第41話 ズタボロ営業珍道中!(注、これを営業と思ってはいけない!)

 前回までのあらすじ


 路上で絵を描いている時に、めちゃくちゃ胡散臭い詩人Aと偶然出会ったGhost。来るもの拒まず精神で受け入れてしまった結果、一緒にイベントを企画することになったものの、即企画倒れ!

 とは言えこれで縁が切れてくれればよかったのですが、役者Aとの波状攻撃も相まって、この後も面倒ごとが増える事に……。




〇前回のプレゼン後、速攻で抜ける役者A。


 前回のエピソードで書いた、某大型家電量販店さんでのプレゼンの翌日、まだ完全には諦めて居なかった僕らは今後の方針を決めるため、スカイプで会議をする事になりました。スカイプって言うのが時代を感じるね(/・ω・)/


 小説家Aさんと詩人Aは自宅から通話していたのですが、役者Aは僕の家に居ました。なにせ次の演劇の公演が一月を切っていたからです。スカイプ会議の直前まで演劇の打ち合わせをしていたのでした。


 さて、いざスカイプ会議を始めた時の事でした。前回、僕にブチギレられたとはいえ(小説家Aさんも「髭くらい剃って来いよ」と怒ってたのよ)、役者Aも企画のメンバーに入っています。そんな状況でも空気を読めないこの男。会議開始直後に、


役者A

「何て言うかさ、オレが参加するタイミングはまだ先でいいと思うんだよね」


小説家A

「はい?」


役者A

「いやね、この前のプレゼンじゃ、まだオレが参加しても仕方ないかなって」(何故か上から目線でこれを言ってる)


小説家A

「いやいや、古来から兵法上、戦力の分散は愚策と言いますよ。今、出来ること全てを相手に見せないと」


Ghost

(はえー、小説家Aさん、会話の中でパッとこういう事が言えるあたり博識やなぁ)


役者A

「今の状態じゃ、オレが出来ることを上手く伝えられないと思うんだよ。だから機が熟してから……なんたらかんたら」


 役者Aがうだうだ言っていた言葉の裏になにが隠れているのか、ボクも小説家Aさんも何となく予想がついてました。

 つまり彼が言いたかったのは、


『お前ら据え膳作る人。オレそれを喰う人。据え膳出来たら呼んでくれ』


 と言ったところでしょう。いや、ホント、使えねーんだわ(/・ω・)/


Ghost

「ま、良いんじゃないですか。正直、やる気ないのに居られても足引っ張られるだけですし」


 珍しく面と向かって毒を吐くGhost。一応、次回公演を考えてはいましたが、僕らの関係は既に修復不能レベルまで来ていたと思います。

 その後、「オレは詩人Aさんの事、応援してるんで!」と僕の家から出ていく役者A。それを見送りもしないボク。

 ……うーん。思い起こすと、こんなまだるっこしいことしないで、さっさと縁を切りなさいよ(/・ω・)/


 ちなみにこの後、主宰者の詩人Aがウンともスンとも動かなくなり、某大型家電量販店さんでのイベントは完全に企画倒れします。あふん。




〇そのくせ自分の営業に詩人Aを連れていく役者A。


 劇団A組の第四回公演が近づいていたある夕方の事、役者Aから電話が来ました。


役者A

『これからラジオ局に営業に行くんだけどさ。Ghost君も一緒に行かない?』


 さて、これまで何度となく地元テレビ局、ラジオ局に営業に行こうとしていた(実際には行っていたけれど門前払いされていた)役者Aを止めていた僕です。その理由は集客数や話題性など、もっと地道に積み上げていかなければならないものが沢山あったからです。

 そう言った確固たるデータもないクセに、


役者A

『演劇やります! テレビに出たいです。ラジオに出たいです』


 何て言ったところで相手にされるわけがありません。

 普通の営業と一緒です。相手の需要を用意して初めて商売が成立します。

 いわば、対価を貰うためにわけです。なのに食材だけ持って来られても、お客が困ってしまうのは当然。


 という事を何度も説明しているのに話しを聞かない役者Aを結構前から見限っておりました。


Ghost

(営業でも何でも好きにすりゃ良いじゃん。自己顕示欲の強いオッサンの相手してやるほど、社会人はヒマじゃねーから)


 僕の推測通り、これまで何度営業に出ても門前払いだったようです。




 さてこの日、珍しく役者Aに誘われて初めて営業に着いて行ったのですが、その理由が二つ。


1、この公演で最後にしよう、という思いが生まれていたから。

2、詩人A夫妻とその息子さん(1歳)を営業に呼んでいたから。(!?)


 は? なんで劇団A組と関係ない人呼ぶのぉぉ!?(/・ω・)/


 ま、多分これも役者Aの拗らせた自己顕示欲の結果なんだろうなぁ。多分、詩人Aに自分の活躍を見せつけたかったのかもしれない(/・ω・)/




〇いざ、ラジオ局での営業が始まる。


 某ラジオ局についたのは夕方六時頃。多分、通常業務を終えて、少し空いた時間で僕らの相手をしてくれるんでしょう。いやぁ、この時点でブラック企業で働いてた身としては申し訳なさでいっぱいです。


 ちなみにこの日の日中、役者Aは一人で地元テレビ局へも営業に行ったそうな。コネがある、と彼は言っていたのですが結果は門前払い。

 それについて「○○テレビは保守的だから」と役者Aは文句を垂れとりましたが、そういう事じゃないんだよな(/・ω・)/



 さて、役者Aの営業プレゼンに付き合ってくれたのはラジオ局で働く初老の、結構偉い人なんだろうなぁ、という役職の男性。ちなみに、このラジオ局はミュージシャンCさんが高校時代に放送禁止用語連呼して出入り禁止になったラジオ局でもあります(/・ω・)/


