第5話 ごちそうさま

 しずくを庇うように立った燦だった。

 その時、パチンと音がする。


「‼」


 燦の全身から力が抜け、床に倒れ込んだ。

 かろうじて意識だけはある。

 見上げると床にしゃがみこんだしずくが燦を見つめていた。


「ごめんね~。燦さん。スタンガン最弱だから意識は大丈夫よ」

「しずくちゃん。ナイスだ」

「どういう……」


 苦しそうに声を出す燦に、しずくがにっこりと笑う。


「私が犯人なの~」

「‼」


 燦は状況が全く把握できなかった。


「燦さんには最初から話してあげるね」




「最初は二階に逃げていったネコちゃんと誠也さんを頂いたの」

「頂いた? でも……。遺体は?」

「ここね~。見取り図には書かれていない収納スペースがあちこちにあるの。そこに入って貰ってる」

「!」

「次にリビングで酔いつぶれていたほのかちゃん。見回りした時に最後尾にいた雄太朗さん、岸さん。部屋へ連れて行ったライさんの順に頂いて」


 燦はクラクラする頭を必死に働かせる。


「最後はリビングにいた涼さん、凛さん、彦さん、もうきんるいさんを頂きました。燦さんはお兄ちゃんの希望で最後ね」

「燦さんは、せっかく、本を出版したばかりだから、お祝いに、最後にしてあげたよ」

「シリウス……」


 燦はシリウスを睨み上げる。


「ひまぽさんは?」

「あれは自爆」

「雪にでもハンドルとられたんじゃない? 勿体ないことしたな~」

「さっきの台詞は?」

「ああ。燦さんが起きるのはもう少し後だったのです。お兄ちゃんが睡眠薬の量間違えたみたいね。だからビックリしてちょっと怒っちゃった」

「しずくちゃん。ごめんよ」

「なんでそんなに、殺す必要があったんだ?」

「えっ? だれも殺してないよ」

「はぁ?」

「みんな生きてるよ」

「どういう……?」

「ふふ。というわけで、燦さんも頂きます」


 燦は訳が分からないで焦った。

 するとしずくの顔が近づいてきてディープなキスをされる。


「!」


 驚いた瞬間。

 燦の意識は真っ白になった。

 あとには目を開けたまま動かない燦が床の上にいるのだった。


「ごちそうさまでした」

「しずくちゃん。お腹いっぱいに、なったかい?」

「うん! こんなにたくさん頂いたのは初めてよ! お兄ちゃん頭いい!」

「それは、よかった」


 シリウスは笑顔をみせる。


「じゃあ。みんなを元の位置に戻そうか? 警察きたら、」

「待って」

「?」

「その前にシャワールームでの続きをしましょう?」

「しずくちゃん」

「お兄ちゃんのせいだからね~」

「いいのかい?」

「ベッドルームまでお姫様抱っこで運んで」

「困った、お姫様だな」


 しずくはペロリと舌をだした。


「だって仕方ないじゃない。私は飛縁魔ひのえんまなんだから」

「しずくちゃん」

「あ。キスはダメよ。魂食べちゃうからね」


外は吹雪。

ふたりは寝室へと消えていった。





【いいわけのページ】

この結末を予想された方はいらっしゃったでしょうか?

色々なパターンを考えましたが、なんか勝手にこれへと物語が進んでしまいました。

筆者本人が犯人だからいいよね?

期待外れだったらごめんなさいです。

ご不満は多々あるでしょうが、お許しくださいませ。(* ̄∇ ̄*)エヘヘ

煌しずく拝



飛縁魔(ひのえんま)とは。

魂を食らう妖怪。

一見するとただの美しい女性の姿をしているが、その実態は自らの姿に誑かされた男を破滅させる恐ろしい妖怪で、夜な夜な現れて男の精気や生血を啜り採り、最終的には憑り殺してしまうとされている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

軽井沢オフ会事変 煌 しずく @fuyubarahime

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