第二話 PART2 『第1異世界・炎の王国・・・と?』

『第3異世界・レインタウン』



 そこには雨が降っていた。

 曇った空から雨が降り、雨の優しい音が心を落ち着かせ、雨の日特有のにおいを息をするたびに感じさせ、雨で濡れた服が体に吸い付き全身が重くなる。

 気付いた時には整備されたコンクリートの地面に大の字になって数時間空を見上げていた。

 ただぼーっと空を見ていて、ただぼーっと息をする。雨の音と自分の息の音しか聞こえないこの空間はとても気分がいい。

 すぐにでも寝てしまいそうになるくらいに。

 たまに雨のしずくが目に入り瞬きをする。そのつど自分の意識を確認することができた。


 ………


 俺は涙を流しているのか?顔も髪も濡れていて涙を流しているかわからない。だがきっと流しているのだろう…


 今の俺はだいぶ落ち着いている。前の世界とは別人のように。もう少しだけこうしていよう…


 ………


 この世界ではなんとかやっていけそうだ。俺はかすかに心の中で思った。



 ______



 それから俺は街を歩いた。全身びしょ濡れで少し寒いが今は好奇心優先で行動する。

 この街はパリのようなお洒落な街並みが印象的。白色の建物がこの街のベースとなり、木々や街灯の明かりなどの優しい色で街を覆う。

 晴れていたらより綺麗だろう。


 そんな綺麗な街をじろじろと見ながら俺は人を探すことにした。

 転生も3回目となったら流石に慣れてくる。まずはその世界の情報収集が不可欠。

 そのためには人に会うことが一番手取り早い、、、ということが俺の現段階での結論だ。


 あいにく俺が転生した周辺には人気がないので、川を越えた先の住宅街に向かうことにした。


『はぁー、はぁー、さっむ…それにしてもこの世界はすっごい綺麗な街並みだ…』


 びしょ濡れになりながらも歩く。ひたすら歩く。小さなトンレルをくぐり、橋を渡り、階段を上がってはまた下がる。温かいオレンジ色に光る街灯を目印にしてただ歩き続けた。もう当たりも薄暗くなるくらいに。


 すると小窓と煙突がちょこんと付いている絵本に出てきそうなお洒落な喫茶店が見えた。

 俺は袖口や裾口から雨水をポタポタと垂らしながら一直線に喫茶店へと向かう。


(やっと人に会える…)


『チャリーンチャリン♪』ドアベルが静かに鳴る。


『いらっしゃいませ…おや?見ない顔だね…ようこそ「cup×cupカップカップ」へ…どうぞごゆっくり…』


『はい…っあ…あ!?』


 俺は驚愕した。そこには客もオーナーともに全員が涙を流している姿があった。

 コーヒーを入れているオーナー、おしゃべりをしている客、一人カウンターで座っている客、誰一人欠けることなく泣いている。


『あ、あ、あ…』

 言葉が出ない。


『どうかしましたか…?』


『あ、あ、そ…そういや、よ…用事を思い出したから…やっぱり帰ります…』


『そうかい…ではまたのご来店お待ちしています…』


『はは…それでは、また…』

 俺は逃げるように出ていった。正直少し早とちりをしてしまった。


『チャリーンチャリン♪』俺は扉を閉めて一息つく。


(なんなんだよ…結局この世界もやばいのか?)


 空はもう暗い。すっかり夜になってしまった。


『どうしよ…これから…』


 雨の中をまた歩こうとした時、かすれた声が横から聞こえた。


『ほれ、この傘をやるよ…この街じゃ傘は欠かせないぞ…』


『!?』

 入るときには気が付かなかった。数席だけの小さなテラスにおじいさんが座っている。


『なんじゃ…そんな驚いた顔しおって…孤独なじいさんの小さな親切じゃよ…』


『あっあ、ありがとうございます…』

 当然このおじいさんも泣いている。


『きっ今日は雨がすごいですね。ずっと降ってる…』

 決してうまくはないが気さくに話し掛けてみる。


『ん?お前さんはこの街に初めてきたのかい?そうかい…そうかい…』

 何かを理解したようだ。


『この街はな、ずーーっと雨が降っておるんじゃ…毎日ずっと…』


『毎日?ですか?』


『そうじゃよ…毎日、毎日じゃ…』


 やっぱりこの世界もおかしいようだ。

 雨が降り続ける街?どういうことだ?また、わからないが押し寄せてくる。俺に疑問だけを植え付けて答えはくれない。


『傘をさせば雨を防げるが、傘の中でも雨が降っておる…』

『ようこそじゃ…レインタウンへ…』


(レイン…タウン…?)


