マジでヤバいんですけど

あたしたちはみんな揃ったからでっかい両開きの扉の前に立った

ドラゴンの城は全部黒い石で出来てる

ナレーシャが言った

「この城の壁は全て魔石ですね。これがあるので転送魔法が遮断されます。入ったら出るのは困難です」

「まあなんかなるっしょ」

ナレーシャがこちらに向き合った

「……これから先、どうなるかわかりません。先に言います。勇者様、それにみなさん。私と旅をしてくれてありがとうございました。とても楽しい旅でした。みなさんと会えて良かったです。私、悔いはないです」

「急に改まったと思ったら……何言ってんだ」

ナレーシャをウェイスが小突いた

「何するんですかっ」

「お前も生きて帰るに決まってるだろ。俺様がいるからには誰も犠牲は出させない」

「先ほどまでゲロゲロだったくせによく言いますね」

「あれは別だ!」

クマも言った

「……みんな無事で帰りたい、僕もそう思うよ」

あたしはみんなに言った

「ドラゴン討伐したら打ち上げパーティーするから。みんな参加ね」

全員が頷いた


闇のドラゴンの城が開いた


城の中は暗かった

ウェイスが明かりを照らすと長い廊下がずっと続いてるのが見えた

「めっちゃ先ある」

廊下を見てたら両脇にあったろうそくに急に火が付いた

「え、何」

ウェイスが言った

「どうやらお迎えをしてくれているみたいだ……そこまでするなら案内人でもよこして欲しいがな」

あたしたちが歩くと次々にろうそくが付いていく

おもしろ


歩くと装飾が豪華な両開きの扉に付いた


ウェイスが呟いた

「……感じる、闇のドラゴンの気配……」

「行きましょう、みなさん」

「おー」


あたしが扉に触れると自動で扉が開いた


部屋の中央にぶら下がってるデカくて黒いシャンデリアに灯が灯った

黒いカーテンが壁を飾ってる

そこはダンスホールだった


ダンスホールの奥に黒い影が座ってる

暗闇の中で黄緑色の目が光った

ウェイスが呟いた

「……あいつだ」

そこには闇のドラゴンがいた

影がゆっくりと身を起こした

紫色に鱗が光った

片方の目に黒い宝石がはまってる

ドラゴンが口を開いた

低くて渋いおじいさんみたいな声

「よく来たな…如何な奴かと思えば小娘とは笑わせる」

ウェイスが前に出た

「俺はアルガリオ家のウェイスだ。祖父は貴様の討伐隊だった。アルゴリオ家の名に懸けて貴様を倒す」

「アルゴリオ……そんな者もおったな。取るに足らない生き様で忘れておったわ」

ウェイスが唸った

「先代を愚弄するな……!」

「しかしまあ……よくもこんな出来損ないの寄せ集めが来たものだ。頭の悪い小娘に威勢が良いだけの貴族の男。魔力すら持たない無力な女」

闇のドラゴンがこっち睨んだ

「それに……使えなくて洞窟へ追い出した落ちこぼれもここにいるとはな」

キュー、とウモリが縮こまった

あたしは言った

「とりまあんた倒して世界守る。あ、でもLINE交換したいならしてもいいよ。一緒に写って。いいね稼げそ」


バァアアアン!


ドラゴンがビームを吐いた

あぶな

ガード間に合った

ドラゴンがキレた

「笑わせるな小娘!お前の醜い自己顕示欲の為に神たる我を侮辱するな!」

めっちゃ難しい言葉使ってくる・・・

「よく分かんないけど撮影NGって言ってる?」

クマに聞いた

「……大体そう」


ビーム打ってくるとかないわー

とりま倒そ

「熱いやつ!」

ボォオオオオ

あたしの出した炎はドラゴンの鱗に弾かれた

ナレーシャが言った

「闇のドラゴンは魔力をもつ鱗を持っています。しかし、闇のドラゴンにはただ一つだけ弱点があります。」

「え、どこ?心臓?」

クマが言った

「そこはすべての生物の弱点だよ」

「右目です。闇のドラゴンは先代が右目に剣を突き立てて倒しました。右目は見えていませんから、回り込んで攻撃するといいです」

あたしはドラゴンの右側に回った

闇のドラゴンの右目は宝石がはまってる

これでガードしてるっぽい

どうやって攻撃しよ


「熱いやつ!冷たいやつ!」

ボォオオ

カキーン

あたしはいろいろやったけど宝石硬い

「魔石は最も魔法を防ぐ石!貴様の魔力では壊せん!」

え、壊せないんだ

どうしよ

そうだ、引っ張って取ろ

「ひっ付くやつ!」

あたしは餅を出した

これでくっつけて引っ張ればいいんじゃね

あたし頭いい

頭脳戦してるじゃん

ドラゴンに向かって投げたけど避けられた

とりま数を増やしたらいつか当たるっしょ

「ひっつくやつ……たくさん!」

あたしはたくさん餅を投げまくった

「そんな物が我に効くか!」

ドラゴンにビームで餅をふっ飛ばされた

全然当たらない

「ライト・アロー!」

ウェイスが複数の矢を放った

「フン、無駄な攻撃を」

そのうちの一本が餅に刺さった

そのままドラゴンの右目の宝石に当たった

餅がくっついた

よっしゃ

「ぐっ!忌々しい……!」

ドラゴンが舌打ちをした

「さんきゅ、ウェイス」

餅にくっついてたウェイスの矢が金色の紐に変わった

「冷たいやつ!」

紐を握って魔法を使うと餅が凍りついた

宝石としっかりくっ付いたみたい

「えい」

それを思い切り引っ張った


ポンッ


やった宝石が取れた

「よっしゃ」

「やったな、勇者!」

うちら最強

宝石の下からドラゴンの閉じた目が出てきた

こっちに攻撃当てたらいいんだよね

早速魔法を当てよ

あたしはドラゴンに近づいた


「熱いやつ!」


カキン


魔法は弾かれた

ドラゴンの右目が開いた

ぎょろりと眼球が動いて目が合った


え、目のケガないじゃん


「かかったな!」

ドラゴンの口がカッと開いた

魔力の球が吐き出された

避ける暇ないんだけど

やば

ウェイスが叫んだ

「勇者ッ!」


ドガァアアアアン


あたしはビームを食らった

「倒せると思ったか!!愚か者め」

ドラゴンが上に向かってビームを飛ばした

天井からシャンデリアが降ってきた


ガシャーーーーーーーン!



凄まじい衝撃が部屋中に響いた

辺りにガラスが飛び散った

激しい音が鳴った後、部屋が静まり返った

誰もが今起こったことに呆然とした

シャンデリアのガラスが微かにきしむ


ナレーシャが力なく呟いた

「どういうことですか……ドラゴンの目が怪我していないなんて……」

ドラゴンが翼をはためかせて笑った

「長き眠りでさらに闇の力を身に着けた……昔の傷すら克服した。膨大な魔力。強靭な肉体。よもや何人も我には勝てぬ」


両目が闇の中で輝いた

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