こんな夢を見た〜エッセイと小説の間〜

レネ

第1話 2度目の恋

中学1年生の時の学級委員、男と女のペアだったが、女の子のほうは名を古川美和といった。


背は少し低めだが、瞳が少し中央に寄った印象のある、かわいい女の子だった。


育ちも良さそうで、品があり、勉強も出来る子だった。



中学1年生の生活が始まって間もなく、私はその子を好きになった。まだまだ幼かったのだろう、その子が学級委員として皆の前に出て、司会のようなことをする時は、いつもその子をじっと見ていた。すると段々、その子も司会をしながら私の方ばかり嬉しそうに見るようになった。


私が古川を好きだという噂は私の耳には入ってこない。

しかし古川が私を好きだというのは、多くの級友達の知るところとなった。


それでも、古川はこんな事をすることがあった。


弁当の時間、私がまだ食べ終わらずに自分の席で弁当を食べていると、食べ終わった古川は私の前の席に来て、椅子ではなく、机の上に私の方を向いて座る。そして私の背後の仲のいい女子と話をしたりする。


それは別に特別なことではない。私を好きであっても好きでなくても、そういう事はあるだろう。

しかし彼女はあまり意識せずにやるのだろうが、こんな事をする。


「あーっ、暑い」

そう言ってスカートの裾をパタパタさせる。

パンツがチラチラ見える。

古川は、他の女子に向かって笑いかけながら言う。

「だって暑いんだもん」

そう言いながら少し脚を開き気味にしながらスカートをパタパタさせる。股間が見える。目の前に。

目の前に好きな子のパンチラが展開する。私はよく分からないけど、段々股間がこそばゆく、ムズムズしてきて心臓が早く打つのが分かる。


そんなことが、よくあった。


ところが2年生になる時、私は引っ越し、学校も転校することになった。


春休みが近づくある日、放課後にカバンを持って帰ろうとしていると、古川が私を誘った。

この年頃というのは、今思うと女の子の方が、男よりずっと早熟なのだ。


古川はさりげなく、体育倉庫の裏へ私を誘導し、何となく、私たちはそこで2人で向かい合った。


「レネくん」

と古川は言う。初めは何がしたいのか、私は何も分からず、ただ、古川と目を合わせたり、合わせなかったりしながら何となく一緒にいた。

「レネくん」

と古川は言う。

「ねえ、いいよ」

今にして思っても、何がよかったのかどうもよく分からない。

ただ、その時私が感じたものは、恐怖であった。

嬉しいとか、楽しいとかでなく、今現在の解説を入れれば、このままだと自分は戻れなくなる、2度と、元の自分に帰れなくなる、といったような、何かへ踏み出すことへの、アイデンティティの恐怖であった。


私はそわそわしながら、じゃあな、と言って逃げた。

古川のことはとても好きなんだけど、怖かった。


もう、今となっては古川の顔もぼんやりとしか思い出せない。

しかし、あの時の怖さは今でもはっきり覚えている。

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