 それからというものおじいさんはとても親切に接してくれてここから近いホテルを案内してくれた。しかもホテル代も出してくれると言ってくれた。


 おじいさんがくれた黒い傘をさしてホテルに向かう道中いろんな話をした。


『世界全域に雨が降っているのですか?』


『世界?それは知らないよ…わしは外を知らないんじゃ…』


 おじいさんが言うにはレインタウンから出たことがないらしい。生まれた時からずっと雨が降っていると…

 おかしい、やっぱりおかしい。そもそもおじいさんは転生したわけじゃない?他にもこの世界に転生してきた人たちがいるのだろうか?あいつはいるのだろうか?また疑問が増える。答えを知るための情報収集のつもりが疑問だらけになってしまった。


『ついたよ…ここがホテルじゃ…ごゆっくり休むんじゃよ…それとホテル代がこれじゃ…』


『ありがとうございます…なんとお礼を言っていいか…』

 深くお辞儀をする。


『いいんじゃ、いいんじゃ…孤独なじいさんの小さな親切じゃよ…』


 そう言ったおじいさんはゆっくりと背中を向けて歩いて行った。俺はその小さな背中を見てまた深くお辞儀をした。


 ホテルは外観も内観もとても綺麗で美術館のような立派な建造物。


 フロントで部屋のガキを借りる。無事にホテル代も払うことができた。


『あのー、すいません、レインタウンのパンフレットってありますか?地図付きの』


『あ、ありますよ…はいどうぞ…』


『ありがとうございます』(やっぱり泣いてる…)


(さっきの受付のお姉さん、だいぶ驚いてたなー。まぁ全身びしょ濡れのやつが来たらそら驚くかー。)


 部屋に入ってから寝るまであっという間に時間が過ぎ去った。

 靴脱いで、シャワーを浴び、髪を乾かし、ベットに飛び込む。とんでもない速さだ。


『はぁー今日も疲れた。くたくただ。』


 意識がもうろうとする中、ふとお婆さんが言ってたことを思い出す。


『確か、、あのお婆さん、選ばれたとか移住者とか言ってたような…』


 寝てしまった。ぐっすりと。明日はレインタウンを探検だ。友人とお婆さんに会うために。



『ふぁー…』

 良く寝た。

 時計の針は10時頃を示す。窓からかすかな光が差し込む。曇り空の今日も当然雨が降っていた。


 のんびりとだが着々と身支度を済ませる。

 まだ完全に乾き切っていない服を着て、次に傘とパンフレットを手に取り準備万端。


『よしっ、行ってきます』


 俺はぼちぼちと歩き出した。



 傘を右手でさし、パンフレットを左手で上手く広げて街を歩く。


 パンフレットに大きく太字で書いてある場所に行っては次へ、また次へとどんどん潰していく方式で街を探検していった。


 駅や広場など人が多く集まる場所ではいろんなデザインの傘が波のように並んでいる。奇抜だが独創的で不思議な魅力を感じた。

 非日常好きにはたまらないものだ。


 その他にも行列の絶えない飲食店や歴史ある古びた城などの有名どころも見にいってみた。

 どれも素晴らしいけど、やはり気になるのは「」だ。


 このパンフレットにも裏面の半ページを使って共有の間についての説明が書いてある。


 要約するとみんなの悲しみを共有し合おう。悲しみは鍋だ。鍋に悲しみを入れてみんなで乗り越えよう、、、みたいなことが書いてある。


 胡散臭いがパンフレットにも一番注目するように書いてあるし、何よりこの街を知るにはきっと大きな鍵となるような気がした。


(たしか、前の世界にも「共有の間」があったような気が…)


