「よお。出てきたな」


「こんなに早く出れると、思いませんでした」


「お前は悪いやつから金を盗っただけだからな。罪と言えるほどの罪はない」


「逆に、企業の不正をまとめて提出してくれって頼まれました」


「まあ、そんなもんだろう」


「一週間もしないうちに出れるなんて」


 彼女。近付いてきて。身体を寄せられる。


「一週間ぐらいだけど、ちゃんとできる状態まで持ってきただろうな?」


 その囁きだけで。


「おお。いいね。さあ、行こうか」


「あの」


「あ?」


「好きです」


「抱きながら言えよ。今言ってなんになるんだ」


 彼女。自分の先を歩く。

 そのスカートに。ほんのすこしだけ。ちいさな、滲み。


「好きです。ずっと。これからも」


「やめろ」


 自分の言葉に反応するように。滲みが、ほんのすこしだけ。拡がる。


「我慢してたんですか?」


「お前がしないんだから。わたしもできないんだよ」


 彼女。朱い顔。


「お前しか抱いたことがないから。どうしようもないんだ。もう捕まるなよ。わたしが抱きたいときに。抱けるようにしとけ」

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