新春書き初め三題噺2021【漫才】

緒賀けゐす

漫才「十二支」

「はーいどもどもどもー!」

「明けましておめでとうございますー」

「増川シリンダーです」

「室町ピペットです」


「「二人合わせて、肉まんじゅうですー!!」」

(まばらな拍手)


「ピピッ、シリンダールーレット!!!」

「おわぁびっくりした、何ですかいきなり」

「今から俺の腕がグルグル回って、止まった場所にあったものが今日の初夢に出てくる」

「へぇ、なにがあるんですか?」

「止まってからのお楽しみだ……ルーレットスタート!」

「おお勢いすごいな、大丈夫か四十肩やらかすぞ」

「テレレレレレ……テレ、テレ」

「おぉ止まってきた」

「富士山、鷹、茄子……」

「うわ、縁起良いのばっかりや!」

「五寸釘、母指球、USB……」

「変なの混じっとる」

「富士山、鷹、茄子……」

「富士山か鷹か茄子来い、富士山か鷹か茄子来い!」

「――テレレレ! ボブ!」

「知らない外人さん来ちゃった」

「良かったねー室町くん、ボブは初夢で見ると縁起が良いランキング第179位だよ」

「どこ情報ですかそのランキング? いいから漫才しましょう」

「なぁ室町くん」

「えっ切り替え早……どうした増川くん?」

「干支ってあるでしょ?」

「はいはいありますね、今年は丑年だそうで」

「……どげんかせんといかん」

「だいぶ話が急だね」

「宮崎の方から来ました」

「にしては時間掛かりすぎだけど」

「理由を聞けば納得するよ、十二支言ってみ」

「子丑寅宇辰巳午未申酉戌亥」

「……ピンと来なくない?」

「まぁ、言われてみれば確かに。現代人には馴染みにくい感じありますね」

「漢字で読んだとき渥美清しか分からんよ」

「別にあれ寅さんじゃないのよ」

うしも十二年ごとにしか回ってこないやつより毎年やってくる土用の丑の日の方聞く回数多いからウナギ思い浮かべちゃうし」

「そういう人は多いかもしれないですね」

とりとか、読めないから作家あいうえお順で「な行」に分類されちゃって」

「それは酉島とりしま伝法でんぽう先生の話でしょ?」

「ともかくね、今のままじゃ世の中に合ってないのよ」

「そうかなー」

「じゃあTwitterの絵師見てみ」

「どれどれ」

「みんな推しの巨乳に牛柄ビキニ着せてばっかで牛の絵描いてるやつマイノリティでしょ」

「本当だー!」

「まったく、みんな分かってない」

「増川くんはこういうの嫌「好きに決まっとるやないかい!いや食い気味に来たなぁ

「そりゃ好きよ。でもね、でもですよ」

「何を」

「ホルスタインは違くない???」

「元はね確かに、ベースカラー1色でしょうけど」

「言ってみれば焼き肉店やら焼き肉のタレのマスコットキャラにホルスタインを起用するようなものだよ?」

「近からず遠からず」

「晩〇館!」

「名指しも良くない」

「と、いうわけで」

「僕まだ増川くんに追いつけてないんですけど進むんですね?」

「進みまぁす!!!」

「元気でよろしい……それで増川くん、そこまで言うからには代替案も考えてるんだよね?」

「もちろん考えてマスカワ」


「「……」」


「あっ今のは増川くんの持ちネタなんですけども」

「十年やってます」

「反応見る限り今日で封印した方がいいかもしれないね」

「俺のギャグはいいのよ」

「相方としては考えて欲しい」

「話戻すけど、たぶん動物そのものだからしっくりこないのよ」

「なるほど、直に触れ合う機会が少ないから親近感を覚えないと」

「だからこれはね、扱う側の人間の職業にするんです」

「職業」

「例題ついでに最初に、ネズミね」

「ネズミを扱う職業ですか」

「これはもう研究者一択でしょう」

「……初手からだいぶ親近感湧きにくくないですか?」

「でも、ネズミより実情は分かるよ?」

「そこ比較してる時点で危ういと思うけどなぁ」

「次はうし

「先に進んじゃうんですね」

「なにぶん、掴みにくい人間ですので(ドヤッ)」

