第4話

 裏取りが、終わった。

 数日間の、延々と続く作業。ひとりでこなした。同僚は彼女とデート。三佐は休暇。

 全ての裏が取れて、後は、詐欺師をつぶすだけ。

 全ての証拠を、燃やした。もう必要ない。自分の頭の中にだけ入っていれば、それでいい。

 ホテルに呼んで、自分も向かった。セックスしたいと、強く思う。こんな状況。こんな状態でも。自分の身体は、熱いものを求める。

 部屋に入る。すでに、男がいた。蹴飛ばして、ベッドに倒れ込む。


「逢いたかったです」


「わたしは逢いたくなかったが」


「じゃあなんでここに来てるんですか?」


「他に行くところがない。仕事仲間は全員恋人がいて抱けない。お前しかいない。それだけだ」


 服を脱がしていく。身体。男の。


「おい。ふざけるなよ」


 可能な状態ではなかった。


「いだだだ」


 強く握る。少し液体が出てくるだけで、できるようにはならない。


「おい。早くしろ」


 しかたがないので、その少ししかない液体で自分を濡らしながら、もう片方の手で握る。今度はなるべく優しく。


「すいません」


 やはり液体が少しにじむだけで、それ以上にはならなかった。


「俺。あなたなら、いいです」


「ふざけるな。わたしは抱きに来てるんだ。それ以外を」


「いいえ」


 彼の。拒絶の言葉。

 それだけが、鼓膜を通じて心を打った。


「そうか」


 それしか、言えなかった。

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