シズクちゃんの故郷

 遺体を焼却する係と、対面する。


「この度は、ご愁傷様です」

「わざわざありがとうございます。館長。ニュウゼンさんも」


 TKB房の館長と、ニュウゼンさんに供養をお願いした。


「お気になさらず、これも修行のうち。ところで仏様は、ヴォーパルバニー族の方々とは種族が違うようですな」


 ニュウゼンさんが、同行者とご遺体を見比べる。


 手伝いに来てくれたのは、なんとヴォーパルバニー族だった。人間の服を着て二足歩行で歩く、白いウサギたちである。


 つまり、シズクちゃんの家族と初顔合わせだ。


 今すぐにでも、ごあいさつがしたい。けれど、ボクたちには仕事がある。


 遺体を焼いてお墓を作るという、辛い作業を終えた。


 シズクちゃんは、ずっと沈んだ顔のままである。気に病んではダメという方が、無理があるか。


 ボクらは、シズクちゃんの住む集落に招かれた。


 ヴォーパルバニー族は、北にある集落に住んでいるとか。


「大きくなったねぇ、シズク」


 ご両親らしき白ウサギさんたちが、シズクちゃんを抱きしめる。


「そんなぁ。ついこの間旅立ったばかりですよ?」

「いいや。たくましくなった。それも、こちらの方のおかげだろ?」


 ボクの方へ、バニー族さんの視線が移った。


「は、はじめまして。冒険者のカズユキといいます」

「ご丁寧に。シズクをここまで守ってくださって、ありがとうございます」

「守るだなんてそんな。守られてばかりです」


 ウサギさんは、首を横に振った。


「あなたのような優しい方と会えるのは、運命だったのかもしれませんね」

「運命、ですか?」

「この子は、何もわからずに雪の中をさまよっていました」


 ウサギ族さんが保護すると、歩けるほどに回復したという。しかし、そのウサギ少女は自分の名前だけしか記憶になかった。シズクちゃんはヴォーパルバニー族から戦闘とサバイバルの技術を教わって、旅に出る準備を始める。


「もしも本当の家族が現れたら、我々に危害が及ぶかも知れない。そう言って、シズクは村を出ました」


 ボクの度に同行しているのも、本当の家族を探すためだ。


 まさか、故郷が宇宙だったなんて。


「宇宙船は、いつ頃発見されたんですか?」

「つい最近です。我々も、シズクの正体は気になっていたんで」


 雪が落ち着いては、拠点を作ってあちこちを探していたという。気の遠くなるような作業を繰り返していた。


「この雪でしょう? 探すのに苦労したのです。まさか、氷山にこんな要塞が眠っていたとは」


 どうして、シズクちゃんだけが生き残ったのかまでは、わからないという。


「とにかく、船が再起動しました。救難信号をキャッチして、本当のご家族が迎えにいらっしゃるのではないのでしょうか」


「本当の家族、ですか」



 ボクが言うと、シズクちゃんはバニー族さんに視線を向けた。



「シズクちゃん?」


「あ、いえ。私にとっては、バニー族の皆さんも家族なんです。だからこそ、阻害させたくなかったんですよ」


 自分はあくまでもよそ者である、シズクちゃんはそう考える子なのだ。そう考えてしまう子で……。


「よし、みんなでお風呂に入りませんか?」


 大浴場的なスポットを、宇宙船に見つけたのだ。ヒールスポットになるかも知れない。


 また、シズクちゃんの仕事も見てもらえる。


「いいですな! 弔いも兼ねて、明るく見送りましょう」


 バニー族さんも、承諾してくれた。

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