第2話:魔法の属性
僕が
しかも、僕としては死に物狂いでなんとか倒したのだが、いつの間にか手加減をした上で、あっさり倒してしまったということになっていた。
更にそこから話に尾ひれがつき、一部では『雷帝の雷を欠伸をしながら手で払った』とか『1秒で右ストレートを百発打ち込んで、雷帝を吹き飛ばした』とか『学園トップは爆発魔』とか斜め上の話すら出ていた。
ただ、こうして最初のうちにガツンとインパクトのある出来事を起こせたのは良かったかもしれない。
これで僕に挑んでくる人はかなり減るだろう。
学園三位ですら余裕なのだから、それよりも強い人以外は勝ち目がないということになっているはずだ。
あと挑んでくる可能性としては学園第二位だけ……。
ただ、三位が余裕という情報からすぐに挑んでくることはないだろう。
魔法が使えない僕は回復魔法が効かず、決闘で命を落とす可能性があるのだから、今のところ身を守ることが先決だった。
だからこそ挑んでくる人間が減るのは好都合。
学歴社会の魔法現代である今は魔法学園を卒業していないと、仕事がろくになく将来的に死んでしまう。
ここは無理をしてでも卒業までいる必要があった。
――もっと最強をアピールして誰も挑んでこないようにしたほうが、無事に学園生活を送れるかな?
誰も挑んでこないほど最強の学園トップ。
それを僕が偽装すればいい。
「はぁ……、なんでこんなこと悩んでるんだろう……」
思わず頭を抱えたくなる。
すると、そばにいた男が声をかけてくる。
「深いため息をついてどうしたんだ? 悩みなら乗るぞ? もちろん俺程度にできることだったらな」
はにかみながら言ってきたこの男は
赤い短髪を立たせている、どこか不良みたいな風貌をしている体つきの大きい男。
そして、僕と同じクラスの生徒だった。僕が学園トップであるという事実を知りながらも話しかけてくる数少ない人物でもある。
そこには打算的な考えもあるだろうが、一人でいるより気が楽なので、僕としても助かっていた。
「どうして僕は学園トップなんだろうな、って……」
「それはもちろんお前の魔力が並外れてるからだろう? 噂だと声を出しただけで相手を殺せるとか聞いたぞ?」
「そんなことできるはずないでしょ?」
「ハハッ、だよな? そんな危険人物なら俺が近づかないさ」
冗談を冗談とわかってくれる。
「それより、また今度魔法を教えてくれよ。俺もランキングを上げていかないとまずいからな」
「明人のランキングって確か――」
「872位……。落第ギリギリってところだな。まぁ、使える魔法が土属性の付与魔法だけだからな」
魔法には多数の属性やいくつかの型が存在している。
属性
火、水、風、土、光、闇、
型
放出、付与、感知、その他
みたいな分類に分けられる。
先日戦った雷帝の人だと、雷を得意としていたので属性で言うなら気象を操る風属性。魔法は放出型といった感じだった。
――学園三位ほどの実力を持っている人だから、他のも使えるのだろうけど。
そして、魔法の威力によってもランク付けはなされている。
最弱のFから最強のA。
これはあくまでも魔法学園がつけている成績であることから、学園側の主観も入っている。
その理由に僕自身の成績。
火[放出(A)]
――うん、どう考えてもおかしい。
そもそも僕は魔法が使えないのだから成績がつくはずもない。
でも、これは決闘で実際に見た教師――僕の場合なら名無しの九条先生がつけたものだ。
相手の魔素を断つことで引き起こした爆発は火魔法の放出型最上位扱い。
教師の魔素圧を防いだものは正体がわからないので
これを聞いた時にはぽっかりと口を開けてしまった。
まさか魔法扱いされているとは思わなかったから。
特に僕の魔法が使えない体が
しかも、どんな魔法の型か分からないからその他型になっている。
――まぁ、あくまでも参考値の一つ……ってところなのかな。
この数字は公表されているので誰でも調べることができ
まぁ、これだけだとどういう傾向の魔法を使うか、くらいしかわからないし、自分の魔法を知られた上での対策も順位の判断基準なのだろう。
そして、明人の成績は以下の通り。
土[付与(F)]
入学したばかりの生徒ならおかしな能力ではないものの、決して褒められた能力でもない。
入学生なら高い者ならDクラス相当の力がある。
「明人って確か体を石にする魔法だったよね? 使い道によっては便利そうだけど」
雷帝との戦いの時に使いたかった能力……。
上手く使えば雷を防げるから――。
「確かに魔力を上げていけば、石以上の強度を得ることができるけど、今の俺にできるのはせいぜい体を少し硬くする程度だな」
そう言って、実際に魔法を使ってくれる明人。
ただ、その見た目は何も変わっていない。
「――本当に使ってるの?」
「まぁ、お前からしたら使ってないレベルなんだろうな。触ってみるといい」
手を差し出してくるので、実際に触ってみる。
確かに硬い……と言われたら固いように思える。
でも、筋肉が固いだけのようにも見える。
「――うん、すごい魔法だね」
「お前の言いたいことはわかる。俺自身もこのままだとダメだって思ってるんだ。だから、どう強化していけばいいか教えてくれ」
「うーん、どこまで力になれるかはわかんないよ?」
だって、僕自身が魔法を使うことはできないのだから……。
「いや、それで構わない。学園トップに教えてもらえるだけでありがたい」
「まぁ、とは言っても授業で教わってる以上のことはできないよ。基本的に魔力を上げていくしかないからね」
「やっぱりそうだよな。でも、ランキング戦は始まってるわけだから――」
「それこそ魔法の有効活用だよ。もっと自分の魔法をよく知って、的確に使ってみるのはどうかな?」
「有効活用?」
「例えば明人の強化、どのくらい強くなってるの?」
「どのくらい? いつもよりは強くなってるな」
「うん、それが具体的にどのくらい強化されてるか知ることができれば戦略の幅が広がるんじゃないかな?」
自分のやれることがわかっていたら、そのときの最適手がなにかわかる。
むしろ僕はできることが本当に限られてるので、なおさらだった。
「そうか、そうだよな。わかった。まずは自分の力を調べてみるところから初めて見る。サンキューな! やっぱり潤一がいうと説得力がある」
「そんなことないよ。僕は僕のできることしかしてないだけだから……」
「その謙虚さもトップに繋がってるわけだな。そういえば、学園トップなら生徒会長になるんじゃないか?」
「へっ? 生徒会長?」
「あぁ、生徒を束ねる最強の集団。魔法も含め学園のいざこざを収めるために毎年、五月のタイミングでの学園一位と二位がそれぞれ会長と副会長をやることになってたはずだぞ? あとのメンバーは任命だが」
そういえばそんな話をしていた気がする。
――どうやって僕がいざこざを収めるんだろう?
いや、生徒会長なら、他のメンバーも動かせる。
うまくすれば自分の力を見せることなく、最強の座を保つことができるか。
あとはメンバー次第……になりそうだけど。
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