第39話 路上で出会った変態怪奇ファイル・その5。本物の詩人と胡散臭い詩人。

 前回までのあらすじ


 発狂、失踪後、再び路上で絵を描き始めたGhost。

 発狂後も良い出会い、悪い出会い、両方ともありました。そこで知り合った、ある意味象徴できな詩人2人をご紹介します。




〇底抜けにポジティブな詩人。


 某駅前の路上で僕が絵を書き始める前から、そこで詩を書いている路上詩人さんが居ました。某駅の路上で活動するのは稀だったので、関わる回数自体は少なかったのですが、ひたすらポジティブで力強いその人の事は今でも強烈な印象として記憶に残っています。



《プロフィールから抜粋》

○詩人C


 《あなたの名前と第一印象で詩を書く》と言うパフォーマンスを行っている詩人。人としても大らかで、豪胆。詩の売り上げだけで、奥さんと子供を養っている。

 握手した時の力強く、それでいてとても優しい手が印象的だった人。

 ちなみに役者Aは詩人Cの真似をして同じ事をやったところクレームが連発してた。


《所有する芸術スキル》

・詩人。

・大道芸人。

・超ポジティブ。


 前回登場した詩人Bさんと同様、路上で詩を書く路上詩人をしている人でしたが、この人の人気は凄まじく、地元ショッピングモールの一角で《詩を書く》お店をオープンするほどでした。

 詳しい話は知りませんが、多分、この人の事だから自分でお金を出して出店したんじゃなくて、『スポンサーになりたい!』っていうパトロンが現れたんだと思う(/・ω・)/


 そんな詩人Cさん。すでに結婚しており、お子さんは小学生に上がっております。現実的な話しとしては大丈夫なの? と気になってしまいますが、という詩人としての能力。

 そして何よりも何気ない世間話をしているだけで、何故かこちらがワクワクしてくる不思議なエネルギーを持っている人でした。


 世の中にはエナジーバンパイア何て呼ばれる、一緒に居るだけで憂鬱になる、気分が落ち込む、運気を奪っていくという人が居るそうな。ちょっとスピリチュアルな話しですが、心理学的には自己愛性パーソナリティー障害の人がこれに当てはまるのだと思います。前作のエッセイに出てくるA社の社長や、役者A、ミュージシャンB,そしてこの後出てくる詩人Aがこの典型だと思います。


 言うなれば、この詩人Cさんは彼らの対極に位置する人。当人がひたすらポジティブで、彼と関わればその人たちも楽しく、ポジティブになっていく。心がポジティブになれば何に対してもワクワクしながら挑戦できるし、挑戦すれば成果にもつながる。

 結果、詩人Cさんの周りにはポジティブで物事が上手く行く人が集まるようになる。すると必然的に詩人Cさんも良い出会いに恵まれるようになる……と言った感じで見事なまでの陽のスパイラルが完成していたのだと思います。

 今思うとバカとばかり付き合わず、こういう人と一緒に居ればよかったー(/・ω・)/


 さて、そんな詩人Cさんの表現方法は《あなたの名前と第一印象で詩を書く》といったもの。とはいえ詩について特別な勉強をしてきたわけではない詩人Cさんは当人のインスピレーションとひたすら優しくポジティブなエネルギーでお客さんを楽しませていました。


