第2話 飲み会のあと


23歳くらいの時、友人に誘われて飲み会に行った。


総勢10人くらいで、男女半々くらいだったが、私はこういう席がひどく苦手で、ただ、その頃はまだ若く、自分がそういうのが苦手だということもあまり分かっておらず、誘われるままに出席してしまった。


私はこういう場に出ると、一生懸命皆に合わせ、場を盛り上げようと頑張ってしまう。

今でこそこういうのは全て遠慮しているが、その頃はそんなふうに頑張っていた。


出席者の中に1人、私と同じ身長が180センチだというモデルの女の人がいた。年齢は私より2、3上だったが、どれ、本当に同じ身長か、背比べをしてみろと皆に言われ、2人で背中を合わせて直立して見せた。


やはり180センチだった、というのはいいのだけれど、その後その女性はずっと私の隣に座ることになってしまった。


どうしたものか、私はその女性が隣にきたら、急に落ち着きを取り戻し、静かにその女性と話をしていた。


女性は次第に酔ってきて、宴の最後のほうに、私に好みの女性について囁くように訊いたり、はたまた次のようなクイズを出したりした。

「サカナ辺に明るい石って書いて、何と読むでしょう?」

私はしばらく考えて、

「さんま?」

「そうそう、当たり!」

「じゃあサカナ辺に六と九って書いたら?」

私は考えたが分からなかった。「分からない」というと、

「うふふ、アイナメ!」

そう言って、急に私にもたれかかってきたのだ。

と、見るといつの間にか宴は男が女の肩を抱いたり、皆そんな感じで乱れ切っていて、私はハッキリ言って驚いた。


その後それぞれが、といっても全員ではなかったと思うが、とにかく大半がお持ち帰り状態で、私と、そのモデルの女性も、そういう具合になってしまった。


さて、問題はここからである。

近くの駅まで行けば、その近くにホテル街がある。


しかしそういう状況になって、私はその女性があまりにも綺麗な子だったから、緊張してしまったのである。


元来が私は不安神経症である。

酒のせいもあって、なんだか気分も悪くなってきた。

その時である。

「おう!」

と1人の男が女性に声をかけた。

「いやだあ」

と女性は笑い出した。


「どうした?」

と男。

「今飲み会やって、この男の子に駅まで送ってもらったの」

「ふうん」

私は男は女性の彼氏だろうと、直感的に察しがついた。

「キミ、ありがとうね」

女性は微かに私にウインクすると、男と駅の雑踏の中へ消えて行った。


良かったのか、悪かったのか、とにかく私はその場に1人取り残されたと、そういうお話。

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