「上手いこと言ってやったみたいな顔でジェスチャーしてるけど、増川くんそれウナギ」

「えーということで、ウナギの養殖業者さんですね」

「押し切らないで。ちゃんと牛で考えましょう」

「あっ、思い浮かんだ」

「何」

「カウガールや!」

「それもたいがいアウトローぎりぎりよ?」

「いやいやど真ん中でしょカウガールは」

「せめてカウボーイであれ」

「いーや、ここは譲れないね。頭にウエスタンハット被った子だよ」

「あぁ、そうですか」

「すらーりとしててさ、ブロンド髪で、頬にはソバカスなんかあって。馬に乗ってる姿とかめちゃくちゃ様になってて」

「ふんふん」

「そんでホルスタイン柄のビキニ着てる」

「絵師に引っ張られてんじゃないよ」

「じゃじゃ次、とら

「渥美清はナシですよ」

「……山田洋次?」

「一回寅さんから離れよう」

「そっか……そうなるとあの人しかいないな」

「もう特定の個人なのは決まってるのね」

「李徴」

「山月記から来ちゃった」

「寅年生まれはだいだいあんな感じの自尊心の塊だと思ってる」

「偏見ですよそれも。もっと印象良い人にしましょう」

「そしたらもう動物園の飼育員だよ」

「まだそっちの方がマシだな、そっちにしよう」

「えっと次、

「兎ね」

「バニーガール」

「回答が素早い。じゃあそれで」

「次、たつ


「「……たつ!!??」」


「紛れ込んだフィクション!」

「どうすんのさ増川くん」

「いや待て、考えてみれば一人しかいない」

「誰」

「海馬瀬人」

青眼の白龍ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン

「そりゃもうCV津田健次郎よ」

「まー……じゃあそれで」

「次、

「蛇ですね」

「名前を言ってはいけないあの人」

「好きなんですね、ハリー・ポッター」

「一作目からリアタイで追ってます」

「じゃあ次行きましょう、うま。これは比較的考えやすい。馬乗ってる人ですもんね、競馬の騎手とか、お侍さんとか」

「カウガール!」

「なんでそこで被せてくるの」

「好きなんよ」

「うーん、好きならしょうがないか」

「次、ひつじ

「ユニクロ」

羊毛ウール!? 他にもっとあるよこれに関しては!」

「いつも、お世話になっております」

「媚びなくていいんだよ」

「次、さる

「ユニクロ決定なんだ……」

「猿もまぁ、たいがい決まってますよね」

「何の人」

「動物園の飼育員」

「二個目の被りはよくない」

「だって他にあるか? 猿を扱う職業」

「日光猿軍団の人とかいるでしょ」

「それだって結局は動物園の飼育員と同義でしょ」

「強いなぁが」

「次、とり

「……」

「……」

「「酉島伝p」」

「よしそれでいきましょう」

「終わりも近づいてきた、いぬ

「犬は飼ってる人多いですからね」

「渋谷公園」

場所ハチ公!」

「ラスト、

「猪かー、扱うとなると猟師とかになるんですか?」

「いや、もっと身近な人がいる」

「……誰でしょう」

「「動物園の飼育員」」

「ほらー言うと思った!」

「だってそれしかないでしょうが!」

「そうかもだけど! というかあんまりないよ猪飼育してる動物園は!」

「しょうがない多数決だ! 賛成一名!」

「反対一名!」


「サンセイ」


「賛成多数!可決!」

「誰だ今の外国人!?」

「ボブ」

「ボブあいつかー!」

「あ、そういえばボブ猪飼ってたな、やっぱりボブにしよう」

「伏兵が過ぎる」

「よし、これで一通り決まったな」

「えーっと、それじゃあ最初から順番に」


「「研究者カウガール動物園の飼育員バニーガール海馬社長名前を言ってはいけないあの人ヴォルデモートカウガールユニクロ動物園の飼育員酉島伝法先生渋谷公園ボブ」」


「よし、これで完璧だ」

「どこがだよいい加減にしろ」

「どうも」

「「ありがとうございましたー」」

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