 俺は足を運んだ。そこはどうやら演説会場みたいな場所で、一人が演壇に立ち周りの人が囲むように見ている。こじんまりとした会場には天井が無く、雨をあえて浴びる作りになっていた。


 席はほぼ満席で後ろの隅っこにしか座ることができなかったけど、こんなにも奇妙な演説はここから見るくらいがちょうどいい。


 一人だけ傘をさしてるのもあれなので傘をとじ、この演説の様子を伺う。


『あー今日も皆、よく集まってくれた。皆がいるから明日がある。皆と分かち合うことで明日が生まれる。』


『さー今日の空を見よ!この広き空を見よ!』

 みんながいっせいに曇った空を見る。


『神様が涙を流す時、我らもそれに答えなければならない。神様の涙を受け入れ、我らも流すのだ。』

 すると静かに目を閉じてここにいる全員が雨を受け入れ涙を流し始めた。空を見上げたまま、ただじーっと涙を流す。

 いったい今何を考えているんだ?どういう気持ちでいるんだ?訳が分からない。


 だけど俺も見様見真似で空を見上げ、ただ時間が経つのをまっていた。


(神がなんとかって言ってたな…おかしな話だ…)


 それから長々と演説をして終わりを迎える、、、と思いきやまだ続きがあるそうだ。

 それは何人かのグループに分かれて街を歩き、共に悲しみを分かち合うというなんとも大雑把なラスト。

 家に帰るまでが遠足だーみたいなことらしい。


『さて、この会場の隔たりを超え、街の皆で悲しみを分かち合おう…いずれ神様と分かち合う時が来るまで…』


『終わった。終わった。結局よく分からなかったなー、って、えっ…』


 あの後ろ髪、見覚えがある。

 みんながいっせいに退場していく中に友人の姿がたしかにあった。


(おい…嘘だろ…)


 俺は無我夢中で追いかける。見間違うはずがない。あれは絶対にあいつだ。


 人と傘がごちゃごちゃしていて友人のあとを追うのに四苦八苦したが、おそらく駅に向かっている友人の班をなんとか遅れながらも追いかける。


 予想は的中で駅周りで悲しみを分かち合っている。

(悲しみを分かち合っているってなんだよ…)


『皆、傘を閉じるんだ。この神聖な雨に打たれ、悲しみを乗り越えよう。ほらあなたから悲しい出来事をいってごらん?』


 班のみんなが人々に悲しみエピソードを聞いている。分かち合うってえらくシンプルだな。

 でもそこにはあいつの姿がない。


 もたもたしていて話しかけられたら面倒なのでとっさに駅のトイレに駆け込む。


(はぁーはぁー…なんとか乗り切った…あの常に泣いている表情はまだ慣れないな…)


『あのー、そこどいてくれませんかー?出れないんで…』


『あっすいません。えっ!?』

 この世界に来てからずっとこんな感じだ。ただ歩いてそのつどぶち当たる運命にただ身を委ねているだけ。というかこの世界に限った話じゃない。これまでの世界もずっと一緒だ。何も成長していない。そんな自分が嫌になる。


 あの髪型、あの顔、あの目、あの鼻、そこに友人はいた。


『お、お前、会いたかったんだぞ!って言いたいけど正直会うの怖かったんだよなぁーなんせお前に一回殺されてるからな。でもあれはあの世界がおかしかっただけだよなーそうだよなー。この世界もおかしい!前の世界もおかしい!怒ったり、笑ったり、泣いたり、おかしな世界たちだよほんと。またのんびりおしゃべりでもしような、、、』


『あのー、長々と話してもらって申し訳ありませんが、人違いではありませんか?私時間が押してるのでそれでは。』


『ちょっとまって!俺だよ!俺!友達だろ?忘れたのか?前の世界も?』


『前の、世界?すいません。何言ってるか分からないです。人待たせてるんでそれじゃ。』


『・・・』


『もしかして悲しい出来事でもありましたか?』


 もう…なんなんだよ。



 ______



 その夜、俺はcup×cupの喫茶店にいた。カウンターの席に座りオーナーと隣の客と談話していた。


『もうなんかうまく言えないけど、今日はすごく悲しい出来事があったんですよ…』


『何?仕事関係?人間関係?』


『人間関係かな?友人とちょっとね…でも人間関係だけじゃなくて…そのいろいろというか全部っていうか…すいませんうまく言えないです…』


 これが悲しみを分かち合うってことなのかな?少し分かった気がする。自分の鍋に溜めるのではなく、みんなの鍋に溜めることで辛いことも嫌な事も乗り越えられる。この世界はおかしいと思っていたけれど根本は正しいのかもしれない。


