秘宝・ブルーゲイザーの真実

 秘宝ブルーゲイザーのある部屋に通された。


 水晶玉の中に、蒼い八面体がクルクルと回りながら輝いている。


「おお、美しい」


 宝石類に関心を持たないボクでさえ、秘宝をキレイだと思った。


「あまりじっくり見てはならぬ。持ってもイカン。取り込まれるでな」

「記録には、あなたが秘宝ブルーゲイザーを盗んだありますが?」

「盗んだもなにもあるかい。そもそもブルーゲイザーは、ワシが作ったんじゃ」

 

 セントレア王は、「世界中の富豪・貴族・王族を腑抜けにする計画」を打ち立てた。


 王家に仕えていた魔法使い・ユーゲンは、ブルーゲイザーを開発する。



「ブルーゲイザーの正体は?」

「これが、時間操作のカラクリじゃよ。不老不死の秘宝じゃ」


 不老不死は、人間にとって永遠の願いだ。


「ただ、副作用がきついんじゃ」

「どんなことが起きるんです?」

「人間の欲をなくすのじゃ」


 これを使えば、人々は争いをする欲求が失われ、セントレア王派楽に世界征服できるであろうと睨んだ。


「ところが、国王の方が宝石の魅力に魅入られてしまったんじゃ」


 結果、セントレア王の欲がなくなった。王政や領地拡大、贅沢はおろか、食べる気力すらなくなってしまう。衰弱死の一歩手前になっても、なにもしようとしなくなる。


「息をするのもめんどくせえ」って名言が、ボクの世界にあるマンガにもあったっけ。まさに、セントレア王はその状態を地で行っていたらしい。


 最期まで、王は秘宝を手放すことはなかったという。


「こんなもの作りやがって」と、ユーゲンは王家の者達から責め立てられた。


 結果、ユーゲンはブルーゲイザーを回収して、天空城へ隠居したのである。


 しかしセントレア王家が代替わりするにつれて、伝説に尾ひれが付くように。「素晴らしい宝石」という以外の情報がなくなってしまったのだ。


「まだお触れがあるじゃろうて、ワシを殺せという」

 ユーゲンは、城から出たくても出られない。


「最初こそ、恩知らずのセントレアめに一泡吹かせてやろうと思っておったんじゃ」

「しかし、あなたの方がブルーゲイザーの魔力に当てられてしまった?」

「いやいや。ブルーゲイザーの真相がわかっているのは、ワシだけじゃ」

「で、魔物で襲いかかってきたのは」

「セントレアの騎士団じゃろ? とうとうワシの命を狙ってきたかと」


 しかし、冒険者の中に秘宝に関心を示さない男がいたので、敵ではないと確信した。


「お前さんたちは、信用できる。真相を語れる話の分かるヤツじゃろうと思って、姿を現したのじゃ」

「それはいいんスけど、どうして裸だったんスか? あたしたちが来るのをわかってたんスよねえ!?」

「風呂に入ろうとしたんじゃ!」


 この奥にあるスパリゾートで、一泳ぎしようとしたらしい。しかし、門番のガーゴイルをボクたちは退治してしまい、オルタが先陣を切って乗り込んでしまったのだ。


「お前さん方も、疲れていよう。一風呂どうじゃ?」

「ぜひ!」

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