 さて、いざプレゼンが始まり劇団A組の活動と、間近に迫った公演について役者Aは説明するのですが……例によって例の如く、まともに説明が出来ない役者A。

 演劇の内容はもちろんの事、劇団A組の目的や、そもそもラジオ局さんにすら明確に出来ていない。

 ちなみにこの時、次回公演の二週間前である。お前、芝居する気ねーだろ(/・ω・)/


 見かねた僕がかわりに次回公演のお芝居の流れだけは説明したのですが(というか僕が説明する必要なんて無かったと思うの(/・ω・)/)、正直言ってあまり好印象じゃない。

 それはそのはず、ラジオ局が求めているのは”話題性”。よって演劇のストーリーよりも、集客数とか反響とかが具体的に説明できるデータのほうが必要だし、そう言うデータがあった方がラジオ局さん側も扱いやすい。

 そもそもラジオ局に営業に行っておいて、すら固まっていない時点でプレゼンのスタートラインにすら立てていないのです。


 役者Aの(笑)をこの日初めて見た僕ですが、あまりにも酷い……というか営業とは言えないレベルのに僕は完全に白けてしまいました。

 で、真面目にプレゼンに参加するのを辞めて、僕は詩人Aが連れてきたお子さん(一歳くらい)とスケッチブックやクレヨン(わりといつもスケッチブック等は常備しているGhostである)を使って遊び始めたのですが、その子と遊びながら耳だけはプレゼンの方に向けていたところ、何を思ったのか昼間営業を断られた地元テレビ局について文句を言い始める役者A。


役者A

「それにしても、○○ラジオさんはお忙しい中僕らの話を聞いてくれて本当にありがたい! 日中、○○テレビさんの所にも行ったんですけれど、話しを聞いてもらえなかったんですよ。何て言うか○○テレビさんは保守的ですよねー」


 この言葉に表面的にはニコニコしていたラジオ局の職員さんがブチギレ。


ラジオ局職員さん

「君ね! それは無礼だろ!」


Ghost

(おー、見事な一喝)

「ハイ! アンパンマンが描けたよ」(デスメタルな何やら毒々しいタッチ)


詩人Aの息子さん

「キャッキャ」


詩人A&奥さん(キリスト教徒)

「……」


ラジオ局職員さん

「○○テレビさんもだし、別の局もそうだけど、みんな全力で仕事してるんだよ。それを悪く言われる筋合いはない!」


役者A

(何の反論もできず、ガチでへこんでる)


ラジオ局職員さん

「君がうちのラジオ局で発信したい事も正直言って中身が伝わってこない。むしろウチとしては詩人Aさんの活動の方が扱えると思います」


 その後、ラジオ局の職員さんは詩人Aと情報交換を始めてしまい、役者Aは完全に蚊帳の外。僕と詩人Aの奥さんと息子さんは一緒に遊んでいて、会議室の一角はもはや託児所みたいになってるしで、自分が発起人なのに完全に行き場を失ってしまった役者A。

 営業が終わるまで役者Aはポツンとしょぼくれていましたが、悲しいかな、誰も声を掛けてくれる人は居ない。気ぃ使いの僕ですら意識して無視してたくらいですから。


 さて、その後、詩人Aの活動がラジオ局さんで取り上げられると言った事もなく、本っ当に何の意味も無かった今回の営業でしたが、二つ、得た物があったと思います。


 一つは、なんか知らんけど僕が子供に懐かれる、という事に気づいたのでした。

 路上で絵を描いている時から、通りかかった子供がわりとニコニコして手を振ったりしてくれたのですが、明確に子供になつかれていると自覚できたのはこの日が初めての事でした。

 なんたって帰り際、僕と離れたくないって泣き始めるくらいなんですもの。

 んー、かわいいなー。父親はクズだけど、子供に罪はないもんなー。


 今、お子様向けにバルーンアートをやっているのは、この時の気づきも関係しているのかもしれません。


 ま、子供に好かれていたわけじゃなくて、杖を突いて足を引きづりながら歩く、瞳孔開いたオッサンが珍しかったからかもしれませんが(/・ω・)/






 さて、もう一つの得た物。それは僕の中に生まれた決意でした。


Ghost

(うん。次の公演が終わったら役者Aあの馬鹿と縁を切ろう(/・ω・)/)


 遅ーい! もっと早く、バカとは縁を切るべきなんだよぉ!! というか、決意したら今すぐ切れ! 一切の躊躇なく縁を切れ!!


 今の僕ならこう言って、当時の僕をぶん殴りそうな勢いですが、頑なに人を疑う事を否定して性善説を信仰(?)していた僕の中では小さくとも決定的な行動だったのかもしれません。ある意味では初めて踏み絵を踏んだ瞬間です。


 ま、その後、悪縁に執着せず躊躇なく切るクセがついたので、今の僕にとっては良い事だったと思います。それに悪縁を切ると、不思議と新しい御縁が舞い込んでくるものですしね(/・ω・)/


 さて、そんなこんなで大失敗した営業。そして二週間後に迎えた演劇の第四回目公演は、これ以上ないというほどの低いモチベーションでスタートします。

 その詳細は次回にて(/・ω・)/


 to be continued(/・ω・)/

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