③ リングイネ、思ひはなれぬ絆しなりけり

 私は、節約と体重管理のため、パスタは乾麺で50g程度しか食べないと決めている。

 

 正直、もっと量を増やしたいと思うときがある。また、自炊して毎日食べているとすぐに飽きる。

 そのため、パスタから離れる日もある。

 しかし、お金がないし、食事のメニューについてあれこれ考えるのも面倒くさいので、気づけばまたパスタを食べてしまっている。

 ここまで来ると、パスタは生活する上で自分自身を縛り付ける鎖のようなものである。

 

 自炊は面倒だが、パスタを作っている時間は苦ではない。

 どんな味付けにするのであれ、お湯を沸かし、にんにくと玉ねぎを炒めるところまでが自分の中で決まりきったワンセットになっているため、慣れればスムーズに料理が出来上がり、あっという間に食事が終わる。

 玉ねぎを炒めてからは、唐辛子と炒めてペペロンチーノにしたり、トマトピューレやトマト缶を入れてトマトソースにしたりと、自己流に作る。


 イタリアンの専門家であれば、ニンニクを使わなかったり、玉ねぎを入れなかったりと、ルールやマナーにこだわるかもしれない。

 しかし、お客さんのいるイタリア料理店とは違い、私の場合誰に食べさせるわけでもなし、自由に好き勝手パスタを調理している。 


 ちなみに、私が一番好きなパスタは、リングイネである。

 

 リングイネは料理の名前ではなく、素材としてのパスタの種類の一つである。

 お店で広く流通しているスパゲッティーよりも、麺が平たくて食べ応えがある。

 パスタの量を少なくしている私にとって、リングイネの噛みごたえがとても頼もしい。

 

 リングイネを食べるときは、深く考えずにスパゲッティと同じように食べる。

 クリームソースやトマトソース、ペペロンチーノ等あらゆるソースにリングイネは合う、と私は思っている。

 これも、イタリアンの専門家に聞けば、リングイネは味付けの濃いめのソースにすべき、等と言われるかもしれない。

 しかし、毎日食べている私が何にでも合うと感じるのだから、やはり細かいことは気にしなくて良いであろう。


 イタリアンの専門家といえば、最近はイタリアンシェフの料理動画などが巷に溢れている。

 私も、レパートリーを増やすべく見たりする。

 細かい技術はとても真似できないが、なるほどこれは気をつけようかな、などと思う部分もあって、楽しくもあり勉強にもなる。

 

 料理動画を見ていて思うのは、いつか実際に高級料理店でご飯を食べてみたいな、ということである。

 プロの味はきっと格別なのだろう。一度は経験してみたいものである。

 

 高級店で食事することが可能ということは、それなりに贅沢できる経済的余裕がなければならない。

 今の現状では到底そんな余裕はないため、夢を叶えるために日々の生活を頑張らなければならないのである。

 高級店で食事することは、食の楽しみという目的にとどまらず、自分の人生の目的と同直線上にあるのかもしれない。

 

 目的は必要なもので、目的をしっかりと意識しないと、日々自分がなんのために頑張っているのか忘れてしまったり、自分の活力を失わせる状況に陥ってしまうものである。


 目的を再確認し、生きる活力がみなぎってきたところで、今日も変わらずリングイネを食べる。

 私の自己流リングイネは、節約のためという生活を縛る鎖であり、私と夢とを繋ぐ絆しでもあったのだ。

 

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