 それからも俺たちは談話をし続けた。オーナーも隣の客の方もいろんなエピソードを聞かせてくれて、俺もそれに応えるようにいっぱい話した。

 幸い俺は希少な体験を何回かしてきたと思う。とてもじゃないが現実的な体験じゃないのでそれをうまく会話に合うように変換して話す。

 酒の席もありながら場も盛り上がったはずだが、けれどもその中心には悲しい感情がありどことなく重いずしっとした空間には変わりない。それはこの世界に来てからずっとだ。


『そうなんですよ。友人が俺をことを忘れるなんて…しかも別人のようになっていました…もう訳が分かんないです…』


『うん。それはさぞ辛かっただろうね…』


『はい……でも友人に会う事ができてちょっぴり嬉しかったんですよね…忘れたのは悲しいけど、この世界にいるってことが知れて安心したんです。』


 すごく恥ずかしいことを言っている気がする。酒の席だからと言い訳しておこう。


『嬉しい…?』


『はい…そうです…』


『・・・・・・』


 すると何故かオーナーと隣の客だけでなく喫茶店にいるみんなが静まりかえった。


(なんだ?何か引っかかることでもあったのか?)


 それからオーナーの態度も別人のように冷たくなり、早く喫茶店から出ていけと言わんばかりの顔で睨みつけてきた。

 周りのみんなも同様に睨みつけてくる。

 俺は相変わらず訳が分からなくて店を逃げるかのように出て行った。


(なんだったんだ?この喫茶店やっぱりやばいのかな…少しは分かり合えたと思ったのに…)


『嬉しさや喜びなど必要ない…悲しみだけでいい…』

 最後のオーナーの言葉。重みのある言葉だった。


 暗い空を見上げ、雨が降るのを見つめた。

 昨日と比べて俺は少しは変わることができたのだろうか。

 昨日には無かった傘と地図、昨日には無かった少量のお金、昨日には無かったこの世界の知識、昨日には無くて今日にある物もあるが結局は全て気付いたらある物ではないか?俺自身がしっかり行動して手に入れた物なのか?俺は成長しているのか?


 もう自分が何をしたいのかわからなくなってきた。


 テラスをチラッと見て傘をさし、この暗い夜と共にホテルに向かった。

 ホテルに着くまでの時間はとても長く、心は重く、頭の中は真っ黒だった。


(酒飲み過ぎたぁ…)



