素を一瞬で満たす。それも、明らかに、正攻法の手段とは言えないだろうと言うやり方で。それは、きっと俺の身体や人格に及ぼす影響を無視したやり方だと直感的に思い、地雷だと判断した。


 何故なら、前世の記憶を思い出しただけで、現実逃避(アレ)をしたくらい混乱したのだから。自分が経験した以外の記憶や感覚が、新しく植え付けられると言う事は、人体改造も良い所だ。あの時は、前世で小説を読み漁り、考察した経験が役に立った瞬間だった。

 

 魅了耐性Ⅰ 1/10(0/10):魅了系に耐える。2つ刻みで強度上昇時に知力を1つ上昇させる。最大5つ上昇。


 誘惑に打ち勝つ者:異世界ボーナスポイントを使わず寄付した者に与えられる称号。魅了耐性Ⅰを取得する。


「(いやいや……マジ使えねー。5歳児になんてものを与えるんだよ。一体いつ、この耐性は本領を発揮すんだよ。多分、最低でも10年近くは使えないだろ)」


 俺はひどく落ち込みゲンナリする。


「(はぁ〜。最近はため息ばっかりだよ、こん畜生。まぁ、知力が上がるのは……もう良いよ。魔力感知をやる気が、削がれたわ……こうなったら、違う事をしよう。


 丁度母が、目の前にいるし、父も食後の修練から戻ってきたみたいだから、お金について聞いてみよう)」


 俺は、落ち込んだ気分を変える為に、目の前の両親にお金について質問した。


「母ちゃん、父ちゃん。お金について教えてくれよ」


「さっきから百面相をして、今度は、どうした〜? リオ」


 俺は、如何やらポーカーフェイスが苦手な様で、全然誤魔化せていなかった。


「そうよ。いきなりお金について聞いて。何か欲しいものでも見つけたの?」


 しかし、俺が唐突にお金について興味を持った事に両親は、驚き心配した。また、母は、朝の買い食いの時に何か欲しい物を見つけたと思ったのか、ウズウズした表情で欲しい物を聞いてきた。


「いや、そう言うわけではないんだけどさ。このリゴンって、どの位の値段なのかな〜って思ってさ」


「成る程、そう言うことなのね。分かったわ。それなら教えてあげるわ」


 母は、そう言うと隠し戸棚から財布を取り出し、机の上に数種類のお金を置いた。


「リオ。まずは、お金の単位から教えるわ。お金は、世界中共通の単位で"ロブ"って数えるのよ。主に銅、銀、金、白金、黒金の順に価値を高めていき、分類されるわ」


 母が、そう言うと父が、机の上にある銅粒を手に取り、これが最小だと俺に教えた。


「リオ。これが1ロブだ。この銅粒が、5粒で銅半貨と同じになる。銅半貨が2枚で1銅貨になる。大体パン1つ買おうとすると銅半貨2枚、つまり10ロブ掛かる。


 ちなみに、果物の大体の価格は、平均して14ロブくらいだ。しかし、リゴン1つ買うと7ロブしか掛からない。これだけ見ても、その不人気っぷりが分かるだろ?」


「(成る程……1ロブ=10円くらいの感じなのかな? 確かにパンが100円に対して、リゴンは70円くらいは、人気のなさが伺えるなと思う)」


 俺は、そう思い何度も咀嚼するように頷いた。そして、今度は母が、父の言葉を受け継いで続きの説明を行う。


「リオ。ここからが少し面倒なんだけどね。銀貨からは、銅貨と違って粒がないわ。あるのは、銀半貨と銀貨の2種類ずつになるわ。


 銅貨ぎ5枚で銀半貨になり、銀半貨が2枚で銀貨になるわ。更に銀貨が5枚で金半貨枚になり、金半貨が2枚で金貨になるわ」


 母は、一旦話を区切り俺が理解する為の時間を作ってくれた。


「(つまり……銀半貨=500円で銀貨=1000円、金半貨=5000円で金貨=10,000円位か? なら、あの時の寄付は10万円位で魅了耐性Ⅰを手に入れたって事か? 


 地雷臭漂う技能の強制取得でこれは……課金ゲームなら運営にクレームをつける案件だぞ。まぁ、ゲームじゃねぇし、クレームどうこうの問題じゃ無いか。


 それと強制的な人体改造……って思っていたけど、もしかして実はそうでも無い? もしかして……俺やっちまった系か? いや、結局、技術をポイントで交換して、今後の人生を素直に生きられる自信は無かった。


 だから、この選択に後悔はしていない。だけど、疑心暗鬼で捻くれた考え方は、すごく悪い影響かも知れない。直せるか分からないけど、改善しよう)」


 俺は、自分自身で転生者ポイントを破棄した。それで、受ける恩恵の結果が、銀貨100枚相当に値するとされる魅了耐性である事に1人悪態をついた。


 そして、自身の考察に誤りがあった、深く考えすぎていたのでは無いかと誤りを認めた。その時に自身の性格の悪さを自覚して、改善する事を決意した。


「(まぁ、強制取得とは言え……数ある地雷と引き換えに得られたから差し引きプラス1ってところか? ヨシッ! ポジティブに考えよう。


 俺が自ら選んで取得した訳じゃ無いんだ。チートじゃない。それにこんなのあっても無双出来ねぇし、知力が増える要因を手に入れた、儲け儲け……とはならねぇよ)」


 俺は、ら正に頭痛が痛いと言うよく分からない状態だった。そして、再度、頷き母に合図を出すと、母は満足げな表情で更に説明する。


「金貨からは、簡単でね。金貨1万枚で白金貨になり、白金貨1万枚で黒金貨になるんだよ。アタシ等は、冒険者活動期に白金貨を見たことあるけど、黒金貨は国家予算とかに使われている程大金なんだわ」


 俺は、白金貨=1億円で、黒金貨=1兆円クラスになると言うことを理解した。理解した俺は、父と母にお礼を言って魔力感知の修行に戻る。


「母ちゃん、父ちゃん! 色々教えてくれてありがとう。勉強になったよ」


「おう。それなら良かったぜ」


 父は、笑顔で気にしていない様に左手を軽く上げた。


「ええ。今度から買い物時の計算は、リオに任せるわ」


 母は、父と同じ様に笑い、まるで俺への教育の一環だと言わんばかりに嬉しそうな表情だった。

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