 そんな詩人Cさんの活動を見て『俺もできるかも』と思い込んだアホが一人おりました。


 役者Aです。


 彼は一応、詩人Cさんの許可を取って、まったく同じテーマでパフォーマンスを開始。

 で、まったく同じ事をやっているのに、なぜかこれが超不評。金返せを切れる客が大量発生。


 その後、役者Aは(自分に詩人は向いてない)と思ったのか方向転換して


『あなたから得たインスピレーションで芝居をします』


 と新たなパフォーマンスを始めますが、そもそも脚本なんて書けやしない役者A。その結果、再び超不評。

 なかには、『自分の自伝的芝居を依頼』した老人がおりまして、役者Aは依頼を請け負ったものの、そのまま完全に無視して、バックレ。

 うーん。人の真似もまともに出来ないのね(/・ω・)/




〇底抜けにクソ野郎な詩人


 現代詩人=ヒモ


 この構図が僕の中で確固たるものとして完成した原因となった男。それが詩人Aでした。

 このエッセイにおける役者A、ミュージシャンB,そして手相占い芸人Aと肩を並べる人間でありながら、彼らブラックアーティスト四天王の中でも最長老の四十歳越え。初対面の印象から悪い意味で幼い雰囲気が気になりましたが、多少発狂したとはいえ相変わらずのお人好しである僕でしたので、しばらくの間は彼とも関わる事になっていきます。




○詩人A


 四十代。男性。カトリックのキリスト教徒。既婚者。

 現代詩人

 元々某県の山沿いに住んでいたが福島原発事故後、放射能を恐れて奥さんと子供を街にある実家へ帰す。何故か本人は引っ越しせず、一人で山沿いに暮らす。


 奥さんを働かせ、家事・子育てもすべて奥さん。当人は金持ちの親からお小遣い貰って、たまに日雇いで働いて、たまに詩人やってる人。


 若い頃、留学中に吸った大麻にLSDが入っていて、バッドトリップして暴れた経験あり。


《所有する芸術スキル》

現代詩人ヒモ(本来の現代詩人をけなす意図はありません)。

・カトリックのキリスト教徒。

・嘘八百!

・逮捕歴あり(僕と絶縁した後)。


 そんな詩人Aと知り合ったのも某駅の路上。その日も元暴走族・絵師Aと元キャバ嬢・絵師Bと共に路上で絵を描いていました。

 そこにフラフラっとやって来た詩人A。僕らの活動に対して興味を持ったようで気さくに話しかけてきてきたのですが、なにやら用事があるらしく一旦は駅前から立ち去ります。

 その後、再び駅前に戻ってきた詩人A。手にはノートと筆記用具。


詩人A

「楽しそうだから、ボクも一緒に活動させてよ」


 基本的に来るもの拒まず、の精神でホームレスだろうが暴走族だろうがウェルカムでカオスを好んでいた路上アート集団Aでしたので「どうぞ、どうぞ」と受け入れました。

 ちなみに詩人Aの年齢は40歳過ぎ。僕らの中で一番年上の絵師Bですら28歳。当時の僕はまだ若かったからか「表現に年齢は関係ない」と思っていましたが、今思うとよく絡んできたなぁ、多分下心ありきで絡んできたんだろうな、と思います。


 言葉の端々に学歴(イギリスの芸術大学中退……つまり親が金持ちなんやろなぁ……でもそれって高卒やん!?)とか受賞歴(と言っても聞いた事ないような現代詩の賞)とか、を挟んで来るのですが、今思うとマウント取りたかったのかもなぁ。

 僕ら、アホすぎて、彼の俺スゲーな話を理解できていなかったけど(/・ω・)/


 さて、この日、路上で活動していた僕らの元にもう一人問題児がやってきます。そう、役者Aです。混ぜるな危険。

 夕方ごろにやって来た役者A。外面の良い男ですので詩人Aに対してハキハキと話しかけ、お互い経歴を話しているうちに意気投合……じゃないんだよなぁ。

 多分、お互いに『こいつ、使えるかも』っていう打算の元に話しを合わせていたんだと思う(/・ω・)/


 さて、この出会いの少し前に詩人Aは自分の新作詩集を発表しており(ちなみに現代詩の世界は通常、自費出版で発表されるそうな)、そのプロモーションのために色々企画を建てている途中でした……はい、ウソです。企画を立てているではありません。企画を立てたいので、ていの良い労働力を探している途中です。

 その結果、詩人Aは僕を始めとした路上アート集団Aのメンバーや、役者A、そしてこの時期に電子書籍の出版社を立ち上げた小説家Aさんも巻き込んで、国内最大手電気量販店本社へ大きな企画(倒れ)を提案しにいくのですが、そのエピソードはまた次回。

 to be continued(/・ω・)/

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