 ・・・・・



 ホテルに着いた。エレベーターを上がり自分の部屋へ行く。


 ガチャ。


『はぁー…今日も疲れた…』やみくもにベットに飛び込む。この快感はどの世界でも共通だろう。


『この世界を楽しんでおるか?戦士よ』


『はっ!!』心臓が飛び出るかと思った…


 お婆さんが当たり前のように椅子に座っていた。


『う、占いのお婆さん?どうしてここに…?』


『お前さんは、にぶいのぉー』


『にぶい…?』


『ああ、お前さんはにぶ過ぎるんじゃ。そんなんじゃ残りの5つの世界も何も分からないまま終わってしまうわい。』


『はー…そうですか…ん?残り5つ?』


『そうじゃよ』


『残り5つって、もう決まっているの?』


『決まっているも何もお前たち移住者の運命は全て決まっておるわい』


『・・・』


『な、なんじゃ?』


『そ、その前も言ってた移住者って何なんだよ…そもそもこの世界もこれまでの世界も意味がわからないんだよ…ちゃんと説明してくれ…』


『少し落ち着けぇい、お前は移住者の中でも選ばれた者、特別じゃ』


『特別?』


『そうじゃ、特別。それを我々は観測者と呼んでおる。お前さんには戦士と言ったがあれは正直適当につけた名じゃ。そんときの流れを重視した結果じゃ。』


『観測者…?俺が…?何のために…?どうして俺なんだ…?』


『世界を見る者、それが観測者。この繰り返される世界を見届ける者じゃ、何億、何十億、何百億と繰り返される世界をより完璧に創り変えるために。』


『・・・』


『お前さん達の言うところの創造主が色々と実験しておるのじゃ。繰り返し繰り返しな。その都度毎回一人の観測者をその世界の中からお決めになるのじゃ。』


『それが俺…』


『そうじゃよ、73億分の1の確率で当たったんじゃよ』


『73億分の1…何それ…創造主はくじ引きとかで決めたのかよ…』


『気分じゃろ』


『繰り返されるとか言ってたけど、どういうこと?』


『世界はまだ未完成でな、いろんな世界を作って試しておるのじゃ。お前さんのいた地球や、人間では想像できない世界などな。』


『そして一人の観測者に対して数個の世界を見せ、個々の世界の粗を探しそれを比較し、その集めた情報を取捨選択して完璧を創っていくのじゃ。』


『俺が言う事でもないが…回りくどない?』


『わしらも創造主のお考えは分からぬ。ただ創造主を見届けることしかできぬ。』


『それで、俺はこれからどうしたら?あと5つの世界とか言ってたけど』


『特に命令はない、あえて言うなら観ろ。世界を観ろ。それだけじゃ。』


『はぁー…』


『もっというなら、粗探しじゃ。プログラミングでいうバグ探しみたいなもんじゃ。これで分かったじゃろう?』


『俺の役目…俺のすべきこと』


『お前さん非日常な体験が好きなんじゃろ?それならこの観測者の役目はうってつけじゃろう』


『はい…』


『あのー他にも聞きたいことが…友人の件や…あと他にも色々と…』


『それはまた今度じゃな。わしはちと忙しくてな。なーにお前さんとはこれから何回も会うわい、その時にまた聞いておくれ。』


『友人は記憶がなくて…俺を忘れていて…それから他の人たちも…移住者も見た感じ記憶がなくて…それと他にも…』


 気付いたらいなくなっていた。やっぱりお婆さんと話すときは不完全燃焼だ。

 そして最後は観るという大雑把な役目を俺に与えて消えていった。



 お婆さんはこれまでの世界、そしてこれからの世界について少量の情報を教えてくれた。まだまだ謎が多いけど…

 聞きたいことが山ほどあったけどそれはまた今度。

 次にあったら全て包み隠さずを教えてもらおう。絶対に。


 俺は移住者。その中でも選ばれた観測者。友人に忘れられた静かに世界を渡る孤独の者。

 この世界やこれまでの世界は創られた世界だった。そして俺に課せられた使命や強制的な人生。


 はっきり言って滅茶苦茶だ。俺が何をした?


 このモヤモヤした感情を創造主とやらにぶつけてやりたい。そしてついでに一発殴ってやりたい…


 …が、やっぱり心のどこかで喜んでいる?楽しんでいる?この特別な存在であることに。

今自分の置かれている状況がとんでもなく最高に気持ちがいい。

今にでも笑みがこぼれそうになるくらいに。


 俺は…どの世界でも俺は俺だ。


『俺は観測者…俺の役目…俺にしか出来ない事…クック、あーっはっはっはーー!!俺がこの世界!これからの世界!必ず救ってみせる!あーっはっはっはーー!!』

 もう感情がぐちゃぐちゃだ。そもそも観測が目的であって世界を救うは解釈違いだ。


 ベットの上に立ち声を張り上げて言った。


『そうだ!!俺は観測者なんかでも戦士でもない!俺は救世主だー!!あーっはっはっはーー!!』

 すごく恥ずかしいことを言っている気がする。酔っていると言い訳しておこう。



 俺は今までただぼーっと歩いてきた。だがとうとう走り出す。その先を観るために。


 第三話 『走る』 


(はぁあー…寝よ。)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

貪欲な人々が送る異世界移住 Reo @-Reeeeeo-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