第34話 女性の幸せ

女性の幸せって、やっぱり八割がた結婚した相手の男で決まるのかな、と思う。


相手の優しさ、思いやりはもちろん、性格、趣味、そして何より経済力。


私は今でこそ、金のあることが幸せなこととは必ずしも思わないが、無いよりはあったほうがいいに決まってる。


その価値観に基づいて、私は随分、金持ちになりたいという野心を燃やして生きてきた。


妻に、いい思いをさせたいという気持ちだった。


しかし私の能力の限界から、この難しい世の中で、あまり金を手に入れることが出来なかった。

私たちはいつも、生活するのが精一杯で生きてきた。


妻が母国に年一度里帰りする以外は、海外旅行もさせてやれなかった。


なぜ私がそうした経済面にこだわるかというと、妻は日本で私と結婚せずに母国に帰っていれば、優秀だったがゆえ、多分ずっと金のある人生を送っていただろうと思うからだ。


しかし今となっては、妻は日本に残って本当に良かったと言っている。たとえいい生活ができても、あの国には2度と住みたくないというのだ。


では、日本で別の男と結婚していたらどうだろう。

私が強引に奪いに行かなければ、その可能性は大いにあったろう。


私より真面目で稼ぎが良く、優しい男はいくらでもいる。


その事実を考えると、彼女には本当に申し訳ない事をしたと思う。

そういう男と結ばれた可能性がいくらでもあることを考えると、彼女の結婚はいわゆる“失敗”だったのではないか。


彼女は優しいから、決してそんなことは言わない。

しかし私は知っているのだ。彼女が自分の人生に納得していないということを。


今更どうすることもならない。

彼女に詫びるというのも何だか変だ。


今後、少しでも彼女を思いやって生きていくしかない。


たった1人の妻を幸せに出来なかった私の人生も、つまるところ失敗かもしれない。


失敗の人生、そんなの、別になんとも思わない。

私の人生、寂しいけどそんなものだ。

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